Passepied/認知
passepied
甘いたてごと
淡いくちづけ
熟した黄色い果実を
大理石の階段で一口齧り
歌うセイレーン
鳩を飛ばす金色の船
恋人の誓いを南京錠にリボンを
踊る
古代の栄華に想いを馳せながら
踊る
クチナシの香る中庭で
リンゴと洋ナシの果樹園で
噴水の音に紛れて
バラの花の小路を抜けて
ステップを踏む先は秘密の月宿る城
季節に祝福されながら私は
ワルツを
メヌエットを
高らかに水の粒が手を伸ばして
今は踊っているだけ
*
認知
俺は貰った愛に背を向けて
汚れたものにも価値はあると言い放った
俺は愛を返さなかった
嘘に塗れた何かを返すぐらいなら返さない方がましだと思った
一緒についていてあげるから前を向こうよと
差し出された手があることにも気づかなかった
高貴な人からこの声を求められても言葉を乞われても
俺は黙っていた
だから不信と孤独という罰がもうすぐやってきて
俺に毒を飲めと急き立てるだろう
それを知っていながら
怯えているだけで逃げようとはしない
もしかしたらとうにこの存在は誰にも認知されていないのかもしれない
矮小な存在だということをきっと皆が証明してくれるはずだ
認知されない存在
それはそれで美しいじゃないか
そう考える救いようのない人間