(故郷)35
兵士達は魔力障壁ドームの破壊に躍起になった。
火魔法使いや土魔法使いも同様だ。
あらん限りのスキルでもって攻撃を加えた。
そんな彼等は肝心の事を見逃していた。
ドームから弾き飛ばされたファイアボールが当たったせいで、
天井がくすぶり始めたのだ。
直に火を吹くだろう。
それに誰も気付かない。
僕が危惧していると、新たに上の階より数人が駆け下りて来た。
代官を含めた五名。
代官が焦り、大声で怒鳴った。
「止めろ、止めろ、火魔法は止めろ。
火事になるだろう。
水魔法で消してしまえ」
代官と一緒に下りて来た奴が慌て水魔法を天井に放った。
無造作に水の塊を数発放った。
完全に火の気配は消えたが、床までも水浸しにした。
代官自身もスキル持ち。
剣術初級と槍術中級。
手には槍を携え、腰に短剣を吊るしていた。
他の四名もスキル持ち。
剣術中級一名、水魔法中級一名、槍術初級一名、
鑑定魔法初級一名。
代官の登場で兵士達の攻撃が止んだ。
代官の命令待ちになった。
そうと見たのか、代官が苦々し気に言う。
「誰か説明しろ」
兵士達の中の一人が代官の下に走り寄り、状況を悦明した。
聞いた代官の顔が曇った。
忌々し気に言う。
「ヒビの一つも入れられぬのか」
「申し訳ございません」
鑑定魔法使いが言う。
「鑑定できません」
「すると奴のスキルは中級以上と言うことだな」
「はい」
「何か手はないのか」
「あの魔法杖には術式が施されている様です。
時間はかかりますが、削って削って、押し切るしかありません」
代官がドームに歩み寄って来た。
エリカと見比べ、僕を睨む。
「お前が魔法使いの小娘か」
答えるつもりはない。
口を開くと、殺す決意が緩む気がした。
「何故、代官であるワシを殺そうとする」
それにも答えるつもりはない。
無言を貫く。
「ワシのみならず伯爵様まで殺すそうだな。
狂っているのか、お前は」
何と言われようが気にしない。
馬ではないが、馬耳東風。
無表情を貫く。
代官は諦めた。
僕の魔法杖を一瞥し、警戒しながら後退りした。
そして水魔法使いに何事か耳打ちした。
魔法使いは頷き、直ちに魔法を起動した。
攻撃魔法かと思いきや、違った。
ドームの真上に大きな水の塊を出現させた。
それを単純に落下させた。
水に濡れたドームを観察して代官が言う。
「どこにも穴がない。
これなら小娘は守り一方で攻撃ができないな。
皆の者、交替しながら削って削って、圧し潰せ」
代官は命じると、鑑定魔法使いに何事か耳打ちした。
深く頷く魔法使い。
僕を横目に、表へ飛び出した。
その行動が気になった。
僕は魔法使いをマークした、ストーカー。
それで気付いた。
表には兵士が群れていた。
代官所の兵だ。
三十二名。
魔法使いの目的は彼等ではなかった。
敷地を駆け出ると最寄りの屋敷に入った。
どうやら子爵家屋敷。
魔法使いは子爵家、代官の屋敷から五十名の兵士を引き連れ、
急ぎ戻って来た。
庭先で代官所の兵と合わせ、再編成に取り組み始めた。
目的は知らない。
けど、許すつもりはない。
これ以上、時間をかける意味を見出せない。
エリカが僕のローブの裾を引いた。
「ドームは大丈夫なの」
心配をかけた。
僕はドームの状態を見た。
【防寒、防暑、防水、防塵、防汚、防刃、防火】が効いていた。
【自動修復】も成されていた。
【自動魔力供給】も怠りなし。
【強度化、剛性化】に陰りなし。




