(道中)25
僕は幌馬車の女子供二十三名の【奴隷の首輪】を外し、
その場で解放した。
解放される間、女子供は周りを見回して言葉がなかったが、
説明するのも面倒臭いので、無言でちゃちゃっと首輪を外した。
死体とか、馬とか、残した物は多いが、知らんがな。
「それじゃあ、次は捕まらないようにな」
エリカを促して、そそくさとと別れた。
一人が追いかけて来た。
しっかり顔の婦人だった。
「ありがとうございます」
「分かった、気にしなくていいよ。
気をつけて村に帰りなよ」
「はい。
それで御礼は」
「いらない、先を急いでいるんだ」
「それなら幌馬車か馬を」
「皆で分けなよ。
これから先、必要になると思う。
死んでる連中の持ち物も皆に譲るよ。
特に財布かな」
婦人は深く頭を下げた。
「ありがとうございます」
それに倣ったのか、後ろの者達も一斉に頭を下げた。
途中、アイリール山の姿を見ながら枝道へ進んだ。
詳細な道路地図がないので、覚えている山の形を参考にした。
たぶん、これで間違いはない筈だ。
時折、擦れ違う行商人や冒険者に尋ねながら、方向を転換し、
村へ村へと近付いた。
一泊した次の昼、見慣れた光景が前方に広がった。
丘の先の草地に囲まれた村。
崩れ落ちた家屋が多い。
手前には川が流れ、橋が架けられていた。
『プルセヌ川』
アイリーン山から流れて来る川。
『ミナリュ橋』
木造の橋。
『カリス村』
鑑定の表示がおかしい。
人口が表示されない。
村名のみ。
これは・・・。
遠目にでも荒廃しているのが分かった。
エリカがローブの裾を離した。
「先に行くね」
返事も待たずに小走りで向かった。
彼女は居ても立っても居られないのだろう。
僕も辺りを鑑定しながら足を速めた。
魔物はいない。
人は・・・。
村の中に六人いた。
それらは村の中を動き回っていた
鑑定で村人として計上されない者達。
スキル的にも危なくない者達。
村の中でエリカが六人に囲まれていた。
エリカが僕を振り返った。
囲む者達も僕に気付いた。
僕の中のジュリアの記憶に残っている者ばかり。
全員が元村人。
エリカが僕に説明してくれた。
「生き残った人達は隣の村に移ったんだって。
そこにねえ、私のお祖母ちゃんがいるって」
嬉しいのか、嬉しくないのか、分からぬ声音。
それはそうだろう。
父母や兄弟姉妹に言及がない。
僕はこれまでの経緯を適当に端折って説明した。
エリカも分かっているので、僕に合わせてくれた。
それで元村人達は納得し、逃げて来た事を喜んでくれた。
一人が言う。
「大変だったろう。
小さな身でよく戻って来てくれた」
もう一人が言う。
「ここを片付けて、何れ村を再建するつもりだ。
二人も力を貸してくれよ」
更地になっているのは八棟か九棟。
残った家屋は三十棟ほど。
圧倒的に人手が足りない。




