(故郷)26
三人では終わらなかった。
エリカの祖母・エウメルが手を上げた。
「私も一緒しようかね」
僕は尋ねた。
「お尋ね者になるよ、いいの」
不敵に笑うエウメル。
「今更だろう。
それに、子供三人では何かと不便だろう」
「お願いします」
遅れて小さな二つの手も上がった。
弟・ナギラと仲が良い二人だ。
ベルとクラウス。
近親者がいないので同行したいと言う。
これまでの経緯もあり断れない。
許可すると嬉しそうにナギラの元に駆け寄った。
すると意外な二人が手を上げた。
「私達も」
エウメルと仲が良いメグとベネロペだ。
メグは犬人族。
ベネロペは狐人族。
猫人族のエウメルとは何かと話が合うようで、
よく一緒にいるのを見た事がある。
僕は少ない人垣の中にこの村の村長を見つけた。
歩み寄ってこれまでお世話になった礼を述べた。
すると村長は苦笑いを返した。
「それほどの世話はしていないよ」
「それでも」
「気にするな、当然の事だ」
僕は肩掛けバッグ経由で亜空間収納から小袋を取り出した。
「些少ですが、これで残った皆をお願いします」
小袋の重さに村長の表情が驚いた。
「これは」と小袋の口を開け、「こんなに」僕を見返した。
「魔法が使えるので見習いでも冒険者として稼げるんです。
気にしないで下さい」
それまで人垣の後ろに隠れていたピレリが前に出て来た。
「お前、何て事をしてくれたんだ」
こんな奴を相手にするのは時間の無駄。
僕はピレリの隣の奴に視線を転じた。
其奴は手代が渡して来た来年度の納税通知書を手にしていた。
「その額を払えると思うかい」
問われた其奴は肩を竦め、両手を広げた。
「無理だな。
傭兵団に全部持って行かれた。
今は生きるので精一杯だ」
「村のほとんどの土地は全て差し押さえられる。
どうするんだ、何か考えは・・・」
「うん・・・」困った表情。
「よく考えた方が良い」
「ジュリアはどうするんだ」
僕のやる事は一つ。
「伯爵と代官に死罪を申し渡した。
口にしたからには実行しないとな。
まずは領都の代官だ」
「本気か、やれるのか」
「誰も代わってくれないから、自分でやるしかないよ」
同行する皆が荷物を担いだ。
なかでも大人達の荷物が痛々しい。
呆れるほど少ない。
三人は村を失ったと同時に家財のほとんども失っていた。
それでも生活できていたのは、この村の助けがあったからだ。
感謝、感謝だ。
村長が僕達を止めようとした。
「行くにしても明日にしないか。
夜になれば魔物が出没する」
「大丈夫、僕がいる」
僕は新しく仲間入りした二人を鑑定した。
「名前、メグ。
種別、犬人族。
年齢、68才。
性別、雄。
出身地、パラディン王国。
住所、元カリス村住人。
職業、村人。
ランク、D。
HP、58/97。
MP、36/42。
スキル、生活魔法(水、風、土)」
「名前、ベネロペ。
種別、狐人族。
年齢、56才。
性別、雄。
出身地、パラディン王国。
住所、元カリス村住人。
職業、村人。
ランク、D。
HP、68/79。
MP、32/49。
スキル、生活魔法(火、風)」
二人とも人間で言えば高齢者だが、そこは獣人。
まだまだ中堅どころ。
十分に働ける。




