(故郷)19
家に入ると肩掛けバッグ経由で亜空間収納から、
それぞれに土産物を取り出した。
エリカには街で人気のお菓子とお人形。
「嬉しい」
エリカは右手にお菓子、左手には人形を持ち、交互に見比べた。
キョロキョロ、キョロ。
どちらが嬉しいのか分からない。
まあ、いいか。
弟・ナギラには白紙の束と竹ペン、インク。
小さなころから、今も小さいが、落書きが好きだった弟。
紙の束とペン、インクを見て大喜び。
「凄い、高かったよね、姉さん」
確かに高かった。
竹ペンはそれ程でもなかったが、
紙とインクは子供が気軽に買える物ではない。
「子供が値段を気にするな」
僕も立派な子供だけど。
弟の仲間二人にも紙の束と竹ペン、インク。
「僕達にも」二人は大喜び。
「これで勉強するんだ。
読み書きと計算ができれば、世の中なんとかなる、たぶん」
「たぶんかい」弟が口出しした。
「ナギラ、絵を描いてもいいけど、
読み書きや計算した紙の裏に描くんだ。
約束だ、いいな」軽く睨んでやった。
「わっ、分かった、約束する」
エリカが余裕の笑い。
「私が見張ってるわ」
僕は思わず尋ねた。
「エリカ、貴女はしっかり勉強してるよね」
エリカは口を噤んで、目を逸らした。
子供達に街での冒険者生活を語っていたら、
この家を共同で借りてる大人達が戻って来た。
一人身になった女五名。
年長のエウメルが引率していた。
僕を見て、声を掛けて来た。
「お帰り、エリカ達が大喜びしただろう」
「ええ、煩いくらい」
「外にまで笑い声が聞こえて来たよ」
僕は前世では処世術とは無縁であった。
当時は大人になりかけの少年で、考えたことすらなかった。
でもここでは違う。
子供だからと言って、それでは田舎での社会生活は営めない。
居候のそのまた居候なのだから。
弟たちは人質に取られたようなもの。
僕は肩掛けバック経由でお土産を取り出した。
女性陣に好まれそうに物ばかり。
ハンカチやタオル、大量の布切れ。
石鹸に洗剤、化粧品に医薬品。
そして、街で大人の女性陣に人気のお菓子詰め合わせを人数分。
「気を遣わせて悪いわね」
エウメルが苦笑い。
「気にしないで下さい。
他人の村なんです、色々と気苦労もあるでしょう」
「それを子供に言われるとはね。
ワシも年を取ったもんだ」
「猫人族は人の倍は生きられるでしょう。
エウメルさんより僕が先に死にますよ」
「アッハッハッ、笑わせてくれるね」
エウメルはもう一人の猫人と大笑いした。
女性陣が夕食の準備に取り掛かった。
その様子を見て、僕はある発見をした。
五人は魔法使いではない。
生活魔法が使える程度。
そんな彼女達が生活魔法を巧みに使い、炊事や掃除、風呂、
それらの補助をしていた。
少ない魔力で水を無駄なく溜める。
火付けと煮炊き、焼き物。
重ね掛けする者もいた。
それぞれが自分の魔力値を自覚しているのか、
空っぽにして倒れる者はただの一人もいない。
俺はエリカを呼び寄せた。
「大人の人達の手伝いをして、魔力操作を真似た方が良い。
それが早道だ」
「お姉さんがそう言うなら。
上手くなったら私も冒険者になって良いんでしょう」
「上手くなったらな」
「約束よ」
「分かった」
そこにナギラ達が来た。
「僕達も冒険者になりたいよ」
「村仕事は」
「親が死んだから自分の土地がないよ」ベル。
「農作業を教えてくれる身内もいないよ」クラウス。
そしてナギラ。
「冒険者になって姉さんを助ける」
「僕もそう」ベル。
「僕も」クラウス。
慌てたようにエリカが割って入った。
「私が姉さんを助けるわ。
私一人で十分よ」




