時代
初めて書いたものです。また完全なフィクションです。
LGBTQをはじめとした時代の変化と生々しい葛藤を描きたかったのですが、一部不快に思わせてしまう表現がある場合がございます。
自己責任でお願い致します。
実際私自身が当事者(Q)です。当然認めてくださらないかたにも出会ってきました。
私は自らについて、「世界を多数決のように考えたとき、大多数は性自認が安定していて異性愛者であるのでこれを普通と定義すると、Qである私はイレギュラーな存在である。」と思った上で
「自分を軸に世界を考えてよいなら、Qであることが大いに自然である。」と思っているので
認めてくださらないかたがいることになんの不思議も或は嫌悪感も抱いていません。
それを知った上でぜひ読んでいただきたいです。
自分とは境遇も年齢も戸籍上の性も考え方もまるで違う人の目線になって書いたものなので
おかしな表現があるかもしれません。
ご理解ください。
「なぁ、」
おもむろに口を開く親友。
「もし俺が、お前のこと好きだって言ったらさ。お前、どうする?」
はっとする。訳もなく息を飲む。
十年も前なら「いい年したおっさんがなにいってんだ」と笑えただろう。
何だっておかしくなんて無いんだ。こんな時代柄。LGBTいや、LGBTQ+というのか。それらを当たり前のこととして尊重し、理解を深めていく。それこそがまた当たり前のことなんだ。
そう実感させられる。
「下手な冗談だな」
あぁ違う。傷つけてしまっただろうか。なんでも俺は考えるより先に口が動いてしまうらしい。浮かんでこそいるのにな。
言葉を選ぶまでには時間が足りないらしい。
「あはは...」
乾いた笑い。さては本気だったんだな。悪いことをした。いや、返答によってはもっと傷つけたかもしれない。ならば最善とまではいかずとも、この返答でよかった。そう思おう。
俺はこれでいいんだと自分を無理に納得させては黙った。
沈黙。
心を許した女性と言葉をなくして寄り添い合うのとはまるで違う、直ぐにでも逃げ出したいような静けさ。
嵐でもきそうだな。そんなことを思う余裕はあるらしい。
解けないように左手の親指と中指だけで持ったグラスに口をつける。
気味の悪い空間にいつもの酒も少し不味く感じた。
「ちょっとベランダで吸ってくる」
しばらくの沈黙を破ったのは向こうだった。ピースと俺がいつかの誕生日にやったジッポを手にして、ばつが悪そうに出ていった。
今のうちに帰ってしまおうか。
雰囲気のいい間接照明は若い頃通いつめたbarのようで、俺の思考をひどくゆっくりにさせる。
赤ん坊だってもっと考えているだろうな。
それでも俺は思案に耽った。
一人きりなのに誰かに見られているようで居心地の悪さは続いている。
「LGBTね…」
ちょっとだけ声に出してみる。
俺は正直なところ、どうしても理解ができないのだ。
こう言うことをいえば批判の集まる世界にも何だか納得が行かない。
別に恨みがあるでもないし、そういう人がいることだって本当はわかっている。つい先程までそこにいたあいつのように。
実をいえば、好意にも何となく気づいていた。でも確信はなかったし持ちたくもなかった。どこか俺の意識の外で煙たく渦巻いていたのだろう。
キモいとか受け付けないとかそんな一言に表すには深く、かといって二語にするには浅かった。
俺は所謂当事者じゃないし理解者でもない。
そもそも理解者なんて存在が本当にいるのだろうか。
俺には偽善者に見えて仕方ない。
多様性だとかそんな言葉でまとめては、分かったふりをしていい顔をしたいやつらが大半ではないのか。
そもそも当事者は本気で理解されることを望んでいるのだろうか。
マイノリティをさらしては、たとえ傷つけられまでなお世界を変えようとする力のある人は、支えなどなくても生きていけるのではないか。
そう考えてしまう俺は、きっと十年もしないうちに老がいなんて呼ばれてしまうのだろう。
ああいつからだろうか。時代の流れに適応できず取り残されては、自らを正当化し続けた老いぼれを、嗤っていたころが懐かしい。
単に年を取ったからだろうか。老眼はひどくなり、一周回って痩せてきている。
でも、それらに並列するようにも思えないんだ。
俺はウロボロスの蛇のように巡り続ける生々しい思考に嫌気が差しついには考えることを放棄してしまった。
俺の敗けだ。
ガキのようなプライドに自分で笑いそうになる。
これが退化する瞬間なのだろうと噛み締めながらまた酒をあおる。
あいつはまだ戻らない。
さっきより暗くなったような気のする照明が、アンティークなソファを照らす。
そこにあるのは窓を開けたくなるような淀んだ空気と個体差だけであった。
読んでいただきありがとうございました。
今一度時代の変化について考えてみるきっかけになれば幸いです。




