(道中)21
本街道が見えてきた。
蟻んこが重なるように、かなり混雑していた。
逃げる市民達にマラウス市へ向かって来た者達が入り混じり、
あちこちで歩みが遅くなっていた。
そこへ先行していた元奴隷達が乗り込んだ荷馬車の隊列が、
強引に突っ込んでゆく。
鞭と速度に物を言わせながらも、
途中で乗客を増やしながら王都方向へ、右に曲がって行く。
心からの人助けなのか、偽装の為の人助けなのか、
それは分からないけど、笑ってしまった。
僕達の荷馬車の隊列も鞭と速度、加えて攻撃魔法も織り交ぜ、
人波を割って進む。
誰かの縋る手が伸びて来れば、近い者がナイフを走らせた。
乗り込んで来ようとする者は蹴落とした。
非難する怒号や悲鳴も上がるが、誰かを助けるなんて言語道断。
パラディン王国へ左折した。
そちらへ向かう者はいない。
でも向こうから来る者はそれなりにいた。
彼等は足を止めて呆然としていた。
その中の一人がマラウス市方向を指差した。
僕も釣られて、そちらを見た。
無数の黒煙が立ち上っていた。
それほど時刻は経っていないのに、この火の広がりの早さ。
消火する人間が残っていないせいなのか。
僕達は先へ進んだ。
呼び止めようとする者達を無視して先へ先へ。
と、予想していた者達が来た。
街道を定期巡回している騎馬隊が前方に姿を現した。
十騎。
戦士系スキル持ちと魔法使いで編成されていた。
先手必勝。
僕は威力中級の破壊力特化のウィンドホールを二十発、待機。
各人の右肩と左肩をロックオン、ホーミング。
放った、Go、Go、Go。
戦士系スキル持ちでも、騎乗のままでは戦い難い。
自由に動き回れぬまま、騎乗から弾き飛ばされた。
村を過ぎ、町を過ぎ、街道の駅で夜営。
僕達以外の宿泊客はいない。
設置されている【魔物忌避】の柱のお陰で、ゆっくり休めた。
「パラディン王国には昼前にはつける。
だからって油断はするな」
僕達の最後の戦いが始まった。
主に戦うのは僕なんだけどね。
まあ、いいか。
魔法杖を手に荷馬車に乗り込んだ。
ローブの裾にはエリカの手。
「お姉ちゃん、もう直ぐなんだね」
「ああ、ベランルージュの国境の町を壊し、
パラディンの国境の町を壊せば、僕達は自由だ」
「パラディンの町も壊すの」
「そうだ。
あそこの町が不法奴隷の通過を黙認しているから、
皆がこんなに苦しむんだ。
もう壊すしかない」
国境の町へ向かう者はいない。
馬車も、荷車も、一つとして姿を見せない。
マラウス市からの避難民で街道が機能停止しているのだろう。
代わりにこちらに来る者や荷馬車は普通に擦れ違った。
向こうには状況が伝わっていないのだろう。
橋を渡り、村を過ぎた先に国境の町が見えて来た。
高い外壁。
外壁よりも高い建物二棟。
緊張感のなさそうな門衛三名。
『パゴタ町』
パラディンとの国境の町。
人口5千人。
主に国境守備隊とその家族の町。
僕は鑑定の範囲を少しずつ広げた。
町中に高位の魔法使いが滞在していた場合、それと勘づかれるからだ。
何事も慎重に、慎重に。
決める時は大胆に。
やはり国境の町だけに、それなりのスキル持ちを揃えていた。
迷惑なことに戦士系も魔法使いも中級がいた。
加えて王都警邏局の連中もいた。
こんなに長期に王都を離れて大丈夫なのか。
他人事ながら心配してしまった。




