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深沙の想い白骸に連ねて往く西遊記!  作者: 小日向星海
第十二章 ついに再会した玄奘と河伯!九つの前世の時を超え……今世こそあなたを守ります!
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【百四十八、猪八戒VS虎先鋒】

 猪八戒は焦っていた。


 玉龍は気絶したまま動かないし、孫悟空は目を負傷して何も見えない。


 今まともに戦えるのは自分だけ。


 早く虎先鋒を倒して黄風大王を追わなければ玄奘の身が危ない。


「……おかしいな」


 振り下ろした釘鈀には、確かに虎先鋒を打った感触があったのに、その先には何もない。


 振り下ろした釘鈀の下にあったのはペラペラの虎皮だ。


「疾!金蟬きんせん脱穀だっこくの術!」


「な、なんだこれ?!」


「せい!」


 風に吹かれ、釘鈀の下からするりと出て来た虎皮に気を取られていると、猪八戒の背後に回り込んだ虎先鋒が槍を突き出した。


「おっと!」


 猪八戒はそれをギリギリでかわすと、今度は振り向きざまに釘鈀を打ち上げ、虎先鋒のその顎を砕こうとした。


 ガッと、鈍い音が聞こえた。


 釘鈀を握る猪八戒は確かに手応えを感じた。


 なのに。


 再び虎先鋒は皮を脱ぎその攻撃から逃れていた。


「お前は虎の妖怪だろ?!脱皮なんて蛇みたいなことしやがって!」


 何度攻撃しても皮を脱いで逃れてしまう虎先鋒に、猪八戒は次第に消耗していった。


(こんなところで手こずってられねぇのに……っ!)


 猪八戒に比べると、小柄で痩せている虎先鋒は動きも素早い。


「見たところお前は豚の妖怪ッスね!豚はこの虎が美味しくいただいてやるッスよ!」


「そうはトン(豚)屋が卸さねえよ!」


 猪八戒は、お、これ上手い洒落になったんじゃねーの?!なんて思いつつ、突き出して来た虎先鋒の槍を避け、それを握っていた手をグッとつかんだ。


「は、離せっ!」


 武器を手放すわけにはいかないから、虎先鋒は皮を脱いで逃げられない。


「歯ァ食いしばれよ……っ!」


 猪八戒はニヤリと笑うと、そのままぐるぐると旋回する。


「う、うっぷ……」


 虎先鋒は青い顔をして目を回してしまった。


「オラ、天蓬元帥様をなめんじゃねーぞ!」


 そしてそのまま虎先鋒を放り投げ、釘鈀で打った。


 小気味良い音を立てて、虎先鋒は真っ暗な雲の向こうへ飛んでいった。


 猪八戒は如意金箍棒を振り回す孫悟空の元へ行き、それを止めて落ち着かせた。


「落ち着け悟空。あの虎はオレがもう倒したから」


「そうか……でもそれよりもお師匠様を追いかけないと!」


 傷ついて光を失った目から血を流しながら、孫悟空は觔斗雲を呼び出した。


 急いで觔斗雲に乗ろうと右往左往する孫悟空を、猪八戒が慌てて羽交い締めにして止めた。


「そんな目でどこを探そうってんだよ!玉龍ちゃんは気絶してるから如意宝珠も使えねーし、とにかくまずは気付薬を使って……ん?」


 猪八戒が玉龍の方を向くと、そこには見慣れない女性がいた。


 その女性自身が輝いているような、不思議な雰囲気を纏っている。


 女性は玉龍のそばに屈んで何かをしているようだった。


 猪八戒は慌てて玉龍の元に向かった。


 まださっきの虎先鋒の仲間がいたのかと焦ったのだが。


「お、おいアンタ、そこで何してるんだ!」


「う……ん……?」


 猪八戒が女性に声をかけたと同時に、玉龍が目を開けた。


「気が付きましたか?」


「おねーさん、誰?」


 女性は玉龍に微笑み、立ち上がって猪八戒の方を振り向いた。


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― 新着の感想 ―
[一言] やっぱり猪八戒、すごく頼りになりますね…!ちゃんとぶっ飛ばしてくれました!一方で玉龍は不思議な女性に出会したようで…変な人でないとは思いますが、誰なのでしょう?ちょっと気になります。
2023/12/07 17:17 退会済み
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