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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
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(故郷)38

 僕はレイガンの反応が気になった。

もしかすると、生き埋めにした者の中に知人がいたのか。

たぶん、いた。

いたと理解した方が納得できる反応だ。

レイガンを警戒しながら、タルゼを見た。

「ギルドに依頼がある」

「ここでか」

「そう、ここで。

来てくれたお陰でギルドに行く手間が省けたよ、ありがとう。

依頼しても良いかな」

 タルゼはちょっと考えて僕を見た。

「支払いは」

「手付を少しだけ。

足りなければ請求して欲しい」

 僕は肩掛けバッグ経由で亜空間収納からお金を取り出した。

ベランルージュ王国で手に入れた大金貨から10枚。

300万ベレル。


 タルゼは呆れた。

「御大尽様か。

しかし、依頼を受けるかどうかは、私の一存では決められない。

ギルドに戻ってギルドマスターに説明しなければならない。

受注するかどうかはギルドマスターの判断しだいだ。

それで良ければ」

「分かっている、断られても文句はつけないよ。

・・・。

一つ、ここに倒れている連中の後始末を依頼する」

「後始末、どのように」

「代官は死んだようだからは、目的は済んだ。

残りの連中は治療しようが、殺そうが、そちらに任せる」

「そうか、代官の遺体は」

「死体を持ち帰る趣味はない。

そちらに任せる。

焼くなり、煮るなり、好きにしてくれ」

「焼きもしないし、煮もしない。

それでは、代官の遺体を含めて引き受けよう」

「二つ目、周囲に住む貴族達に告げて欲しい。

仇討ちを望むなら、かかってこい。

街を引き払うなら見逃す。

こちらに手出ししなければ、住み続けるのも認める」

「分かった、賢明な判断だ」


 タルゼと違い、レイガンの視線がきつい。

隙を見せたら今にも飛びかかって来そう。

奴は身体強化スキルは持たないが、屈強な虎人族。

警戒するに越したことはない。

「三つ目、奴隷商人のトランドを知ってるか」

「気に食わない奴だが知ってる、それが」

 僕はトランドとの経緯を語った。

聞いたタルゼが天を仰いだ。

「【奴隷の首輪】に干渉できるのか。

君は何者なんだ、賢者様か錬金術師様か、それとも魔導士様か」

「ただの村娘だよ。

いいかい、本題に戻るよ。

トランドの店は奴隷のブラビットに預けてる。

熊人族だ。

奴に、店にいる全員をここに連れて来るように伝えて欲しい」


 タルゼはレイガンを連れてギルドへ引き返した。

ギルギマスターに説明し、判断を仰ぐそうだ。

僕はギルドマスターがどんな奴かは知らない。

知らないが、現状が分れば断る選択肢はない。

断られたら僕が自力で動く。

そうなれば、街に余計な混乱を生む。

血が流れる。

そのくらいの先読みは出来るだろう。


 本館は居心地が悪い。

死傷者ばかりで笑いが欠けていた。

僕達は玄関を出た。

すると、多数の視線に晒された。

表門の外に物見高い者達が詰めかけていた。

流石に敷地の中に入って来る物好きはいない。

エリカが僕の陰に隠れた。

「野次馬ばかりよね」

「人の不幸が嬉しいんだろうね」

 世界は違っても、その辺りの気質は似通っていた。

僕達は敷地の奥へ向かった。

別館や倉庫、厩舎等のある辺りだ。

逃げ出したのか、人影が一つもない。

が、馬の嘶きは聞こえた。

 否、人の気配・・・。

僕は鑑定を起動し、網を広げた。

別館内や厩舎内に見つけた。

隠れて僕達を襲うつもりはなさそうだ。


 厩舎の馬を世話する厩務員一家五名。

別館にはメイドが六名。

庭師一家四名。

計十五名。

全員が【奴隷の首輪】を着装していた。


 僕は風魔法で彼等彼女等に告げた。

「全て終わった。

代官は亡くなった。

大勢の兵士も亡くなった。

この代官所に残っているのは僕達と君達だけだ。

それで君達に尋ねる。

君達はどうしたいのだ。

僕達に最後まで抵抗するのかい。

代官や兵士達の様に死にたいのかい。

それなら構わない。

殺してあげよう。

もし、違うのなら出てきて欲しい。

訳が聞きたい。

話をしよう」

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