異世界の神界①
翌々日の月曜日。
日曜日にふりつづいた雨もはあがって、今日は快晴だった。
「おはよう」
今朝も、ナギが家の前でまっていた。
「おはよう。……あ、そうだ。はい、これ」
海咲が、ナギに紙袋をわたした。中には、ナギのジャージがはいっている。
合流して、二人で学校へむかう。
いつもと変わらぬ通学路には、昨日の雨がのこした水たまりが、そこかしこにあった。
そういえば、ナギと出会ってから雨がふったのは、初めてな気がする。案外、晴れ男なのかもしれない。
そんなことを思いつつ、他愛もない雑談をくりかえしているうちに、学校に到着した。
「おはようー。お二人さん」
校門の前のところで、アカッシーに遭遇した。ちょうど、部活の朝練でランニングをやっていたようで、体操着姿のアカッシーは、額に汗をうかべていた。
アカッシーは海咲とナギのそばまでかけよってくると、ランニングの足をとめた。
「今日も二人で登校とはおあついねー。そういえば、最近なんだか暑いよねー。マジ朝練がきついっすわ」
そんなことを言いつつも、部活を辞めないのだから、すごいとおもう。
足もとの水たまりが、太陽の光を受けてかがやいていた。
その時、一台の軽トラックが視界のはしにうつった。
学校の近くを走っているというのに、凄まじいエンジン音を上げながら、猛スピードで海咲達に接近してくる。
咄嗟に――アカッシーにせまる危険を、海咲の目がとらえた。
「あっ――」
危ない。そう叫んで、アカッシーの手をひこうとおもった。
――だが、間にあわない。
――そう判断した瞬間、反射的に体が前にでた。
軽トラックとアカッシーの間に、海咲が飛びだす。
「海咲――!?」
ナギが悲鳴みたいに名前をよんだ。
そして――。
「ばしゃああああっ」
猛スピードの軽トラックが水たまりのうえを通過した。
泥水がはねあがって、海咲は頭のてっぺんから靴の中まで、びしょびしょに濡れた。
「…………」
前髪から、ポタポタと水がしたたった。
「海咲!? うそうそうそ」
海咲がかばったおかげで、アカッシーは無事だった。アカッシーは目を白黒とさせながら、首にかけていたタオルを海咲の頭にのせてくれた。
海咲の状態に気づかなかったのか、軽トラックは猛スピードのまま去っていった。
「もしかして、私のことかばった……?」
「うん。まあ……とっさに」
隠す必要もないので、正直にこたえた。
「やばい。海咲超イケメン! ていうか、今の動き、すごく速かったね! フットサルに興味ない?」
「こんな時に部活の勧誘しないで……」
アカッシーに顔をふいてもらいながら、海咲がいった。
濡れた服をみおろす。白いシャツがすけて、花柄のブラジャーがくっきりと浮いていた。
アカッシーが海咲を校門の塀におしやって、周囲の視線から隠してくれた。
「どうしよう? 今日体育ないし、体操服なんてもってないよね? 私の制服かそうか?」
アカッシーが提案してくれる。しかし、身長の低いアカッシーと海咲の間には、ずいぶんな体格差がある。彼女の制服を借りても、おそらく海咲の肩がはいらないだろう。
「困ったなぁ……私の体操服は汗だくだし……」
アカッシーがつぶやいた。
すると、ナギが視線をそらしながら、帰したばかりのジャージをさしだしてきた。
「とりあえず、これ着とき?」
「いや、汚れるし……」
「かまへん、かまへん。千円のジャージやけん、気にせんで」
押し付けられるようにして、海咲がジャージを羽織らされた。
「一回、帰るか?」
ナギが提案した。
今から帰ると、確実に遅刻だった。そして、海咲が家に戻るとなれば、おそらくナギもついて来ることになるのだろう。
「帰っても代えのシャツは洗濯中だし、いいや。かわくまでジャージ着てるよ」
長袖のジャージの前を閉じて、濡れた白シャツを隠す。ナギのジャージは、海咲には少し大きいサイズだったが、そでの部分がゴムでしぼられているので、問題なく着られた。
「彼シャツだ彼シャツだ」
アカッシーが嬉しそうにしていたので、ほっぺたをムニっとつついてやった。
「だから、そういう関係じゃないってば」




