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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
52/282

(道中)20

 残ったのはパラディン国の三十七名。

うちの七名が魔法使い。

詠唱する間に懐に飛び込まれ、

捕らえられて【奴隷の首輪】をつけられたのだろう。

彼等に指示した。

「この先は自分の判断で魔法を使ってくれ。

国に戻る為にはそれが必要だ」

 戦えない者が大半だ。

彼等は盾とナイフを持たされていた。

「けっして馬車から飛び出さない。

馬車の中で盾とナイフで自分の身を守ってくれ」

 戦った経験のある者は十三名。

魔物討伐者や兵卒であった者だ。


 僕とエリカを入れて三十九名。

同じパラディン国でも行き先が違う。

それぞれの方角に向けた荷馬車四輌に乗り込み、

僕の指示を待っていた。

僕とエリカは先頭の馬車に乗った。

馭者は経験者。

「よし、行こう」


 走らせながら鑑定の範囲を広げた。

これだけ騒ぎになっても残っている者達も多い。

事態を甘く見ているのか、単に鈍感なのか。

これは駄目押しだな。

 基点を探してみた。

街並みの向こうに大きな建物、教会。

その隣は市庁舎。

何れにも人がいた。

 再びプリズントルネードの出番。

威力も前回と同じ。

教会を基点にした。

Go。


 魔法杖を鑑定した。

魔力充填に異常なし。

もう一つ探してみた。

反対側に高級住宅地らしき街並みが見えた。

あそこにも残っていた。

一番高い建物を基点にした。

プリズントルネード。

Go。


 突風、低重音、黒い渦巻。

100メートル規模の竜巻が二つ、街の左右に発生した。

建物の破片と共に巻き上げた。

合掌。


 こうなると人も鼠も猫も、必死も必死。

あらゆる箇所から飛び出して来た。

門の方へ駆け出して行く。

 逃げる人波の後を荷馬車でついて行く。

乗せて欲しいと望む者もいるが、それを馭者が鞭で追い払った。

気持ちは分かる。

奴隷として売られて来た自分達を助けてくれる市民はいなかった。

それが助けを望むとは。


 後ろの荷馬車から火魔法のファイアボールが放たれた。

初級、威力はそれなり。

建物を破壊して、着火、燃え広がった。

それで味を占めたのか、道すがら左右の建物に放火して行く。

 火魔法の使い手は二人いた。

残った奴も負けじと放火を真似た。

苦しそうな顔で遠くの建物に挑む。

 共鳴の輪が広がった。

水魔法二人、土魔法二人、風魔法一人。

ついには彼等も攻撃魔法を放ち始めた。

競争するかのように多彩な技を繰り出した。

危ない共鳴だが、僕は止めることはしない。

これで心が癒せるなら安いものだ。


 途中で子連れや病人らしい足弱を追い越した。

彼等は加害者の側、とても手を差し伸べる気にはならない。

でも・・・、いま僕はとても怒っていた。

彼等にではない。

自分にだ。

彼等は加害者側だが、同時に弱者である。

そんな彼等に手を差し伸べられない自分に怒っていた。

なんて器の小さな自分・・・。

願った、彼等に早く救助の手が差し伸べられるようにと。

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