(故郷)9
僕は片手にエリカ、片手に魔法杖、
それで傭兵団の砦に歩み寄った。
その目の前で砦の外壁が折れ曲がるように崩れて行く。
中の建物も同じように崩れて行く。
轟音と地響き、舞い上がる埃。
微かに悲鳴が聞こえるが、同情はしない。
逆に鑑定を強め、生き残りがいないか探した。
団長の死亡確認。
副団長の死亡も確認。
他の者達も全て調べた。
一人も見逃すつもりはない。
満足した。
エリカを見ると彼女も満足していた。
殺した連中に憐憫の情は覚えない。
連中に殺された数からすると釣り合いが取れないが、
これで良しとすべきだろう。
僕達の背後から子供達が現れた。
川から駆け付けて来たのだろう。
誰もが息せき切っていた。
目の前の惨劇を見て足を止めた。
「ええっ」
「これは・・・」
「みんな死んだのか」
「どうすれば・・・」
棒立ちになる者、腰を落とす者、四つん這いになる者、泣く者、
喚く者、それぞれが個性を露わにした。
僕は弟に歩み寄った。
「ナギラ、迎えに来たよ」
それでようやく僕に気付いた。
「姉さん・・・。
それにエリカ、一体どうしたの」
「言ったろう、迎えに来たって。
さあ、帰ろう、村に帰ろう」
ナギラは状況が分からぬらしい。
オドオドしながら、僕とエリカを交互に見た。
「大丈夫なの・・・」
「何が」
「ここから逃げて」
僕は砦を指し示した。
「見なよ、出て来る奴は一人もいない。
みんな死んだ。
だから村に帰ろう」
ナギラの目が変化した。
生気を帯び、涙を零した。
「本当に・・・」
「さあ、帰るよ」
ナギラが涙しながら砦を見た。
「分かった、村に帰る。
でも、砦のあれはどうしたんだろう」
「たぶん、天罰だな。
気にする事はないよ。
連中の心配より、自分の事を考えな」
「そうだね、そうだよね」
他の子供達もようやく理解した。
喜びを露わにした。
「自由だ」
「村に帰れる」
「お母さん」
年嵩の子供、いや、体格的には少年か。
少年二人が喜び勇んで砦の中に駆け込んで行く。
「お宝を探そうぜ」
「頂くか」
それを聞いた子供達も後に続いた。
崩れ落ちた砦の中に入って行く。
この場に残った子供もいた。
二人。
ナギラに駆け寄って来た。
「良かったな、姉さんが生きてて」
「うちの兄さんも生きているかな」
嬉しそうに三人が肩を寄せ合う。
その二人に見覚えがあった。
村の子供だ。
生き残った村人達の口から二人の名前が出なかったのは、
たぶん、二人の身寄りは殺された、そう言う事なんだろう。
僕はそれを二人に教えるつもりはない。
それは生き残った大人の仕事だ。
仲良くしてる三人に尋ねた。
「他に村の子供はいないのか」
「いないよ」
「分かった。
一緒に村に帰ろう。
ところで、中に入った連中はどうする」
するとナギラが冷たく返した。
「あの連中は嫌いだよ」
その一言で理解した。
攫われた子供達の中で虐めがあったのだろう。
「それじゃ、ここを離れよう」




