(故郷)21
平穏な日々を過ごしていた。
街では冒険者として薬草採取。
村に戻ると子供達と遊んだ。
過不足のない生活。
これ以上の贅沢はないだろう。
ところが街中の空気が一気に変わった。
重くなった。
税金、税金。
その言葉が人々に重くのしかかった。
人頭税。
十才から五十才までの人間に課される税金だ。
公明正大に、平等に一定額が徴収される。
ジュリアも薄っすらとしか記憶していない。
病弱であったのが原因と言うより、親の領分であったからだ。
僕はユニークスキル・異世界文明理解で学んだ。
人頭税、それは単純明快にして、逆進性の強い税制であった。
それぞれの収入に課税するのではない。
貧乏人も金持ちも平等に課され、徴収される。
富の再分配から最も遠い税制だ。
僕は詳細を確認する為に冒険者ギルドに足を運んだ。
顔見知りの職員・タルゼに面会を申し込んだ。
幸い、在席していた。
僕を見ると嬉しそうな顔をした。
「ジュリア君、久しぶりだな、元気にしてるか」
「はい、何とか生きています」
「頑張って貯蓄もしてるようだが」
「少しだけです。
それよりも相談です」
「いいよ、何だい。
何か厄介事に巻き込まれたのか」
「皆が税金税金と言って顔色が悪いので、聞きに来ました。
僕も税金を払うのですか」
タルゼが頭を捻った。
「十才からだが、冒険者としてギルドに登録している者は、基本、
この領地の民でもなければ、この国の民でもない。
支払う義務はない。
・・・。
文句が出ればこの領地から撤退する。
国から出ればその国からも撤退する。
それは他のギルドも同様だ。
そうなれば魔物の討伐は誰がやる。
商品は誰が動かす。
ポーションは誰が造る」
ギルドは国には所属していない。
無国籍の存在だ。
所属する冒険者も同様の措置を受けていた。
しかし、それでは納得せぬ層が一定数存在する。
道路や橋を造り、保全する領主や国主だ。
けれどギルドには手が出せない。
冒険者ギルド、商人ギルド、薬師ギルド、鍛冶師ギルド。
他にも小さなギルドが存在し、互いに協力し合っていた。
これらが団結すれば、人材的にだけでなく、
資金的にも敵う訳がない。
僕は税制の外側にいるそうだ。
けれど、タルゼが口ごもった。
「ジュリアの村はカリス村だった、かな。
それだと今回は大変かも知れん、なっ」
「それはどう言う訳ですか」
「村長は手続きしているのか」
「村長は亡くなりました。
傭兵団の襲撃のおり、戦死したと聞いています」
「村の世話役の者は」
「誰が村の世話役だったのか、詳しくは覚えていません。
「傭兵団に襲撃されたのなら、それを領主に届けて、
減免の手続きをする。
そうしないと前年通りか、それに近い金額が徴収される。
どうだ、分かるか」
「分かりません。
誰が今の村の村長か、世話役か」
みんな生きるのに精一杯で、そんな話は聞いた事がないです」
暫くしてタルゼが重々しく言う。
「下手するとカリス村の権利を領主に奪われるかも知れんな」
「村の権利ですか」
「ジュリア君はあの頃は生まれていないから知らんだろう。
かく言う俺も生まれていないけどな」
「昔の話ですか」
「そうだ。
百年ほど前はここは別の国だった。
そこへパラディン国が攻め込んで来た。
そして国を滅ぼし、占領併合した」
「その辺りは聞いています」
「そうか。
その占領の際、町や村には手がつけられなかった。
国主一族を族滅させるのを優先し、旧来の法度が守られた。
町や村の自治を許して民を懐柔しようとした。
けれどあれから百年ほどだ。
旧国はじわじわとパラディンの色に染められつつある。
実際、旧国の町や村が領主に権利を奪われる事態も増えてきた」
「権利って何ですか」
「土地の所有だ。
旧国では個人の土地所有を許していた。
けれど、パラディンは違う。
土地は基本、国主か領主の所有で、民の所有は許さない。
・・・。
下手すると土地を取り上げられるかも知れんな」




