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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
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(故郷)23

 一人が僕の手から二枚の紙を奪った。

半ば強引だったが、破れることも裂けることもなかった。

流石、異世界の紙事情。

厚いので多少の雨でも耐えられるだろう。

 奪った男は驚いた顔をした。

納税額を見たのだろう。

「こんな・・・、何だこの額は」

 手代が嘲笑う表情で応じた。

「村提出の書類をもとにして計算した。

金額に間違いはない。

ところで、お主は誰だ」


「俺はピレリ、先々代の村長の弟の血筋だ。

ジュリアより遠縁だが、村長の血筋には間違いがない」

 ピレリが同意を求めるように後ろを振り返った。

村人達の多くが首を縦にした。

それを見て取ってピレリが言う。

「ジュリアは子供だ。

分からぬ事も多いだろう。

弟が成人するまで俺が村長代行をする。

誰も異存はないな」

 またもや後ろを振り返った。

皆が首を縦にした。


 手代が僕に尋ねた。

「そうらしいが、君に異存は」

 僕がピレリの提案にホッとしたのは確か。

それでも確認は怠れない。

皆を振り返った。

「僕が代理を続けた方が良いと思う方、挙手を」

 真っ先にエリカが手を上げた。

祖母のエウメルも。

遅れて弟のナギラや仲間達。

クラウスとベルの二人だが。

何れも人頭税の枠の外にいる者達ばかり。


 ピレリが得意そうに僕に言う。

「そういう訳で俺が村長代理だ」

 手代が頷いた。

僕は負けて嬉しかった。

こんな役目から逃れられて、とてもとても嬉しい。

喜色満面で後ろに下がった。


 ビレリが手代に強い口調で尋ねた。

「この金額には納得できん。

元の村は見て貰えば分かるが、傭兵団の襲撃で壊滅同然。

生き残った者達はここで生きるので精一杯。

支払える訳がないだろう」

 手代は顔色一つ変えない。

「それが何か」

「支払えないと言ってるんだ」

「となると村を差し押さえるしかないが」

 聞いていた村人達が顔色を変えた。

憤る者がほとんど

なかには一歩二歩、足を踏み出した者もいた。

 それを見て、手代の連れの者達が肩に担いでいた槍を下ろした。

何時でも構えられる態勢。

槍は五本。

弓持ち三名は身動きしない。

槍で事足りると確信しているのだろう。


 手代が全体を見回し、余裕の表情で言う。

「何かあれば代官所に知らせるのが手順と言うものだ。

しかし、カリス村からは何の報告もなかった。

せめて一言あれば減免できたのだがな」

 ピレリが怒鳴る様に言う。

「村長も世話役も殺された。

それでどうしろと」

「それはそちらの手落ち。

この金額は王都の伯爵様が決められたもの。

それを反故にする事は私共、下の者にはできない。

分かるだろう」


 ピレリは引かない。

執拗に抗議した。

村の皆も抗議に同調した。

「横暴だ」

「村はご先祖様達が開拓したものだ」

「誰が渡すものか」

 しかし手代の様子は一向に変わらない。

他人事と言わんばかりに、ひょうひょうとしていた。

まるで暴発するのを待っているかの様。

そうだ。

暴動を待っている。

僕はそう確信した。

「暴動を誘発するつもりですか」

 僕の一言で場が凍った。


 代官が顔を顰めた。

ピレリが身体を強張らせた。

村人みんなが身を震わせた。


 僕はピレリのステータスを見た。


「名前、ピレリ。

種別、人族。

年齢、38才。

性別、雄。

出身地、パラディン王国。

住所、元カリス村住人。

職業、村人。

ランク、E。

HP、45/65。

MP、10/30。

スキル、生活魔法(水、風)」


 普通の村人だ。

口だけで役立つスキルはない。

この手の交渉には相応しくないだろう。

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