(故郷)25
ここで僕は深く反省した。
殺すのは簡単だが、だが、その死体の処理はどうする・・・。
この村の者達は第三者、巻き添えにしたくない。
では元の村の者達はどうだ・・・。
甚だ頼りない。
僕は方針を転換した。
水魔法、水槍・ウィンドスピアを手代の喉元に突き付けた。
「一度ここで死んでみるか」
手代が短い悲鳴を上げて、文字通り、腰を落した。
「ウギャッ」真っ青な顔。
手代が引き連れて来た者達が動きを止めた。
判断に迷っているようで、僕と手代を交互に見た。
手代が引き摺った顔で吠えた。
「殺せるものか、俺は代官所の手代だぞ。
この小娘が。
多少は魔法を使えるようだが、
代官所や伯爵様に歯向かって無事に済むとおもってるのか。
一族悉く皆殺しになるぞ」
僕は応じた。
「一族で残ったのは僕と弟だけだ。
一族の多くは傭兵団に殺された。
その恨み、代官や伯爵に返してやる」
「言うからには、その証拠があるのだろうな。
お代官様や伯爵様が傭兵団を動かしていたと言う証拠が」
「僕は捜査権力も裁く権力もないただの平民だ。
だから心証だけで十分だ。
代官も伯爵も有罪。
よって、代官や伯爵には死罪を申しつける」
また言ってしまった。
でも後悔はない。
僕は手代の喉元に水槍を深く突き入れた。
噴き出す鮮血。
それを見て代官所の者達が動こうとした。
僕は言葉で制した。
「動くな、お前達にはやってもらい事がある」
それで全員が足を止め、仲間内で顔を見合わせた。
「代官所に今見た事、聞いた事、余す事なく伝えろ。
近日中に代官を処刑に行く、それも伝えろ」
男達が動きを止めたままなので、僕は力の一部を示す事にした。
鑑定を起動した。
広げて場所を選定した。
村の外で、誰もいない丘。
そこは街道や間道から離れているので所有者はいない。
いるとしても魔物だけ。
実際に魔物がいた。
低級三十二匹と中級五頭。
僕は水魔法を起動した。
水玉・ウォータボール。
それを僕の周辺に待機させた。
三十七個。
途端、居合わせた者達が驚いて一斉に退いた。
僕と距離を置いた。
魔物をロックオン、ホーミングした。
僕は放った。
低級の水玉だが、僕の水魔法は上級。
本気なので今回の破壊力は低級とは桁違いになる。
僕の周辺から一瞬で消えた次の瞬間、丘で命中音が相次いだ。
まるで絨毯爆撃。
ドカン、ドカン。
魔物を貫いて着弾。
土煙が上がり、魔物の部位が吹き飛び、丘をも凹凸の形状にした。
居合わせた者達は皆、青白い顔で黙ったまま。
僕は連中を再起動させた。
「怪我人や死体を持って帰れ。
運ぶのが面倒でも、残さず連れ帰れ。
嫌ならここで土に還す」
代官所の者達が帰路についた。
それを見送り、僕は弟を見た。
「ナギラ、僕と一緒に行くよな」
ナギラは躊躇わない。
「うん、行く。
でもどこに・・・」
「どこかに、任せろ」
「任せる」
エリカが不満顔。
「私は」
「今回の件でお尋ね者になるのは僕。
連座で罪に問われるのはナギラ一人。
でもエリカは血縁じゃないから、罪には問われない。
ここに残っても大丈夫だよ」
「それは嫌、付いてく」
「お尋ね者だぞ、いいのか」
「守ってくれるんでしょう」
「ああ、付いて来るのなら約束しよう」




