(故郷)31
僕は借金奴隷八名の【奴隷の首輪】に干渉した。
流石は下位職の手になる汎用品。
水に浸されるかのように僕の魔力に染められて行く。
現所有者の名前を消し、新所有者の名前を記入した。
ジュリア。
「トランド、他に借金奴隷はいないのか」
二階で護衛二人が休憩中。
拉致した者達の管理要員三人、こちらは休暇中。
休暇中でも、奴隷なので街中にはいると言う。
ブラビットに命じて二階の護衛二人を呼び寄せた。
腕自慢のぼんくらの様で、疑問も持たず素直に下りて来た。
即ゲット。
別の奴隷に命じて休暇中の管理要員三名をも呼び寄せた。
こちらは多少、現れるのに時間はかかったが、即ゲット。
借金奴隷達は驚きはしたものの、抵抗はない。
解放条件が従来通りであることから、誰が主人でも構わないらしい。
借金奴隷十四名、店主一名、計十五名を従えた。
心配顔の店主・トランドを脅した。
「今のところ、そちらの家族には手を出すつもりはない。
貴男が協力的ならだ。
条件は一つ。
僕に見落としがあれが指摘して欲しい。
理由は分かるね」
奴隷は基本、命令に従順だが、それだけ。
消極的で、先読みも深読みもしない。
それだと困るのだ。
理解したのか、トランドが深く頷いた。
「分かった、協力する」
良かった。
これでドランドの屋敷を訪れる必要がなくなった。
僕は残った皆に告げた。
「全ての責は僕にある。
常識的に、奴隷だから君達が咎められる事はない。
だから、出来れば進んで協力してくれ」
僕はトランドに命じた。
「拉致した者達をここに呼んでくれ」
トランドが地下に通じる通路を開けた。
途端、嫌な臭いが流れ出して来た。
糞尿、汗、体臭、膿等々の入り混じった物。
まるで家畜が飼われているかのよう。
僕は即座に対応した。
光魔法起動、ライトクリーン。
初級では時間がかかりそうなので中級にした。
ついでに鑑定を重ね掛け。
地下の状況を観察しながら、洗濯、乾燥、柔軟な仕上がり。
さらに治癒魔法も重ね掛け。
ヒールとキュアを交えた。
驚いた顔でトランドが僕を振り返った。
説明するのは面倒臭い。
補足だけした。
「軽い病気や怪我は治った筈だ」
トランドが溜息ついて、借金奴隷十名を指名し、
階段を下りて行った。
地下から上がって来た者達は酷い有様だった。
臭いこそしないが、やせ衰え、着たきり雀であった。
見たところ女子が多い。
一番最後に背負われた女子が上がって来た。
「それは」
トランドが答えた。
「病気のようです」
「ポーションの在庫は」
「有ります」
「使わなかったのか」
「売れる予定がないので、使わないままです」
話によると、この国とベランルージュとの間が閉ざされたそうだ。
国境の川・ロートレインに架かる橋・レニスが壊され、
双方の対岸にあるパゴタ町とワルセフ町も壊され、
商取引が停止し続けていると言う。
誰のせいなんだろう。
トランドがぼやいた。
「この者達を買ったものの、売れる見込みが付かないのです。
金になりそうにないので、ポーションは使いません」
拉致された者達を買ったはいいが、国内では売れない。
この国・パラディンでも拉致は禁止されていた。
となると売り先は近いベランルージュしかない。
僕は病人を鑑定し、トランドに命じた。
「中級のキュアポーションを飲ませろ」
トランドが壁の隠し扉を開けた。
五段の棚にポーションだけでなく、奴隷の首輪も大量にあった。
トランドがキュアポーションを手にして、
女子の方へ歩み寄るのを尻目に、
僕は棚の物すべてを亜空間に収納した。
いやー、収穫、収穫。
トランドが途中で気付くが、目の色を変えただけ。
文句は口にしない。
女子が病気から回復した。
僕は成人女子二十四名、女児十五名、男児九名を見回した。
「暫くここで大人しく過ごしてくれ。
直に街中で戦いが起きる。
それが無事に終わったら、皆を解放する」
拉致された者達が全員、声を上げて喜ぶ。
対照的なのは借金奴隷とトランド。
彼等は、解放ではなく、戦いに意識が向いているのだろう。




