神がかり的に変わる日常④
その後、電車にのって最寄り駅までもどった。ナギも海咲と同じ駅でおりた。家まで送ってくれるつもりなのだろうが、手間ではないのだろうか。そんな不安が頭をよぎった。
「そういえば、ナギってどの辺に住んでいるの?」
駅から家に帰る道すがら、なんとなく質問してみた。
「あそこや」
ナギが突然、空をさした。
少し離れたところに、駅前のタワーマンションがあった。
見るからにお高そうなマンションだった。
「えらい高いところにあるやろ。僕も『ここに住め』って言われた時はビックリしてん」
ナギの口ぶりから察するに、あの住まいは誰かに用意してもらったもののようだった。
意外と、海咲の家から近くに住んでいたらしい。
「そういえば、今日ジャージ買ってておもいだしたんやけどさ」
「なに?」
すると、ナギは少しいいにくそうな顔をした。
困ったように眉をよせて、うーんとうなった後に言った。
「もしかしてやけどさ。海咲……僕のジャージ持ってへん?」
「ジャージ? 持ってないけど……」
と、口にした海咲の目の前に、神社があらわれた。
ご神体に下駄がまつられた、ちいさな社がある神社だ。
あの日、初対面で上半身はだかになった変質者のすがたが、海咲の脳裏によみがえった。
変質者は、シャツが透けているといって、海咲に自分のジャージをよこしてきた。何故か、変質者はナギと同じ顔をしていた。ていうか、ナギそのものだった。
「…………」
海咲が頭をかかえる。
「記憶を封印してたみたい……。持ってる。ジャージある。わたしの部屋に……」
あまりいい思い出ではなかったので、少しだけ血の気がひいた。
「ほな、明後日学校に持ってきてくれん?」
「分かったぁ……」
そんな会話をしているうちに、海咲の家についた。
短い挨拶をかわして、家にはいる。
海咲は家にかえるなり、二階にあがった。窓から、ナギが去っていく背中をみおくる。ナギが海咲から離れたということは、例のつくもちゃんが交代で警護にはいったのだろう。
家を一周する。屋内に、人の気配はなかった。
窓をあけて、外をみる。住宅街の道路には、誰もいなかった。
「あのー。つくもさんですか? よかったら、家の中にはいりませんかー?」
声をかけてみたが、返事はなかった。
意識を集中して周囲をさぐってみたが、近くに人の気配はかんじられなかった。
きっと、つくもちゃんもナギと同じぐらいの手練れなのだろう。




