(故郷)12
馭者が僕達を見て言う。
「どこのお子様達かは知らんが、全員、懐の財布を出せ。
ついでに持ち物も全て差し出せ。
そうすれば命までは取らん」
冒険者パーティの大きな男が馭者を笑う。
「それではまるで盗賊ではないか」
連れの二人がそれを聞いて馬鹿笑い。
「ぎゃっはっは、ひでえ奴だ」
「人でなし、はっはっは」
僕は皆を庇うようにして前に出た。
ついでに鑑定した。
馭者は本物の馭者。
冒険者三人も本物の冒険者。
だとすると盗賊が副業なのだろう。
僕は聞いてみた。
「本当に命は助けて貰えるのか」
馭者は気安げに答えた。
「当然だろう。
俺達が欲しいのは金だ。
さあ、観念して出せ」
「本当に」
「本当だ、だから差し出せ」
小柄な男が僕達を見た。
「さっさとしろ、俺達は気が短いんだ」
気の短さを自慢した。
僕は思わず男に言った。
「だから身長も短いんだ」
男は顔色を変えた。
「この野郎、言わせておけば」
僕の方へ馬を寄せて来た。
怖い顔、笑える。
既に僕は土魔法を起動していた。
貫通力特化の土玉・アースボール八発、待機。
各人の左右の足甲をロックオン、ホーミング。
それを問答無用で放った、Go、Go。
上がる悲鳴。
左右の足甲から噴き出す鮮血。
身体のバランスを崩し、それぞれが地面に転がり落ちた。
驚いて三頭の馬が逃げ出した。
荷馬車の馬は馭者が泣き叫んでも目もくれず、僕達を振り返り、
食い入るようにジッと見た。
僕は馬に優しく言った。
「大丈夫、何もしないよ」
理解したかどうかは知らないが、馬は足下の草を食み始めた。
弟・ナギラが男児を代表して僕に問う。
「姉さん、凄い、それ魔法だよね」
「それは内緒、見なかった事にしろよ」
「わかった。これからどうする」
「僕が馭者をするよ。
初めてだから、どうなるか分からないけど、まあ、やってみよう」
「この盗賊達は」
「夜になれば魔物が綺麗にしてくれるだろう」
僕は馬に話しかけた。
「走ろうか」
直ぐに走り始めた。
それも元の道に引き返すではないか。
馬の勘で、雑木林の先に危うさを感じたのだろう。
街道に戻ると、僕は手綱で方向を教えた。
「そこから右」
「そこは左」
鑑定のマップを頼りに、うろ覚えの道筋を辿り、
途中で人に会えば聞いて、ヒトライム村を目指した。
日が暮れる前に村に立ち寄り、宿屋に泊まった。
エリカと二人なら野営も可能だが、弟達が一緒では説明に困る。
乙女の秘密で切り抜けられる訳がない。
何かと面倒だ。
苦渋の末の宿屋。
女児二人で一部屋。
男児三人で一部屋。
金払いの良い僕に宿屋の者は変な顔をしたが、深く追及しない。
不自然に思いながらも、ただの客として扱う。
翌日の昼過ぎにヒトライム村に着いた。
外囲いの木柵の門番が僕達に気付いた。
「よお、お嬢ちゃん達、話は聞いているよ。
弟達を見つけたようで、良かったな。
しかし馭者もできるのかい」驚かれた。
「初めてだよ。
馬の出来が良いから、戻ってこれたと思う」
「なんにしても、
戻ってこれて良かったな」
「はい」
内囲いの木柵の門番も驚きながらも、快く通してくれた。
荷馬車の僕達が目立つのか、
近くにいた子供達が駆け寄って来た。
「ジュリア、お帰り」
「エリカもお帰り」
何時の間にか顔が知られていた。




