(故郷)22
タルゼの話を聞いてからと言うもの僕の頭は、人頭税、人頭税。
誰かが減免の手続きをしていれば良いが、
そうでなければ村は困った事態に追い込まれる。
それが気になって薬草採取が手につかない。
僕は村に戻った。
エリカの祖母・エウメルが僕の顔色に気付いた。
「どうした、顔色が優れないわね」
僕はタルゼの名は伏せて、人頭税の一連の話をした。
聞いたエウメルも顔色を変えた。
「村長だけでなく世話役も亡くなったわ。
そうなると減免の手続きをする者がいないわね。
私達年寄りは税金を支払う義務はないけど、それでも困るわ。
村は皆の物。
どんな理由があろうとも領主には渡さないわ」
エウメルは教会を借り、生き残った村人を集めた。
当然、僕も呼ばれた、と言うか、僕は説明役。
ここでも僕はタルゼの名は伏せた。
タルゼの名を出して、余計な面倒をかけたくなかった。
僕の話を聞いた途端、皆の顔色が変わった。
村再建を望む者達だけでなく、皆一様に困惑の表情。
次々に質問が来るが、それに答える術はない。
世間知らずの僕・・・。
結論が出る筈もなく、六日が過ぎた。
そこへ意表を突くようにヘイセル伯爵の家臣が現れた。
国都に居住する伯爵の代わりに領地を預かる代官の配下だ。
役職は手代。
手代はこのヒトライム村への来年度の課税額を通知を終えると、
僕達カリス村の生き残りを集めた。
「村長はいるか」
いない。
「それでは世話役は」
いない。
手代が嘲笑う様に言う。
「いないのか、困ったな。
そうなると、今の村の長は誰になるのかな。
その者に納税額を通知したいのだが」
大人達は互いに顔を見合わせ、首を傾げた。
困惑する僕達に手代が親切めかして言う。
「村長の家族は、できれば弟か、息子はいないのか」
いない。
弟は一人いたが、傭兵団との戦いで亡くなった。
息子二人も亡くなった。
女子達は拉致され、どこかに売られた。
困っていると、生き残りの一人が言う。
「そうだ、ナギラのお母さんは村長の妹だったよな」
そうだった。
母は村長の妹だった。
だけどそれが・・・。
皆の視線が弟に向けられた。
手代がナギラに尋ねた。
「お母さんが村長の妹だって」
ナギラが僕を振り返った。
その表情は不安の塊。
そこで僕が応じた。
「確かに母は村長の妹です。
それが何か」
「という事は君はナギラ君の姉かね」
「はい、ジュリアと申します」
舌舐めずりするかのような手代の視線。
発育途中の女の子をそんな目で見るとは。
変態だ。
手代は僕と弟を見比べた。
「弟は小さいな、成人してないな。
ジュリアはどうだ」
「僕も成人はしていません」
手代はちょっと考えた。
「僕か・・・」嬉しそう。
手代は皆を見回した。
「他にいないのか」
いない。
「それでは年長のジュリアが村長代理だな。
弟が成人するまで頼むぞ」
村の者達に異論はなかった。
それを確認した手代は僕に一枚の上等な紙を手渡した。
「それが来年度の納税額だ。
年初めの一月末までに納める様に。
理解したら、こちらに署名してくれ」
もう一枚の紙を手渡された。
幾つかの村の村長らしき署名が為されていた。
一枚目の紙を見て僕は驚いた。
今の村人口で集められる金額ではない。
それを横目で見ていた手代が言う。
「納める金額が少なければ、その差額分、村の土地を差し押さえる。
いいな、分かったな」
僕は唖然とした。
タルゼの危惧していた事態になった。
どうしよう。
村長代理もだが、この納税額・・・。
顔を歪ませて手代が言う。
「さあ、これに署名してくれ」




