(道中)23
僕達はすんなり町を出た。
阻もうとする者も、見送りもなかった。
それどころではなかったのだろう。
街道を西に荷馬車を走らせた。
しばらくは道なりだ。
二日目の町で僕とエリカは皆と別れた。
「ここで皆とはお別れだ。
僕達はこの先の山道から村に戻る」
大嘘だ。
あれだけ皆の前で攻撃魔法を披露したのだ。
安全になった今、皆の関心が僕に集まるのは仕方ないこと。
でも、それに気安く応じるつもりはない。
個人情報の秘匿は何より蟹より大事。
僕が口が固いので、皆がエリカに向かった。
ところがエリカも心得たもの。
口が固い。
調子に乗って鎌をかける者も現れた。
そうなると鬱陶しい。
僕とエリカは二人で街道をテクテク歩いた。
ここまで来れば急ぐ旅でもない。
後は村に戻るだけ。
まだ見えないけど、見えたも同然。
途中で魔物を狩り、夜営しながら村に向かった。
子供の足で三日目だ。
見覚えのある山。
『アイリール山』
パラディン王国の高山の一つ。
その山の麓に村がある。
自然、エリカの足が軽くなった。
「お姉ちゃん、アイリールだよ。
ついに帰って来たんだね」涙声。
僕はエリカの背中に手を当てた。
「まだあるから、落ち着いて歩こう」
それから三日目、遠くに町の外壁が見えて来た。
『ウルマ市』
オールマン伯爵の領都。
人口十万人。
王国の食糧庫の一つ。
縫製業と酒造業でも栄えていた。
夕方、領都に入った。
村の手前の領地だ。
真っ先に宿屋を探した。
とにかくエリカを人のいる所で休ませたかった。
口では強がるが、限界に見えた。
「この町で疲れを取ってから村に戻る。
それでいいな」
「うん、疲れたよ、お姉ちゃん」
見るからに高そうな宿屋を見つけた。
二人部屋で風呂トイレ、朝夕二食付き、大銀貨2枚。
フロントの者の顔は、子供二人に払えるのかと猜疑心あらわ。
ローブの裏のポケット経由で亜空間収納から取り出しすと、
笑顔で手のひら返し。
「お嬢様お二人、ご案内」
温かいお風呂と柔らかいベッドで疲れが取れたらしい。
エリカは元気。
「お姉ちゃん、早く村に帰ろう」
その前に冒険者ギルドに立ち寄った。
ギルドカードは世界共通だと説明を受けたが、
自分の目で確認することにした。
ギルドは直ぐ見つかった。
朝だから混雑していた。
依頼の受注ではないから、買い取り窓口に回った。
ここも裏に設けられていた。
窓口の職員が僕を二度見した。
「見かけない顔だね。
見習いの新人かい」
「ええ、登録はベランルージュ王国です。
ここまで来る途中で狩った魔物の部位を売りたいのですが、
その前にカードが使用できるどうか確認お願いします」
僕は冒険者ギルドカードを手渡した。
「普通、見習いは国から出れないんだけどね。
でも、来ちゃったわけだ。
しかたない、それじゃ調べようか」
職員は【真偽の魔水晶】を持ち出した。
ちゃちゃっと確認。
「へえ、この国の生まれなんだ。
お帰り、祖国へ」
聞いた瞬間、エリカが鼻をグスグス。
僕は訳もなく目が熱くなった。
「ただいま、帰りました」




