(故郷)27
僕達は領都を目指した。
『エロールイ市』。
ヘイセル伯爵が領地を統括する都市だ。
ただ、伯爵と家族は住んではいない。
伯爵一家は国都に屋敷を構えて、領地は顧みない。
税金を徴取するのみ。
それでもって栄華を謳歌している、そう聞いた。
領地を治めるのは任命された代官。
代々の伯爵は領政そのものに関心がないらしい。
代官に税金以外の一切を委ねているそうだ。
僕達は脇街道から逸れた。
小川の近くで足を止めた。
僕は皆に指示した。
「夕方になる前に野営の用意をしよう」
ここまで来た皆に隠す意味がない。
土魔法を起動し、整地した。
そこへ亜空間収納から【宿舎】を取り出した。
初めての者達は行き成り現れた宿舎に目を点にした。
「これは乙女の秘密だから、詳しくは聞かないで」
説明を省いて宿舎に入る為、皆に魔力認証を行わせた。
「これで皆、宿舎に泊まれる。
次はこれだね」
僕は光魔法を起動した。
僕を含めた全員に【ライトクリーンプラス】を実行した。
着たまま洗濯、乾燥、柔軟仕上がり。
入浴、洗髪、歯磨き、乾燥、艶出し、排便、排尿。
皆の目は点になったまま。
「こういう物だから、慣れるしかないわよ。
だからジュリア姉さまへの質問はなし」
経験者のエリカが先手を打ってくれた。
これは助かる。
説明なんて面倒臭い。
僕は普通に指示を続けた。
「ウンコやオシッコの時は僕に声掛けして。
いつでもやるから。
それに怪我した時や病気の時もね。
困ったらまず僕に声掛け。
大抵のことは出来るから」
「そういうこと。
さあ、食事の準備をしましょう。
ジュリアお姉さま、調理道具と材料を出して下さい」エリカが言う。
【魔物忌避】【第三者忌避】で夜は無事に過ごせた。
それでも諦めきれず、突入して来た魔物はいた。
が、全て魔力障壁ドームに阻まれた。
その魔物同士が争った結果、外は悲惨な事になっていた。
周辺に魔物の部位や血が飛散していた。
エリカが言う。
「朝食の前に解体し、部位や魔卵を採りましょう。
街で売ってお金にするわよ」
エロールイ市には割と早く着いた。
ここは相変わらず門番がいない。
ヒトライム村での昨日の出来事があるにも拘わらず、だ。
鈍感なのか、油断しているのか、腐っているのか。
判断する為、鑑定を起動して広げた。
周辺に代官所の手の者はいない。
僕達はまずテルーズ亭に行った。
宿泊の手続きだ。
カウンターのスタッフの顔色から判断するに、
噂にすらなっていないと知れた。
お陰で面倒がない。
部屋を借りた。
三部屋。
僕とエリカ、弟達三名、大人の獣人三名。
僕はエリカに小袋ごとお金を渡した。
「これで皆と相談して必要な物を買ってくれ。
僕は冒険者ギルドに行って来る」
「着替えね。
武器とか、防具とかは」
「必要なら買っても良いよ」
僕は冒険者ギルドを訪れた。
雰囲気にギスギスも、猛々しさもない。
通常営業されていた。
僕は買い取り窓口に歩み寄った。
「これを買い取って下さい」
肩掛けバッグ経由で亜空間収納から朝採りの魔物の部位、
魔卵、これまで貯め込んでいた薬草等を取り出した。
何時もの三倍くらいだ。
慣れている筈なのに、職員が驚いた。
「凄い量だね」
「村の皆に手伝ってもらいました」
「山分けか」
「村の皆には前払いで済ませています。
なので全額、僕の口座に入れて下さい。
ある程度になったら商人ギルドに預けます」
職員が表情を崩した。
「覚えていたのかい、良い事だ」
「増やせるなら、使わない手はないですからね」
「増やしたら、この街で家を買うのも良いかもな」
それはない。
門番のいない町とか、ないわ。
それに、この先、この町がどうなるか、想像がつかない。
原因となる僕が言うのだから、間違いない。




