(生贄)5
武器庫に入って扉を閉めた。
中は真っ暗。
光魔法を起動してライトを頭上に点けた。
天井まで届く棚が所せましと並んでいた。
槍の棚から、プレートアーマーの棚、盾の棚、制服の棚、長靴の棚。
様々な武具や小物が棚に保管されていた。
いちいち選んでいる暇はない。
考える前に盗もう。
亜空間収納がある、問題ないだろう。
手前から盗り込む単純作業。
武器庫を空にした。
どれだけ入るんだ、僕の亜空間収納。
確認したら容量の一割にも達していなかった。
亜空間収納は本当に優れもの。
入れた物を勝手に仕分けしてくれた。
長槍、短槍、長剣、短剣、ナイフ等々。
掘り出し物を見つけた。
衣服だ。
騎士は大人なので期待していなかったが、従士のがあった。
従士は騎士見習いなので少年か児童に限られている。
それに合わせて武具も衣服も小さい。
僕は女の子だが女物の衣服を身につけようとは思わない。
そこに少年や児童の衣服。
これこそ天の声。
着替えることにした。
今の衣服を脱ぎ棄てて裸になった。
スッポンポン。
病弱だっただけに、骨、骨。
これからは栄養をつけなきゃ。
清々しいくらいに色の選択肢がなかった。
パンツ、肌着、ズボン、シャツ、靴下、最後に靴。
地味な色合いばかり。
剣帯をして左の腰に鋼の短剣、右にナイフ三本を取り付けた。
そしてフード付きのローブを羽織った。
小柄な従士様の出来上がりだ。
大満足、大満足。
それもこれも亜空間収納のお陰。
軽い足取りで武器庫を出た。
浮かれていた。
そこに突然、声をかけられた。
「従士ではないか、そこで何してる」
油断していた。
巡回中の騎士と従士に遭遇した。
拙い、拙い。
騒がれたくない。
身体強化を継続中していた。
並行して亜空間収納も継続していた。
最初に騎士の懐に飛び込んだ。
手で触れて亜空間収納に取り込んだ。
次に従士。
これまた亜空間収納に取り込んだ。
終えてから気付いた。
生き物の収納は不可。
生きたままの保存は出来ない仕様になっていた。
生きたままの・・・。
あっ、こりゃあ、死んだな。
亜空間収納を確認した。
やはり死亡になっていた。
仕分けだけでなく解体もできる優れものの亜空間収納だが、
人間の解体は・・・、嫌だな。
武器庫に戻って二体を排出した。
収納しただけだったが結果は初めての人殺し。
それも二人。
けれど心は痛まない。
ピリともしない。
異世界文化理解の影響か、それともジュリアの記憶の影響か、
まあ、どちらでも構わない。
両方でも構わない。
僕が生きて行く為には邪魔なものは全て排除するしかない。
生贄文化がある世界なんだから、それが正解だろう。