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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
53/283

(道中)21

 本街道が見えてきた。

蟻んこが重なるように、かなり混雑していた。

逃げる市民達にマラウス市へ向かって来た者達が入り混じり、

あちこちで歩みが遅くなっていた。

 そこへ先行していた元奴隷達が乗り込んだ荷馬車の隊列が、

強引に突っ込んでゆく。

鞭と速度に物を言わせながらも、

途中で乗客を増やしながら王都方向へ、右に曲がって行く。

心からの人助けなのか、偽装の為の人助けなのか、

それは分からないけど、笑ってしまった。


 僕達の荷馬車の隊列も鞭と速度、加えて攻撃魔法も織り交ぜ、

人波を割って進む。

誰かの縋る手が伸びて来れば、近い者がナイフを走らせた。

乗り込んで来ようとする者は蹴落とした。

非難する怒号や悲鳴も上がるが、誰かを助けるなんて言語道断。


 パラディン王国へ左折した。

そちらへ向かう者はいない。

でも向こうから来る者はそれなりにいた。

彼等は足を止めて呆然としていた。

その中の一人がマラウス市方向を指差した。

僕も釣られて、そちらを見た。

 無数の黒煙が立ち上っていた。

それほど時刻は経っていないのに、この火の広がりの早さ。

消火する人間が残っていないせいなのか。


 僕達は先へ進んだ。

呼び止めようとする者達を無視して先へ先へ。

と、予想していた者達が来た。

街道を定期巡回している騎馬隊が前方に姿を現した。

十騎。

戦士系スキル持ちと魔法使いで編成されていた。

 先手必勝。

僕は威力中級の破壊力特化のウィンドホールを二十発、待機。

各人の右肩と左肩をロックオン、ホーミング。

放った、Go、Go、Go。

 戦士系スキル持ちでも、騎乗のままでは戦い難い。

自由に動き回れぬまま、騎乗から弾き飛ばされた。


 村を過ぎ、町を過ぎ、街道の駅で夜営。

僕達以外の宿泊客はいない。

設置されている【魔物忌避】の柱のお陰で、ゆっくり休めた。


「パラディン王国には昼前にはつける。

だからって油断はするな」

 僕達の最後の戦いが始まった。

主に戦うのは僕なんだけどね。

まあ、いいか。

魔法杖を手に荷馬車に乗り込んだ。

ローブの裾にはエリカの手。

「お姉ちゃん、もう直ぐなんだね」

「ああ、ベランルージュの国境の町を壊し、

パラディンの国境の町を壊せば、僕達は自由だ」

「パラディンの町も壊すの」

「そうだ。

あそこの町が不法奴隷の通過を黙認しているから、

皆がこんなに苦しむんだ。

もう壊すしかない」


 国境の町へ向かう者はいない。

馬車も、荷車も、一つとして姿を見せない。

マラウス市からの避難民で街道が機能停止しているのだろう。

代わりにこちらに来る者や荷馬車は普通に擦れ違った。

向こうには状況が伝わっていないのだろう。


 橋を渡り、村を過ぎた先に国境の町が見えて来た。

高い外壁。

外壁よりも高い建物二棟。

緊張感のなさそうな門衛三名。


『パゴタ町』

パラディンとの国境の町。

人口5千人。

主に国境守備隊とその家族の町。


 僕は鑑定の範囲を少しずつ広げた。

町中に高位の魔法使いが滞在していた場合、それと勘づかれるからだ。

何事も慎重に、慎重に。

決める時は大胆に。

 やはり国境の町だけに、それなりのスキル持ちを揃えていた。

迷惑なことに戦士系も魔法使いも中級がいた。

加えて王都警邏局の連中もいた。

こんなに長期に王都を離れて大丈夫なのか。

他人事ながら心配してしまった。

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