(故郷)3
エロールイ市の外壁はパッと見、立派だが、ここも門番がいない。
開閉はどうしているのだろうと疑問を抱えながら、街中に入った。
出入りが自由なせいか、
行き交う者達の中に怪しげな連中も混じっていた。
これは、けっして僕の差別意識ではないと思う。
鑑定しなくても、
その手の連中の醸し出す空気は薄汚れているので、よく分かった。
エリカを庇うような恰好で表通りを進むと、
目的の建物は直ぐに見つかった。
冒険者ギルド。
まず裏の買い取り窓口に向かった。
ここまでの道中で狩った魔卵と部位を換金した。
ついでに尋ねた。
「この町の門番はどうしたの、いなかったけど」
「ああ、あれね。
領主屋敷を警備している領兵が時間になれば開閉するんだ。
変な奴が暴れれば領兵が出張って来るし、
定時の巡回もしてるから大きな問題にはなっていない。
はい、45.000ベレル」
奥のスイングドアを押して中に入った。
ここも空気が薄汚れていた。
その手の連中が出入りしていると言う事だ。
だからと言って、避けては通れない。
情報を得るには、ここが一番だからだ。
僕は掲示板を見に行った。
依頼から、ギルドからの注意、パーティ仲間募集等々。
傭兵団・ブラッシュに関して繋がる何かがないかと探した。
それらしいのはなかった。
僕はカウンターに向かった。
「依頼だけど、ここで出来るのかな」
怪訝な顔でカウンター嬢が僕を見上げた。
「はい、でもお金がかかりますよ。
内容によっては金額も変わります、支払えますか」
どこから見ても未成年の女の子なので、支払いを心配してくれた。
「支払えますから安心して下さい」
僕達二人は事務所右手の応接室に通された。
「ここで担当者をお待ちください」
担当者は直ぐに現れなかった。
スタッフの一人らしい女の子がお茶とお茶菓子を運んで来た。
「もう少しお待ち下さいね」
女の子が去るとエリカが心配した。
「私達が小さいから馬鹿にしてるのかしら」
「たぶん、担当の押し付け合いかな」
生気のない男が入って来た。
「ようこそお嬢さん方、私が担当するタルゼと申します。
さっそくですが、依頼をお聞きしましょう」
「傭兵団・ブラッシュについて調べて欲しいのです。
拠点はどこか、構成員は何人か、今はどこにいるのか」
タルゼの生気のない顔が余計に生気を無くした。
「理由をお聞きしても宜しいか」
「私の弟が彼等に拉致されたようなのです」
「それは確実なんですか」
「奴隷として売られなかったので、そう考えています」
「少年兵目的ですね」
「たぶん」
タルゼは首を傾げて少し考えた。
ややあって顔を上げた。
「もしかして村を襲われたのですか」
「はい、カリス村と申します」
またもやタルゼは考えた。
そして徐に言う。
「ありましたな、カリス村。
ヒトライム村の近くでしたな」
「はい、そうです」
「それで弟様を探して欲しいと」
「そこまでは難しいでしょう。
危ないので潜入までは頼めません」
タルゼは天井を仰ぎ見た。
思い出すように言う。
「んん、いますね、適任者が。
金銭次第で受ける奴です。
もしかすると買い取り交渉をしてくれるかも知れません」
「そんな事ができるのですか」
「まずその男と連絡がつくか、やってみましょう。
着手金は25万ベレル、これは前金です。
成功したら報酬が同じく25万ベレル。
弟様の買い取り金額は別途で頂きます。
相手次第の金額になりますが、こちらも値下げ交渉はします」
弟を金銭で買い戻せるなら安い物。
自分のお金ではない。
幾らでも支払える。
「はい、お願いします」
タルゼは承諾するとは予想していなかったのか、
ビクッと身体を震わせて僕を見た。
「今の条件で良いのですか」
「はい、買い戻せるのが一番でしょう。
駄目なら連中のアジトに忍び込み、助け出すだけです」
「忍び込まずに済むように、交渉できる奴に連絡を取ってみます。
それで支払いですが」
肩掛けバッグ経由で亜空間収納から50万ベレルを取り出し、
タルゼの目の前に差し出した。
大金貨一枚と中金貨一枚。
「確認して下さい」
すんなり支払うとも予想していなかったらしい。
呆気にとられた表情を浮かべた。
「分かりました、さっそく書類にしましょう。
拉致された状況と弟様の特徴をお尋ねします」




