表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界召喚はもういらない  作者: るぷるぷ
24/40

異世界の神界③



 魔法陣に落ちた海咲は、暗い闇の中にいた。


 闇の奥に光があった。光が徐々に海咲をひきよせる。




「っ……」


 気が付くと、全身をおおっていた浮遊感が消えていた。




 床に、背中が触れていた。




 そこは、神殿のようなつくりの建物の中だった。白を基調としたタイルづくりの壁と床。天井一面には、万華鏡のような円形のステンドグラスが広がっている。その向こうからこうこうとさす陽の光が、ステンドグラスを通って怪しげな色に変わり、白い室内を怪しく照らしていた。




 床に仰向けに寝そべっていた海咲が、体を起こす。


 目の前に、ブロンドの髪をした褐色の肌の少女がいた。




「今芥子さん……?」


 モニアだった。




 名前を呼ぶと、モニアは腕を組んで、床に座り込んだままの海咲をみおろしていた。




「芥子の名で呼ぶなと言っていたはずだが……。まあ、いい。この姿も、今日かぎりだ」


 外見ににあわない、大仰な態度でモニアがいった。




 海咲は周囲をみわたした。広い部屋の中に、海咲とモニア以外、誰もいなかった。


 異世界の女神は、まだこの場にいない。




 今のうちに、何とかモニアだけでも逃がさなければと、思う。




「突然、こんなところに連れてこられてビックリしていると思うけど、話をきいて。今、ここにいるのは危ないの。だから、わたしと一緒に――」




「何を言っているのだ、お前は?」


 吐きすてるような口調で、モニアがいった。




 海咲をじっと見て、目をまたたかせた後――。「くふっ」と噴き出し、頬をゆがめてにっこりと笑った。




「もしや、お前――私を助けるために、異世界召喚の魔法陣にとびこんだのか?」




「…………そうだよ」


 海咲の答えに――。








「あーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!」








 モニアが、腹を抱えてわらった。




「そうか。一度は仕掛けから逃れた魚が、何故ここに来たのかと思ったが……なるほど、存外この姿も無駄ではなかったらしい」




「……何を、言っているの……?」




 海咲が質問した。モニアが海咲に向けて、手をつきだした。




簡易詠唱アクセプト――『状態異常回復レジション』」




「ああっ!」


 モニアの魔法詠唱によって、突然、脳を吸い上げるような感覚が海咲をおそった。




 頭をかかえて、床に手をついた。体から汗がふきだした。


 海咲から、モニアにかんする記憶が消えていく。




 この感覚は、以前に体感したことがあった。


「……記憶を、書き換えられていた……?」




 海咲がうなるような声をあげた。


「素晴らしい魔法であろう。日本の術と呼ばれる類の魔法らしい」




 海咲は、ふらつく頭を強引に持ち上げて、モニアを見あげた。


「……あなたは、いったい……?」




「まだ気づかぬか? 今芥子モニアなどという人物は、存在せん」


 モニアがどこからともかく鉄扇をとりだして、大きく横薙ぎにふるった。




 その瞬間――モニアにかけられた魔法が引き裂かれ、魔力の微粒子が火花のように宙を舞った。魔法が解けて、モニアが少女から姿を変える。




 現れたのは、背の高い女性だった。


 褐色の肌に、ブロンドの髪。怪し気に輝く赤い瞳。胸元にスリットの入った白いワンピースタイプのドレスを着ていた。


 彼女の姿には見覚えがあった。




 否、忘れるはずがない。




 何度も悪夢にみて、忘れることができなかった――半年前、海咲を、異世界へといざなった圧倒的な存在――彼女は……。




「……女神様……?」




 震える声で、彼女を呼んだ。




 異世界の女神が、そこに立っていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ