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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
31/276

(旅立ちに向けて)10

 奴等を生真面目に相手をする気はない。

黙って次の言葉を待った。

真ん中の奴が威嚇してきた。

「マジックバッグを渡せ。

こっちに渡せば命ばかりは助けてやる」

 命ばかりは助けてやるって、信じるか、馬鹿っ。

僕はバッグ経由で亜空間収納から『魔法杖』を取り出した。

さあ、試運転だ、魔力を通して起動させた。

片手で杖をドンッと立て、三人を見回した。

 奴等の顔色が変わった。

ニタニタ、ニタニタ、今にも涎を垂らさんばかり。

既に自分達の物だと算盤を弾いているのだろう。

弾かれるとも知らないで。

一人が嬉々として号令。

「よ~し、取り押さえるぞ」

 一斉に駆けて来た。

マジックバッグと信じている物を傷つけたくなくて、

腕ずくで僕を取り押さえるつもりのようだ。

僕は魔法杖に干渉して探知に相乗りした。

鑑定よりは劣るが、ステータスくらいなら楽勝で読める。

あっ、HPは僕より高いがMPは低い。

スキルは生活魔法がチョボチョボ生えてるだけ。

ただの威勢のいい輩だった。


 魔法杖。

杖の頭部に洞があり、中には魔水晶。

上半分が隠れているので、半眼感が半端ない。

その魔水晶が赤いフラッシュを放った。

同時にバイブ。

三人が最接近したところで魔力障壁ドームが張られた。

 ドンドンドンと弾き返した。

引っ繰り返って呆然とする三人。

理由が思い付かないらしい。

それはそうだろう。

錬金魔法上級の施した術式は下の者には理解できない。

肉眼では透明の障壁は捉えられない。

それでも三人は経験が豊富らしい。

一人が真っ先に怒鳴った。

「風魔法のシールドだ、切り裂け」

 一斉に抜剣した。

大振りで見えぬ障壁に打ちかかった。

バンバンバン、音だけは威勢がいい。

僕は安心して眺めた。

自動修復機能があるからだ。

もっともそれ以前に、三人の腕では全く通じない。

罅一つ入れられない。


 と、新手が現れた。

帯剣の四人が駆け込んで来た。

これはっ。

余裕があったので警戒していなかった。

警戒心欠乏症かっ。

 再び魔法杖に干渉して探知に相乗りした。

驚いた。

都庁の警邏局の人員だ。

管轄外なのに何故。

目的は僕じゃないよね。

三人の方だよね。

何にしても巻き込まれたくない。

 四人のステータスがやばい。

ランクもHPも高い。

MPもそれなりにある。

何よりもスキル。

四人揃って戦士系中級で身体強化が生えていた。

一人は察知魔法も使えた。

 警邏局の者であれば攻撃魔法への備えもあるだろう。

さらに手練れとなれば武器に魔力を纏わせ、魔法そのものを弾く、

あるいは切り裂く、それらができる筈だ。

これは拙い、拙い。

関わりたくない。


 事前通告も一切の説明もなく、問答無用とばかりに、

四人が抜剣して斬り込んで来た。

不埒な輩は状況を理解する前に手傷を負わされ、捕縛された。

警邏局の四人にとっては数的には四対四。

その四人目が僕の方へ来た。

長剣片手に僕を睨み据えた。

獲物を見つけたハンター。

犯罪者認定されてしまった。

 僕は抵抗しない。

かと言って捕まる気もない。

逃げる。

魔力障壁ドームを解除。

代わりに身体強化し、風魔法を重ね掛け。

それでもって後方へ大きく飛び退った。

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