(故郷)13
夕方、ヒトライム村の教会にカリス村の生き残りが全員集まった。
戻った弟達の歓迎会だったのだが、途中から深刻な話になった。
弟達が家族について尋ねたからだ。
いずれにしても避けられない事だった。
生き残りの古老があの日の出来事を語った。
足りない部分は、知っている者が補った。
僕は弟・ナギラの抱き寄せて聞いた。
その弟だが、途中から小刻みに震え、泣き始めた。
弟だけではなかった。
クラウスとベルも声を上げていた。
話している大人も言葉に詰まりながら、我慢して続けた。
それも無理からぬこと。
他の大人達も幾人かが涙していた。
当然、僕も知らぬうちに涙を流していた。
本来、僕は僕なのだが、ジュリアの記憶が強く影響したのだろう。
止めようがなかった。
隣ではエリカも泣いていた。
僕は清く諦めて泣いた。
弟は当然ながら、僕が手元に引き取った。
ところが、クラウスとベルの引き取り手がなかった。
肝心の親兄弟は殺されていた。
近い血縁の者もいたが、家も畑もヒトライム村からの借り物なので、
当人達そのものに余裕がなかった。
仕方なく、僕が引き取る事にした。
「任せて」
このところ膨らみかけた小さな胸をドンと叩いた。
それに反対はなかった。
反対すれば、反対した当人に降りかかるので、誰もが口を噤んだ。
エリカの祖母達が借りている家屋が弟達の住まいになった。
小さくて狭いが贅沢は言っていられない。
弟達の身心の疲れを考慮して暫く休養させる事にした。
でも僕は違う。
その三名分の生活費を稼がなければならない。
直ぐに仕事だ、仕事。
畑を借りても耕すには女児の力では無理。
魔法を使えば出来るが、目立ってしまう。
そこで僕は慣れた薬草採取を行う事にした。
採って町の冒険者ギルドに売りに行けば良い。
駄目なら商人ギルド。
エリカの祖母達が村の外での採取に猛反対した。
「魔物が出没するわよ」
確かにそうなのだが、それは単なる女児の場合。
僕は違う。
これまでの長旅で魔物には慣れていた。
僕は祖母達を説得した。
「大丈夫、この村に戻るまで沢山の魔物を討伐して来た」
肩掛けバック経由で亜空間から魔卵を何個か取り出した。
大きいの、小さいの、適当に並べて見せた。
それを見た祖母達の目が点になった。
「ジュリア、攻撃魔法が遣えるのか」
「それは乙女の秘密」
傍でエリカが得意満面の笑み。
僕はもう一人を説得しなけばならなかった。
エリカだ。
「エリカは連れて行かないよ」
「どうして」
「読み書きと計算ができるかい」
エリカが顔を曇らせた。
「うう・・・、それは」
「それを学んでもらう」
「どこで」
「教会だよ。
僕が村長と教会に話を通しておく。
だから頑張って」
「でも・・・」
「読み書きと計算、それに魔力の操作が出来るようになったら、
薬草採取に連れて行くよ」
エリカは考え込んだ。
僕は諸々の問題を解決してエロールイ市に入った。
徒歩だ。
荷馬車は村に寄付した。
「うちの村の者達がお世話になっているので、その御礼です」
村長は快く受けてくれた。
ついでに、うちの村の子供達の教育も受けてくれた。
テルーズ亭に宿をとり、冒険者キルドに顔を出した。
職員のタルゼに面会した。
「どうなりました」
弟達の買い取りをギルドに依頼していた。
こちら的には解決したのだが、
ギルド的には依頼中の扱いになっていた。
僕が素知らぬ顔で尋ねると、タルゼが申し訳なさそうな顔をした。
「受注した者が戻りました。
その者の話によると、ブラッシュ傭兵団は潰れていたそうです。
そういう訳ですので、弟様の買い取りは行われませんでした」
僕は気落ちした顔の演技。
「そうですか。
仕方ありませんね」




