不安の足音②
その数分前。明善高校、三年生の教室前。朝のホームルームが始まる前の廊下で、ナギはスマートフォンを耳に当てて、下駄の付喪神と電話をしていた。
「いきなり部屋に押しかけったって……シイナ様って、もしかしなくてもアホですか?」
下駄の付喪神に、今朝の出来事を報告したところ、そんな辛らつな言葉がかえってきた。
「仲良くなるには会う回数を増やすんが一番の近道らしいで。ビジネスの本に書いてた」
周囲に音がもれないように声を落として、ナギが言いかえした。
「その本の著者も、ストーカーまがいの接触をうむとは思っていなかったでしょうね……。いいです。あとで私がフォローいれておきますから」
電話のむこうで、下駄の付喪神がため息をついた。
「ところで、真田海咲のことも重要ですが、もうひとつの目的の方はいかがですか?」
「もう一つ?」
「異世界召喚ですよ。異世界に狙われているような気配はありますか?」
「微塵もないね」
「そうですか……」
どこか意外そうな声だった。
「何か、気になることでもあるん?」
ナギが、何気なくききかえした。
考えるような間の後に、下駄の付喪神がこたえた。
「まだ詳細はきかされていないのですが……今回の件に関して、主様が手を回そうとしているようなのです」
「手を回そうって、僕が異世界召喚されるように?」
「詳細はわかりませんが……、その可能性はあります」
「そんなことできるん?」
「さぁ……。あるいは、シイナ様以外の神を、日本人として氏子に混ぜる算段なのかもしれません」
「そんな暇な奴おるん? 僕以外に」
「言ってて虚しくなりませんか?」
「ならんな。僕は、他人に寄生して生きていけることに、誇りをもっとる」
「……」
電話のむこうで、下駄の付喪神が呆れている気がした。
「とにかく、何が起こるか分かりませんので、シイナ様も、どうかそのお心づもりで」
その時、朝のホームルームが始まる予鈴がなった。
一言、下駄の付喪神に断って、ナギが電話をきる。
ナギは教室に入って、海咲の机に目をむけた。案の定、海咲の席には誰も座っていない。間もなくホームルームが始まる。もしかすると、海咲は学校に来ないかもしれない。
「やっぱ僕のせいかな……?」
ナギが頭をかいた。
「怖がらせるぐらいなら、僕が転校するのもありか……」
小さくつぶやいて、ナギは自分の席についた。
少しでも、面白いと感じていただけたら、
下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援をお願いいたします。
ブックマークもいただけると、とても嬉しいです。
よろしくお願いいたします。




