(故郷)2
次の日、カリス村の共同墓地に向かった。
エリカとお婆さんも一緒だった。
「人手が足りなくて各家の墓には納められなかった」とお婆ちゃん。
あの日の襲撃で死んだ者は全て集めて焼かれ、
一つの灰にして混ぜられ、穴に埋められたそうだ。
それを後悔しているお祖母ちゃん。
僕は慰めるつもりはなかったが、言葉が口を衝いて出た。
「仲の良かった者達と一緒だから寂しくはないと思う」
お祖母ちゃんの目に涙。
「そう言ってくれると助かるよ」
僕は埋められた家族に報告した。
「おじいちゃん、おばあちゃん、おとうさん、おかあさん、
おにいちゃん、おねえちゃん、ただいま、ジュリアが戻りました。
うまく言えないけど、そんなこんなで、こうなりました。
ごめんなさい、この身体、大切にします。
・・・。
弟がいないけど、僕が必ず探し出すから、安心して下さい」
お祖母ちゃんの家族はお爺ちゃんと息子夫婦、
エリカの姉と兄が亡くなった。
僕の家は祖父と祖母、両親、兄と姉が亡くなった。
ただ、僕の弟は消息不明。
奴隷としては捕まっていなかった。
どうなったのだろう。
お祖母ちゃんが推測として話してくれた。
「奴隷で売らないとなると、後は少年兵かしらね。
盗賊や傭兵は人手が足りなくなると少年達を攫うと聞いたわ。
小さなころから人殺しに慣れさせて、兵士として育てるそうよ」
「そうだとすると、まだ生きてるな。
どうやって探そうか。
お祖母ちゃん、村を襲った連中の正体が分かるかい」
「そうねえ、あの連中の、服装は・・・、違うわね。
あっ、旗印を見たわ」
「どんな」
赤い三日月と黒い斧。
傭兵団、『ブラッシュ』の団旗と分かった。
この一帯を荒らしまわっている連中の一つなのだが、アジトは不明。
神出鬼没なことから、幾つかの拠点を持っていると思われていた。
僕は村の男から聞いた情報を元に調べる事にした。
まずは領都での聞き込みだ。
ヘルセル伯爵の足下に向かった。
何故かエリカが付いて来た。
「エリカ、お祖母ちゃんを一人にして大丈夫なのか」
「お祖母ちゃんには友達がいるから大丈夫だって。
だからアンタはジュリアの力になりなさい、そう言われたの」
ヘルセル伯爵の領都はアイリール山方向にある。
途中、盗賊は見なかったが、魔物には何度か遭遇した。
これだけ出没するって事は、
伯爵は魔物の討伐には熱心でないのだろう。
盗賊の類を野放しにしている現況から期待はしていなかったが、
本当に残念だよ、お貴族様。
怒り混じりに魔物に出会う度に瞬殺した。
それを見たエリカが呆れたように言う。
「攻撃魔法は凄いわね。
私には生活魔法しかないから、力になれない。
ごめんね、ジュリア」
悄気てるエリカを慰めようと口にした。
「生活魔法でも育てれば攻撃魔法になる。
練習してみるか」
異世界魔法理解によると、そうなっていた。
「できるの、できるのなら私やるわ。
お願い、教えて」
僕は異世界魔法理解を噛み砕き、
それを土台にしてカリキュラムを組んだ。
道々、一から教えた。
そう難しい事ではない。
まず小さな一歩からだ。
危険性のない水魔法から始めた。
水滴を少しずつ大きくして行く。
「焦らない、焦らない。
無理してMPが切れたら元も子もない。
子供を育てるように大きく育てて行くんだ」
「お姉ちゃん、私、子供を生んだことないから分かんない」
「僕もだよ。
でも育てるんだ」
「分かった」
『エロールイ市』
ヘルセル伯爵の領都。
人口五万人。
アイリール山への入り口の一つ。
山への入り口の一つ、と言うのは、どうなんだろう。
他に売り物はないのか。
現伯爵も先代も先々代も、代々に渡って何もしなかったのだろう。




