(故郷)34
☆
僕はエリカを連れて代官所を一周した。
2メートルほどの外壁に囲われた広い敷地。
門番二名が立つ表門の先の三階建てがそれだ。
本館の他には、敷地奥に別館や倉庫、厩舎等もあった。
偏見かも知れないが、敷地全体から人を拒む印象を受けた。
一周しながら鑑定で調べた。
一度に、詳細に把握すると頭が疲れるので、段階的に行った。
まず全ての建物の3D化。
次に人の居場所を把握。
そして人を区別。
男か女か。
文官か武官か、ただの使用人か、部外者か。
スキルのあるなし。
術式が屋敷のどこかに施されてないかも調べた。
忘れていた、大事な事を。
そう代官の居場所。
一周終えた僕はエリカを連れて表門に向かった。
門番の片方が僕達を見て怪訝な顔をした。
それでも身なりから無害と判断したのだろう。
視線を戻した。
僕は歩み寄りながら土魔法中級を起動した。
門番二名と敷地内を巡回している二組四名、表玄関の二名、
計八名をロックオン。
足下をマーキング。
落とし穴と埋め戻しをセットにして【生き埋め】を放った。
瞬間、穴に八名が吸い込まれる様に落ちた。
そして即座に穴が埋め戻された。
痕跡は僅かな土埃のみ。
目にした者がいたとしても、ほんの一瞬のこと。
自分の見間違いと思うだろう。
表門は裏側から閉められていた。
代わりに横の通用口が開けられていた。
使用人や身分の低い者専用なのだろう。
僕はエリカと共に入った。
代官所の表玄関を開けた。
中にはカウンターがあり、明確に内外を分けていた。
内側にいるのは代官所の者達。
外側にいるのは用事で来た者、呼ばれた者。
僕達は静かにお邪魔した。
誰も僕達に視線を向けない。
それぞれの仕事で忙しいのだろう。
僕は暴れる嬢。
天井へ向けて斜め上に、風魔法を放った。
風玉・ウィンドボール、威力は中級。
目論み通り、天井を突き破った。
二階に達した様で悲鳴でそれと分かった。
当然、こちらの階下でも悲鳴。
残骸もバラバラ落ちて来た。
居合わせた気の毒な部外者達が我先に逃げて行く。
残された代官所の者達は僕達と天井を見比べ、後退りを始めた。
僕は手の平を彼等彼女等に向けた。
魔法で攻撃するぞ、そう意思表示した。
途端、彼等彼女等が悲鳴を上げて奥へ逃げ出した。
階上から騒々しい足音が響いて来た。
僕はエリカを連れて右側に移動した。
壁が厚いので後方より攻撃される恐れはない。
幾人もが階段を駆け下りて来た。
何れも兵士だ。
十五名。
表玄関からも来た。
ぞろぞろ入って来た。
十二名、計二十七名。
うちスキル持ち八名。
剣術初級四名、槍術初級二名、土魔法初級二名、
火魔法中級一名。
中でも厄介なのは火魔法中級持ち。
こいつは槍術初級も併せ持っていた。
火魔法中級持ちが考えなしの攻撃をして来た。
火玉・ファイアボール。
火災に発展する恐れがあるから建物内での攻撃は控える、
それが魔法使いの常識なのに。
僕の魔法杖の魔水晶がフラッシュ。
直ちに防御魔法を展開した。
魔力ごり押しの魔力障壁。
半径2メートルの高さ3メートルのドームが張られ、僕達を守った。
見えない障壁なので火魔法使いが困惑した。
「これは」
「たぶんバリアだ。
力尽くで叩き壊せ」
兵士達が一斉に駆けて来た。
剣で叩き割ろうとした。
槍で突き破ろうとした。




