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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
92/282

(故郷)34

     ☆


 僕はエリカを連れて代官所を一周した。

2メートルほどの外壁に囲われた広い敷地。

門番二名が立つ表門の先の三階建てがそれだ。

本館の他には、敷地奥に別館や倉庫、厩舎等もあった。

偏見かも知れないが、敷地全体から人を拒む印象を受けた。

 一周しながら鑑定で調べた。

一度に、詳細に把握すると頭が疲れるので、段階的に行った。

まず全ての建物の3D化。

次に人の居場所を把握。

そして人を区別。

男か女か。

文官か武官か、ただの使用人か、部外者か。

スキルのあるなし。

術式が屋敷のどこかに施されてないかも調べた。

忘れていた、大事な事を。

そう代官の居場所。


 一周終えた僕はエリカを連れて表門に向かった。

門番の片方が僕達を見て怪訝な顔をした。

それでも身なりから無害と判断したのだろう。

視線を戻した。

 僕は歩み寄りながら土魔法中級を起動した。 

門番二名と敷地内を巡回している二組四名、表玄関の二名、

計八名をロックオン。

足下をマーキング。

落とし穴と埋め戻しをセットにして【生き埋め】を放った。

 瞬間、穴に八名が吸い込まれる様に落ちた。

そして即座に穴が埋め戻された。

痕跡は僅かな土埃のみ。

目にした者がいたとしても、ほんの一瞬のこと。

自分の見間違いと思うだろう。


 表門は裏側から閉められていた。

代わりに横の通用口が開けられていた。

使用人や身分の低い者専用なのだろう。

 僕はエリカと共に入った。

代官所の表玄関を開けた。

中にはカウンターがあり、明確に内外を分けていた。

内側にいるのは代官所の者達。

外側にいるのは用事で来た者、呼ばれた者。

僕達は静かにお邪魔した。


 誰も僕達に視線を向けない。

それぞれの仕事で忙しいのだろう。

 僕は暴れる嬢。

天井へ向けて斜め上に、風魔法を放った。

風玉・ウィンドボール、威力は中級。

目論み通り、天井を突き破った。

二階に達した様で悲鳴でそれと分かった。

当然、こちらの階下でも悲鳴。

残骸もバラバラ落ちて来た。


 居合わせた気の毒な部外者達が我先に逃げて行く。

残された代官所の者達は僕達と天井を見比べ、後退りを始めた。

僕は手の平を彼等彼女等に向けた。

魔法で攻撃するぞ、そう意思表示した。

途端、彼等彼女等が悲鳴を上げて奥へ逃げ出した。


 階上から騒々しい足音が響いて来た。

僕はエリカを連れて右側に移動した。

壁が厚いので後方より攻撃される恐れはない。

 幾人もが階段を駆け下りて来た。

何れも兵士だ。

十五名。

表玄関からも来た。

ぞろぞろ入って来た。

十二名、計二十七名。

 うちスキル持ち八名。

剣術初級四名、槍術初級二名、土魔法初級二名、

火魔法中級一名。

中でも厄介なのは火魔法中級持ち。

こいつは槍術初級も併せ持っていた。


 火魔法中級持ちが考えなしの攻撃をして来た。

火玉・ファイアボール。

火災に発展する恐れがあるから建物内での攻撃は控える、

それが魔法使いの常識なのに。

 僕の魔法杖の魔水晶がフラッシュ。

直ちに防御魔法を展開した。

魔力ごり押しの魔力障壁。

半径2メートルの高さ3メートルのドームが張られ、僕達を守った。

見えない障壁なので火魔法使いが困惑した。

「これは」

「たぶんバリアだ。

力尽くで叩き壊せ」

 兵士達が一斉に駆けて来た。

剣で叩き割ろうとした。

槍で突き破ろうとした。

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