(故郷)20
気付いたら村で五泊していた。
僕にとっては知らぬ村生活だったが、ジュリアの記憶の影響か、
馴染んでしまった。
特にナギラには。
ジュリアの弟だが、僕には無縁の存在、そう思っていた。
ところがナギラには区別がつかない。
当然のように懐に入って来た。
何につけて話しかけて来る。
それで情が移ったのか、僕は可愛がってしまった。
「お姉さん、私も」
エリカが嫉妬して割って入る。
それをナギラが邪険にした。
「僕の姉さんだ」
「なに言ってるの。
私とお姉さんは一緒に旅して、助け合って来たのよ。
血は繋がっていないけど、立派な姉妹よ。
そうよね、ジュリアお姉さん」
寝るときは二人に挟まれる形になった。
村で英気を養い、六日目に街に戻った。
街では最初にテルーズ亭に顔出しした。
「部屋空いてる」
「丁度空いたわよ」顔馴染みのスタッフ。
そんなに都合よく空くとは思えない。
元々空いていたのか、僕の為に空けていてくれたのか・・・。
どちらなんだろう。
夕食を摂る為に食堂に入った。
時刻柄か満席に近い。
冒険者や商人が大半だ。
酒が入っているのか彼等の口が軽い。
喋る、喋る。
噂話に耳を傾けた。
無駄話が多い。
一つ分かった。
短い間だったので、街にそれほどの変わりはなかった。
僕が関心あるのは土魔法絡みの噂。
僕は薬草採取の傍ら、魔物を討伐していた。
前回もそう。
ガゼミゼルに率いられたガゼローンの群れを土魔法で始末した。
纏めて沼地に沈め、土地を復元した。
傍目には生き埋めの形になった。
そこへ運悪く来合わせた者達がいた。
冒険者パーティだ。
僕は目撃されていないが、
地面から生えている足や尻尾等を見られた。
明らかに異常な事態。
彼等の口から土魔法の使い手が話題になる、そう考えた。
僕と土魔法を関連付ける者はいないだろうが、油断はならない。
逃げるように村に一時的に戻った。
姿を隠せば、容疑者には数えられない。
それが功を奏した。
僕の名は浮上していない。
ただ、ただ・・・。
壊滅させられた傭兵団や盗賊団と関連付けされた。
そして、謎の上級の土魔法の使い手の存在が明らかにされた。
僕はゆっくり咀嚼した。
ここの料理は美味しいのだが、今は何も感じない。
さて、どうする。
僕はローブ姿と杖で魔法使いのイメージを周囲に与えていた。
今さら剣とか槍はない。
土魔法は当分控えるとして、では火か水、あるいは光か闇、
それとも雷か氷・・・。
目立たぬのは・・・。
僕はそれからは土魔法を封印し、水魔法を有効に活用した。
火魔法だと場所によっては火事に発展する事があるので、
それしかなかったとも言えた。
まあ、それでも問題は生じなかった。
ここいらの魔物は水魔法で十分だった。
冒険者を続けながら村に戻る生活を送っていたが、
このところ村に戻る頻度が上がった。
訳はエリカとナギラだ。
二人の生活魔法が枠を超えそうなのだ。
エリカが目を輝かせて僕に尋ねた。
「魔法使いになればお姉さまと一緒に冒険者になれますね」
僕ははっきりさせた。
「魔法だけでは駄目だよ。
読み書き、それに計算が出来なければね。
魔物より怖いのは人なんだ。
弱みを見せれば付け込んで来る。
食い物にしようとする」
ナギラが引き取った。
「だから身を守る為に体術や剣術、盾術も学ばなければ、ねっ」
僕はナギラの頭を撫で回した。
「そうだ、ナギラは分かっているな。
よしよし、いい子だ。
・・・。
エリカ、修業して強くなるしかない。
それなりの腕前になるまで待つから焦っちゃ駄目だよ。
しっかり基礎を学ぶんだ」




