(故郷)10
子供達は思っていたよりも足が早かった。
僕達を軽々と追い越して町へ向かう。
見つけた時は川で洗濯をさせられていたが、
一方では少年兵にすべく鍛えられていたのだろう。
それが足に表れていた。
焦ったエリカが身体強化して追い掛けようとするので、僕は止めた。
「身体強化ばかりだと身体が育たないよ」
エリカはあわあわした。
「分かってる。
でも、負けられないの」
これまでは僕の妹分で満足していたのに、
ここにきて急に同年代の子供達への対抗心を露わにした。
好意的に見れば、年相応の子供に立ち返った。
それは素直に嬉しい。
エリカは素の体力で追い掛けた。
獣人であるから少しは勝負になるかなと見ていたら、ならなかった。
その前にゼイゼイと喘ぎ、足を止めた。
僕は誰にも分からぬようにエリカに治癒魔法をかけた。
基本中の基本、ヒール。
本来は外傷や骨折等に用いるのだが、それでHPを回復させた。
エリカの場合、HP35なので初級で十分だった。
10を使用して20回復させた。
何とも贅沢な使用方法。
エリカが僕を振り返った。
理解したらしい。
「ありがとう。
絶対がんばるの」
良い笑顔で再び走り出した。
僕は額の汗を拭った。
かく言う僕も悪戦苦闘。
子供達の後を追い掛けて疲れた。
僕の場合はHP50なので、皆の中では有利な筈なのだが、
子供達に追い付けない。
これが自然児と蘇りの差か。
でも僕はヒールはしない。
自分を鑑定しながら、疲弊せぬように我慢して追い掛けた。
それとは別に鑑定で周辺の魔物や獣を警戒した。
日が完全に暮れると奴等の時間。
次第に増えて来るはずだ。
今のところ、ちらほらと出没していた。
が、こちらに関心を示す物はいない。
大半は小川へ向かっていた。
結局、僕もエリカも男児達には一度として追い付けなかった。
足をクダグタさせたエリカを回収して進むと、
町の入り口でその三人が笑顔で待っていた。
「二人とも足が遅いよ」
ナギラの言葉にエリカが反発した。
「ふん、それが何、悪いの」
「だって遅いじゃないか」ナギラより一つ上のベル。
「そうだ、そうだ」ナギラと同じ年齢のクラウス。
言い争いになると仲直りさせるのが面倒なので、
僕は話題を変えた。
「三人とも知らないだろうが、生き残った村の者達は全員、
隣村に避難している。
ヒトライム村だ、知ってるかい」
ベルが僕に尋ねた。
「親戚がいるから知ってる。
それで、僕の家族は、クラウスの家族は、ちゃんと生き残ってる」
答え難い質問が来た。
「知ってるだろう。
ひ弱な僕が家からあまり出なかったこと。
ほとんど家に引き籠っていただろう。
だから、正直、誰が誰の親か、子か、よく知らないんだ」
それで納得したベル。
クラウスも頷いた。
ところが弟のナギラが別口から切って来た。
「姉さん、よく考えたら、よく歩けてるよね。
大丈夫なの。
こんなに長く歩いて」
心配してくれた。
素直に嬉しい。
「逃げて、逃げて、歩いて、歩いて頑張った。
それで、ここまで歩けるようになった」
「よく分からないけど、話し方も変わったよね」
「女の子だと馬鹿にされるから、男の子になった。
アンタ達も僕やエリカを馬鹿にしたら許さない、いいな」
目に威圧を込めて、三人を見回した。
三人が不承不承ながら頷いたので、僕は話を進めた。
「ヒトライム村の避難所には三人の物は何もない。
だから必要な物はここで買って帰る。
着る物、上着下着に靴、寝具、食器、他にも良く考えて。
あっ、お金は僕が持ってるから遠慮はするな。
ここで買い忘れたら困るのは自分だからな」
三人が驚きの目で僕を見ていた。
エリカは自慢気に僕を見ていた。
何とも僕にとっては微妙な空気。
「エリカ、三人の買い物を手伝って」
「はい、任せて」
「名前、ベル。
種別、人族。
年齢、9才。
性別、雄。
出身地、パラディン王国。
住所、なし。
職業、なし。
ランク、F。
HP、10/30。
MP、15/35。
スキル、生活魔法(火、土、風)」
「名前、クラウス。
種別、人族。
年齢、8才。
性別、雄。
出身地、パラディン王国。
住所、なし。
職業、なし。
ランク、F。
HP、10/25。
MP、15/25。
スキル、生活魔法(水、火)」




