(故郷)40
僕は近くで魔法が発動されたのを感じ取った。
同時に魔法杖の魔水晶がフラッシュ、バイブした。
僕とエリカを魔力障壁ドームが包んだ。
僕に向けられた魔法は・・・、攻撃魔法ではなく鑑定魔法だ。
誰かが僕を鑑定しようとした。
それをドームが阻んだ。
常識知らずが。
当人の承諾なしに鑑定を仕掛けるのは攻撃に準ずるものだ。
反撃されても文句は言えない。
ただしだ、鑑定しても露見しなければ問題はない。
それでも露見したら、攻撃して口を封じればいい。
要するに、そういう世界なのだ。
僕は辺り一帯の者達を鑑定にかけた。
直ぐに見つけた。
冒険者の群れに混じっているギルド職員だ。
奴のスキルは鑑定魔法初級。
僕は反撃した。
土魔法、足の裏から地面に干渉した。
奴の足下に土魔法で穴を開けた。
「ギャー」
奴が悲鳴を上げて姿を消した。
3メートルの深さの穴に落した。
問題を大きくしたくないので生き埋めはない。
場が騒然となった。
タルゼが穴に駆け付けた。
ロバート・バイロウが僕を睨む。
僕はロバートを鑑定した。
「名前、ロバート。
種別、人族。
年齢、52才。
性別、雄。
出身地、パラディン王国。
住所、パラディン王国、エロールイ市。
職業、エロールイ市冒険者ギルドのギルドマスター。
ランク、B。
HP、135。
MP、70。
スキル、身体強化中級、剣術中級、生活魔法(水、火、風)」
ロバートは家名持ちでも爵位持ちでもなかった。
いるのだ、この手の人間が。
勝手に家名を名乗る者が。
まあ、ギルドマスターとしての社会的地位は認めてあげよう。
ロバートが僕に怒鳴った。
「うちの職員に何をするんだ」
直ぐに僕と決めつけた。
何故に・・・。
鑑定スキルも探知も察知もなしに。
はは~ん、分かった。
こやつ、僕を鑑定するよう、職員に命じたな。
無視だ。
笑顔で見返した。
ロバートは怒りを僕にぶつけた。
「お前は土魔法が得意なんだろう。
あれはお前以外にいないだろうが」
僕はロバートからタルゼ達の方へ目を遣った。
彼等は穴に落ちた職員を引き上げようと躍起になっていた。
穴は深いが狭いので人海戦術は取れない。
誰かが、ロープと叫ぶ。
女性冒険者の一人が肩掛けのバッグからロープを取り出した。
鑑定すると収納バッグではなかった。
ただのバッグ。
中には鞭と蝋燭、そしてバタフライ型仮面。
タルゼはロープを受け取り、穴に垂らした。
「おい、掴まれ」
職員がロープを掴んだと見るや、タルゼ自ら身体強化し、
ごぼう抜きで一気に引き上げた。
助け出された職員は顔も衣服も土で汚れていた。
落ちた際に足を痛めたのか、その場で転げ回った。
「ギャー、痛い、痛い、足の骨が・・・骨が」
3メートルの深さの穴は狭いだけで、受け身を取る広さはない。
全体重が二本の足にかかったのだ。
骨折して不思議ではない。
誰かがポーションを取り出した。
一本を飲ませ、もう一本を痛むという箇所にかけた。
暫くすると職員の声が止んだ。
上半身を起こして膝に手を当てた。
さする、さする。
痛みが収まった様子。
タルゼが、無視を続ける僕と、怒りが収まらないロバートを、
呆れた様に交互に見た。
それから土で汚れた同僚に目を転じた。
「鑑定したのか」
同僚は、ロバートとタルゼ、そして僕を見た。
何やら口ごもる。
それでタルゼは理解したらしい。
うんざりした表情。
門前が煩くなった。
僕はそちらに目を遣った。
するとブラビットを先頭にした一団が入って来た。
鑑定した。
トランドの店にいた者達が全員揃っていた。
度々の誤字脱字報告、有難うございます。
大感謝です。
以後も宜しくお願い致します。




