(故郷)18
僕は鑑定を広げて周囲を調べた。
他にオークの姿はない。
そもそも、この辺りでオークを見掛けることは少ない。
彼等の生息地は、ここからだと遠方になる。
目の前の番は流れて来たと推測するしかない。
その雄は僕が離れたからか、斧を置いて雌に手を差し伸べた。
種は違うが、番に対する情は人と変わらぬらしい。
魔物にしては、いじらしい。
僕は番から距離を置いて、村へ方向を転じた。
丘を越えた先に人の二人分の高さの岩を見つけた。
草地の中にポツンと、まるで置いてあるかのようだ。
良い物件だ。
足を速めた。
辿り着くと岩を攀じ登った。
割と登り易かった。
と言うか、体力が付いたのを実感した。
そこで自分を鑑定した。
ランクは変化なしだが、HPの数値が上がっていた。
ランク、D。
HP、38/55。
MP、88/99。
上限が50から55に上がっていた。
小さな変化だけど嬉しい。
お祝いに昼飯にしよう。
腹も減ったし。
弁当を取り出した。
テルーズ亭ご自慢の一つ、ステーキ弁当だ。
添え物はポテトサラダ。
心地好い風が僕を撫で回す。
汗ばんだ身体には最高のご馳走だ。
こう言う時間が長く続けばいいのに。
ステーキの一片を噛み締めながら鑑定を広げた。
オークの番は緩い足取りで反対方向へ向かっていた。
他にも魔物はちらほら。
それでも警戒すべきほどの奴はない。
思っていたよりも早く村に着いた。
外周の木柵の門番が僕に気付いた。
「お嬢ちゃん、お帰り」
僕は認知されていた。
彼等に手を振り、真っ先に教会に向かった。
だけど子供達はいない。
「子供達に教えるのは午前中だけ。
お昼を食べさせて家に帰します。
そうしないと働き手の少ない家から文句が出ますからね」
教会に常駐している司祭様が教えてくれた。
なんて世知辛い。
僕は肩掛けバック経由で亜空間収納から土産物を取り出した。
「童話の古本です。
教会で使って下さい」
街で買い求めた物だ。
八冊、古本でも高価で取引されていた。
それを知ってか、司祭様が顔を歪めた。
「高かったでしょう」
「気にしないで下さい。
これでも薬草探しは得意なのです。
それに、まとめ買いなのでお安くなってます」
確かに安くして貰った。
次もこの店で買うと約束してだけど。
あの店も世知辛い。
「私達も童話の本や数え方の本は欲しいのですが、
子供達にばかりお金はかけられないのですよ。
本業は教会ですからね。
教会儀式や冠婚葬祭に必要な物が不足せぬように、
そちらにもお金を回さないといけないのです」
司祭様がぼやいた。
僕は思わず同感した。
「そうですよね。
教会が本業ですからね」
「ですから、今後もご協力をお願いします」
頼まれてしまった。
家に戻り、入ろうとするところを後ろから呼び止められた。
「お姉ちゃん」
笑顔のエリカがいた。
息せき切っているところを見ると、どこかで見られていたらしい。
僕が返事するより早く、エリカが飛び込んで来た。
「ええっ」僕は何とか受け止めた。
エレカの耳が僕の首を擽った。
「お帰りなさい、ジュリアお姉さん」
弟、ナギラや仲間のベルやクラウスもいた。
彼等も息が荒い。
エリカの後を追って来たのだろう。
女児の足に負けるとは何事だ、弟達よ。
これは鍛えねばならない。




