(故郷)28
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
僕は受付カウンターに回った。
職員・タルゼへの面会を求めた。
了承され、応接室に通された。
少し待たされるとタルゼが現れた。
飲み物を二人分持って来た。
僕には紅茶、自分には珈琲。
「砂糖は自分で入れてくれよ」
僕は適量入れた。
かき混ぜて一口飲み、タルゼを見た。
珈琲に口を付けていた。
「手代が人頭税を告げに村に来ました」
タルゼが目で先を促すので、成り行きを話した。
進むにつれ、面白いようにタルゼの表情が変化した。
途中から手元に珈琲を置き、耳を傾けた。
隠す事でもないので代官と伯爵に死罪を申し渡し、
手代を殺した経緯まで話した。
タルゼは途中で遮らなかった。
全て聞いてくれた。
「書類にしたいので、もう一人呼んで良いかな」
女子職員が呼ばれた。
時折、受付アウンターにいる女子だ。
あちらも僕を覚えているようで、にこやかな笑顔で会釈された。
「ジュリア君だっわよね」
僕が男言葉を通しているので、それに合わせてくれた。
「はい、宜しくお願いします」
再説明を求められた。
二度目だけど、面倒ではない。
これも一つの公式な手続き。
冒険者ギルドが相手だけど、公式な書類になる。
隠す事は一切ない。
喜んで口を全開にした。
時折、タルゼや女子職員からより詳細な説明を求められた。
否はない。
全て包み隠さず言葉にした。
書き上げると女子職員が僕を気の毒そうに見た。
「大変だったわね」
心底からの言葉だとは思う。
それでも遠慮はあるようだ。
手代を殺した事を文字にしても、触れない。
遠慮がないのがタルゼ。
そこに触れた。
「手代を殺した。
それだけで十分、お尋ね者になる。
だというのに、わざわざこの領都に来た。
つまり本気で代官を殺すと・・」
「本気ですよ。
家族や村の者達を殺した元凶です。
見逃せません」
「それで代官や伯爵か。
気持ちは分かるが、証拠がない」
「証拠は必要ありません。
まず訴え出る場所がありません。
だから僕の判断で殺します」
女子職員が口を開いた。
「そうなると国を敵に回すことになるわよ」
「大いに結構、全く気になりません。
それよりもですね、僕が気になるのは冒険者ギルドの立場です」
「立場・・・」
「お尋ね者になった僕をどう扱うかです。
国に協力して捕えるのですか」
タルゼが応じた。
「ギルドは第三者だ。
国の政には関知しない」
「つまり、僕を捕まえる手伝いはしないと」
「そうだ。
ギルドに捜査権があれば別だが、それは認められていない。
だから関知しない。
ただし、お尋ね者になると賞金がかけられる。
それを目的に君を捕えようとする冒険者が出る。
其奴らを止めるつもりもない」
「あくまでも第三者を貫く」
「そうだ」
僕は確認した。
「代官所に雇われている冒険者はいますか」
女子職員の顔が強張った。
タルゼを振り向いた。
どうやら守秘義務があるようだ。
そこで僕は断言した。
「二日後に代官所を訪れます。
その日、敷地内で武装している者は敵とみなします。
見つけ次第殺します」
タルゼが身を乗り出した。
「君は魔法使いのようだが、全員を殺せるほど魔力が続くのかね」
「普通よりは多いですね。
敷地内の冒険者が巻き添えになっても構わないですよね」
二人は困った顔。
でも頷かない。
僕は念押しした。
「二日後ですよ。
知り合いがいたら伝えて下さい。
代官所の敷地内にいたら手加減しないと」




