(道中)20
残ったのはパラディン国の三十七名。
うちの七名が魔法使い。
詠唱する間に懐に飛び込まれ、
捕らえられて【奴隷の首輪】をつけられたのだろう。
彼等に指示した。
「この先は自分の判断で魔法を使ってくれ。
国に戻る為にはそれが必要だ」
戦えない者が大半だ。
彼等は盾とナイフを持たされていた。
「けっして馬車から飛び出さない。
馬車の中で盾とナイフで自分の身を守ってくれ」
戦った経験のある者は十三名。
魔物討伐者や兵卒であった者だ。
僕とエリカを入れて三十九名。
同じパラディン国でも行き先が違う。
それぞれの方角に向けた荷馬車四輌に乗り込み、
僕の指示を待っていた。
僕とエリカは先頭の馬車に乗った。
馭者は経験者。
「よし、行こう」
走らせながら鑑定の範囲を広げた。
これだけ騒ぎになっても残っている者達も多い。
事態を甘く見ているのか、単に鈍感なのか。
これは駄目押しだな。
基点を探してみた。
街並みの向こうに大きな建物、教会。
その隣は市庁舎。
何れにも人がいた。
再びプリズントルネードの出番。
威力も前回と同じ。
教会を基点にした。
Go。
魔法杖を鑑定した。
魔力充填に異常なし。
もう一つ探してみた。
反対側に高級住宅地らしき街並みが見えた。
あそこにも残っていた。
一番高い建物を基点にした。
プリズントルネード。
Go。
突風、低重音、黒い渦巻。
100メートル規模の竜巻が二つ、街の左右に発生した。
建物の破片と共に巻き上げた。
合掌。
こうなると人も鼠も猫も、必死も必死。
あらゆる箇所から飛び出して来た。
門の方へ駆け出して行く。
逃げる人波の後を荷馬車でついて行く。
乗せて欲しいと望む者もいるが、それを馭者が鞭で追い払った。
気持ちは分かる。
奴隷として売られて来た自分達を助けてくれる市民はいなかった。
それが助けを望むとは。
後ろの荷馬車から火魔法のファイアボールが放たれた。
初級、威力はそれなり。
建物を破壊して、着火、燃え広がった。
それで味を占めたのか、道すがら左右の建物に放火して行く。
火魔法の使い手は二人いた。
残った奴も負けじと放火を真似た。
苦しそうな顔で遠くの建物に挑む。
共鳴の輪が広がった。
水魔法二人、土魔法二人、風魔法一人。
ついには彼等も攻撃魔法を放ち始めた。
競争するかのように多彩な技を繰り出した。
危ない共鳴だが、僕は止めることはしない。
これで心が癒せるなら安いものだ。
途中で子連れや病人らしい足弱を追い越した。
彼等は加害者の側、とても手を差し伸べる気にはならない。
でも・・・、いま僕はとても怒っていた。
彼等にではない。
自分にだ。
彼等は加害者側だが、同時に弱者である。
そんな彼等に手を差し伸べられない自分に怒っていた。
なんて器の小さな自分・・・。
願った、彼等に早く救助の手が差し伸べられるようにと。




