(故郷)14
僕は冒険者ギルドで清算に応じた。
対象になるのは二つ。
成功報酬の25万ベレル。
弟の買い取り金額の上限、90万ベルク。
共にギルドに預けていた。
「買い取り予定金額の90万ベルクは返却して貰います。
成功報酬は無駄足でしたが、それは支払わせて頂きます。
ブラッシュ傭兵団の情報料として」
職員のタルゼが驚いた。
「いいのか、失敗も同然なんだが」
「ブラッシュ傭兵団都合の失敗なんです。
咎める要素は一つもありません。
ギルドと依頼受注者で分けて下さい」
テルーズ亭で夕食にした。
宿の料理は美味しいのだが、何か欠けていた。
部屋に戻ってそれに気付いた。
エリカだ。
これまで常に行動を共にしていたエリカが欠けていた。
エリカ成分が・・・。
でも、これからは一人に慣れるしかない。
エリカには幸いにして祖母が生き残っていた。
その祖母と二人で生きて行く道がある。
生き残った村人達もいた。
避難先の村の村長も出来物、頼りになる。
僕の進む道に巻き込めない。
ベッドでこれからを考えた。
弟を保護した事でジュリアには恩を返した。
これ以上、村にいる必要はない。
弟には弟の道がある。
生き残った村人の一員として、互いに支え合えば良い。
まだ小さいけど大丈夫だろう。
魔法使いになった僕と行動を共にするより、
ただの平民として生きるのが弟の為になると思う。
弟もまた、僕の進む道に巻き込むのは鬼畜の仕業だろう。
かと言って、僕はどこへ進む・・・。
改めて考えたら、何もなかった。
ジュリアへの恩返しを終えたら、無しかなかった。
どうしたら・・・。
まあ、急ぐ必要はない。
誰とも、何の約束も、制約も、柵もない。
ここを拠点に冒険者生活をしながら考えるとしよう。
ついでに弟やエリカの様子も見てみよう。
僕はテルーズ亭を根城に、冒険者稼業を再開した。
と言っても見習いなので成人用の依頼は受けられない。
出来るのは見習い向けの常時依頼の薬草採取、
ないしは街中の仕事。
僕の服装は当然、男物。
下着も靴下もだ。
これにズボン、シャツ。
術式を付与した革長靴。
剣帯にはナイフ三本、鋼の短剣。
肩掛けバッグ。
そして術式を施したフード付きローブ。
左手に竹籠。
この恰好、傍目にはどう見えるんだろう。
冒険者ギルドに入った。
朝だから人が多い。
特に掲示板前が。
僕に目をくれる者は少ない。
さあ、情報収集だ。
身体強化、特に目と耳。
離れた箇所から掲示板を読み、噂話を聞いた。
耳に二つの名が入って来た。
ブラッシュ傭兵団とクルソー盗賊団が潰されていた。
ブラッシユ傭兵団は分かる。
問題は盗賊団。
あの時は気にも留めなかったが、
噂からすると盗賊団は僕が村に入る前に、
土魔法の泥沼で溺れさせた連中に違いない。
幸い僕の名前は出てこない。
安心した。
僕は薬草採取で町の外に出た。
肩掛けバッグ経由で亜空間収納から魔法杖を取り出した。
右手に持ち、鑑定を起動した。
ベランルージュ王国での経験を活かした。
鑑定で薬草を探して採取、ついでに魔物討伐した。
討伐した魔物は亜空間収納に取り込み、
解体、仕分け。
魔卵や売れる部位、食べられる部位は確保して、
不要な部位は粉砕して地中に排出した。
買い取り窓口で、薬草採取していたら魔物に襲われました、
そう言い訳して竹籠から数種類の薬草、
肩掛けバッグバック経由で亜空間収納から魔卵や部位を提出した。
数に驚かれた。
「あんた、見習いだろう」
「見習いだよ。
成人してないから見習い。
でも魔物討伐はできるよ、慣れてるからね」強調した。
小物クラスのゴブリン等の魔卵や部位で驚かれては困る。
僕の亜空間収納には大物や中堅どころの在庫もあるのだ。
それも豊富に。
今は目立ちたくないから提出を控えているだけ。
何れ信用が積み重なったら提出するつもりだ。




