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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
【第十五章 枯葉に惑わされし師弟の絆】
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【二百五十四  孫悟空、白骨精とともに崑崙山へと向かう】

 お前俺様の姉ちゃんじゃねえじゃんと思いながらも、誰かに話したかった気持ちもあった孫悟空は、ぽそりとつぶやいた。


「……破門された」


「破門?!やいや、破門だって?!!ごーきらこってな!なして?!」


「うるせえな!そんな大声出すんじゃねえよ!」


「もしかして、おれのせいか?おれがあのお坊様狙ったからか?」


「……お前を倒したら乱暴なことをする奴は破門だっていわれた」


 孫悟空の言葉に、白骨精は項垂れた。


「やいや、そらもーしわけねことしたな……やっぱおれのせいだねっかや。ごめんな……おれ、話してこっか?」


「いいよ。もう終わったんだから」


「やいや、どーしょば……なんかわーりぃことしたな……えぇ、破門だてば、お坊さんたちのあれだばとんでもねえことなんろ?」


「だからいいっつってんだろ別に。これから地元に帰ってのんびりするから」


「そーいんが?……いやいや、おめさん納得してねぇこってや。おれがあの、おめさんのお師匠さんにおれはまだ生きてますよって言ってきてやろっか?まあ僵屍だこって、生きてるっつーのもなんか変な話なんだけどもな」


「あーいいってばもう」


 白骨精は自分のせいで孫悟空が破門になったことを心から申し訳ないと思っているようで、申し出を断る孫悟空に何度も謝る。


 その時、孫悟空はある違和感に気づいた。


「……お前、そういえば札がないな。どうやって僵屍キョンシーになった?」


 道士によって作られる僵屍キョンシーは、額に札をつけている。だがこの女僵屍キョンシーには札が無かった。


「あ?らね。気付いたらおれはこの山にいたんだ」


「名前はあるのか?生きてた時の記憶とかねえのか?」


「んー、おら白骨精って気づいた時から名乗ってるけどな。生きてた時の記憶も何も……あとはらねな」


「名前があるならやっぱりお前を作ったやつがいるはずなんだけどな……」


 孫悟空はジッと白骨精を見つめて唸った。


「やいや、見過ぎらてば。おれが美人びずんなのはわかっどもさ」


 照れながら顔を隠す白骨精に、何言ってんだこいつと思いながら、孫悟空は腕組みをしてその場にあった大きめの岩に座った。


「お前さ、みたところ中級くらいの僵屍キョンシーだよな。下級だと会話なんてできねえもん。俺様のじいちゃんが道士なんだ。修行つければ仙人にも上がれると思うけど、その気はあるのか?」


「仙人……」


 孫悟空のいうじいちゃんとは、彼に術を教え込んだ須菩提祖師のことだ。おそらくまだ崑崙山にいるだろう。


 力の強い道士である彼なら、白骨精を僵屍にした道士を見つけることは容易いだろう。見つからなくても弟子にして人里から引き離せばいいと孫悟空は考えたのだ。


 だが白骨精はふるふると首を振った。


「おれ、そんなもんになる気はねーな。ずっと一人で……いや、この山の動物たちと過ごしてきたんだども、そろそろ飽きてきたんだわ。動物たちがいるすけ、さみしいとかだっちょでももねんだけど、さ」


「ふーん。どっちにしろお前を僵屍から解放するにはじいちゃんにやってもらわないといかないからな……とりあえず崑崙山にいこう」


「崑崙山……やいや、いいこて。自分でなんとかするっけ、構わねばっていいわいや」


「いいから、行くぞ」


「えー、いいてば、そんな……遠いんでしょ、そんがとこまで行くなんてごうぎらこて。それよりも、おめさんのお坊様に事情を話に行かねばならねこってってば」


「俺様のことはいいからいいから、さっさと乗れ。觔斗雲!」


 孫悟空は白骨精をひょいと抱え上げ、呼び出した觔斗雲に飛び乗ると崑崙山へと出発した。

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