表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
66/282

(故郷)9

 僕は片手にエリカ、片手に魔法杖、

それで傭兵団の砦に歩み寄った。

その目の前で砦の外壁が折れ曲がるように崩れて行く。

中の建物も同じように崩れて行く。

轟音と地響き、舞い上がる埃。

 微かに悲鳴が聞こえるが、同情はしない。

逆に鑑定を強め、生き残りがいないか探した。

団長の死亡確認。

副団長の死亡も確認。

他の者達も全て調べた。

一人も見逃すつもりはない。

満足した。

 エリカを見ると彼女も満足していた。

殺した連中に憐憫の情は覚えない。

連中に殺された数からすると釣り合いが取れないが、

これで良しとすべきだろう。


 僕達の背後から子供達が現れた。

川から駆け付けて来たのだろう。

誰もが息せき切っていた。

目の前の惨劇を見て足を止めた。

「ええっ」

「これは・・・」

「みんな死んだのか」

「どうすれば・・・」

 棒立ちになる者、腰を落とす者、四つん這いになる者、泣く者、

喚く者、それぞれが個性を露わにした。


 僕は弟に歩み寄った。

「ナギラ、迎えに来たよ」

 それでようやく僕に気付いた。

「姉さん・・・。

それにエリカ、一体どうしたの」

「言ったろう、迎えに来たって。

さあ、帰ろう、村に帰ろう」

 ナギラは状況が分からぬらしい。

オドオドしながら、僕とエリカを交互に見た。

「大丈夫なの・・・」

「何が」

「ここから逃げて」

 僕は砦を指し示した。

「見なよ、出て来る奴は一人もいない。

みんな死んだ。

だから村に帰ろう」

 ナギラの目が変化した。

生気を帯び、涙を零した。

「本当に・・・」

「さあ、帰るよ」


 ナギラが涙しながら砦を見た。

「分かった、村に帰る。

でも、砦のあれはどうしたんだろう」

「たぶん、天罰だな。

気にする事はないよ。

連中の心配より、自分の事を考えな」

「そうだね、そうだよね」

 他の子供達もようやく理解した。

喜びを露わにした。

「自由だ」

「村に帰れる」

「お母さん」

 

 年嵩の子供、いや、体格的には少年か。

少年二人が喜び勇んで砦の中に駆け込んで行く。

「お宝を探そうぜ」

「頂くか」

 それを聞いた子供達も後に続いた。

崩れ落ちた砦の中に入って行く。


 この場に残った子供もいた。

二人。

ナギラに駆け寄って来た。

「良かったな、姉さんが生きてて」

「うちの兄さんも生きているかな」

 嬉しそうに三人が肩を寄せ合う。

その二人に見覚えがあった。

村の子供だ。

生き残った村人達の口から二人の名前が出なかったのは、

たぶん、二人の身寄りは殺された、そう言う事なんだろう。

僕はそれを二人に教えるつもりはない。

それは生き残った大人の仕事だ。

仲良くしてる三人に尋ねた。

「他に村の子供はいないのか」

「いないよ」

「分かった。

一緒に村に帰ろう。

ところで、中に入った連中はどうする」

 するとナギラが冷たく返した。

「あの連中は嫌いだよ」

 その一言で理解した。

攫われた子供達の中で虐めがあったのだろう。

「それじゃ、ここを離れよう」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ