(道中)19
僕達には微風すら来ない。
魔法使いが自分の攻撃魔法の影響を受ける事はないからだ。
でも音だけは誤魔化せない。
市街にまで届いただろう。
隠れていた元奴隷達が倉庫から飛び出して来た。
竜巻を見て言葉もない様子、それでも防衛反応が働くのか、
ジワリジワリと後退りした。
竜巻が被災地を更地に変えた。
巻き上げられた物は一切、落ちては来ない。
突然あらわれて、全てを持ち去り、スウッと音もなく消えた。
静謐が訪れた。
最初に動いたのは周辺に散開し、生き残っていた市兵達だった。
悲鳴一つでも上げるのが怖いのか、怯えながら、
ここから遠ざかろうとした。
どこを目指しているのか知らないが、
私とは正反対方向へ逃げて行く。
釣られて港で働き始めた者達も逃げて行く。
付近の町家からも逃げる者が出始めた。
さあ、仕事を始めよう。
手始めは港の出入り口の左右の灯台。
もう明るくなったから灯りは不要だろう。
威力上級の風玉・ウィンドスピア、二発、Go。
一階部分を突き壊し、倒壊させた。
入港して来る商船が姿を現した。
ちょっと遠いが、この魔法杖の仕様なら問題なし。
喫水線にウィンドスピアをGo。
狙った箇所に命中し、突き抜けた。
開いた穴から海水が浸水を始めた。
この勢いのまま停泊中の商船漁船に関わらず、全てを狙った。
勿論、喫水線だ。
これら全ての船が港内に沈没すれば、港湾は使用できなくなる。
僕はジョニーに確認した。
「荷馬車に積み忘れはないか」
「ないです」
「それじゃ、行き先別に皆を乗せろ。
乗せて待機だ。
出発は僕が指示する」
皆が僕を恐れるように動き始めた。
次は港湾内の建物。
遠慮会釈なし、ウィンドスピアで穴を開け、
解体をせざるを得ぬ状態に持って行く。
我ながら、あくどい。
港湾のお掃除は終わった。
仕上げの時間です。
街並みを見回した。
家々から人々が飛び出していた。
手に荷物を持っている者、子供を抱いている者、躓く者、泣く者、
馬車に乗り込もうとする者、様々な逃亡光景が見えた。
気の毒だとは思う。
でも奴隷に落とされるよりは良いだろう。
君達は幸運なのだ。
僕はジョニーに手を振った。
「よし、行きな。
次は借金するなよ。
もう助けられないからな」
先頭の荷馬車にジョニーがいた。
「ありがとうございます」苦笑い。
「上手く難民に紛れるんだ」
「はい、そちらもご無事で」
最後尾はマット。
初めて見せる愛想の良い顔で、僕に手を振った。
「ありがとう」
「元気でな」
他の連中も僕に手を振って逃げて行く。
あっ、先頭の荷馬車が人を轢いた。
異世界に転生するのかな。
えっ、起き上がって荷馬車に飛び乗った。




