(生贄)2
ジュリアはパラディン王国生まれ。
長引く内乱のどさくさに、村が武装集団に襲われた。
抵抗する者は殺され、女子供は捕えられた。
ジュリアも捕えられた一人。
ジュリアは隣国・ベランルージュ王国の奴隷商、
クラーク商会に売られ、ベランルージュ王国の王都に送られた。
商品として売られる予定であったジュリアだが、
生来の病弱、一目瞭然の痩せっぽち。
治癒魔法を掛けても掛け損。
早死にすると思われて全く売れなかった。
そんなジュリアを買い上げたのが王国魔法騎士団。
買われて王都郊外の森にある魔法騎士団駐屯地に送られた。
そして野外神殿で生贄として捧げられた。
問答無用で刺殺された。
再び目を覚ました時には日が暮れようとしていた。
周りに人の気配はない。
山積みされた死体だけ。
頭の中で心地よい音が鳴った。
「ピコ~ン」
目の前に半透明化したモニター画面が現れた。
「統合されました」
ステータスが映し出された。
「名前、ジュリア。
種別、人族。
年齢、12才。
現状、病弱。
性別、雌。
出身地、パラディン王国。
住所、ベランルージュ王国、王都。
職業、まだない。
ランク、D。
HP、35/35。
MP、99/99。
スキル、剣術上級、槍術上級、体術上級、身体強化上級、
錬金魔法上級、治癒魔法上級、鑑定魔法上級、雷魔法上級、
召喚魔法上級 、時空魔法上級、火魔法上級、水魔法上級、
土魔法上級、風魔法上級、光魔法上級、闇魔法上級、
氷魔法上級。
ユニークスキル、亜空間収納魔法上級、異世界言語理解、
異世界文化理解、異世界文明理解、異世界魔法理解」
僕はジュリアの人格は引き継いでいないが、
その記憶は引き継いでいた。
郷里を襲撃され、奴隷に落とされ、生贄として刺殺された。
最低な短い人生だった。
もう一つも短い人生だった。
二十歳間近にして落雷で命を散らした。
はあ。
それにしても驚きのステータス。
スキルの数々、1+1=100そんな感じ。
上級の上には特級と超級の二つしかない。
でも、それで何をしろと。
はあ、頭痛はないけど、別の意味で痛い。
とりあえず病弱を何とかしよう。
治癒魔法上級を起動した。
すると新たな小さな魔法陣が出現した。
まあ、これは放置。
なにがあるかな、なにがあるかな・・・。
外傷にはヒール、体内異常にはキュアがあった。
病弱だからキュアだろう。
上級にエクストラキュアがある。
試してみよう。
重ね掛けで鑑定魔法上級を起動した。
別の新たな魔法陣が出現した。
まあ、これも放置。
自分を鑑定した。
3D化。
摩訶不思議な事に刺された箇所が完全に塞がっていた。
ここは異世界だから、そんな事もあるんだろう、うん。
にも拘わらず病弱、どうして。
病巣はどこに。
3D化しても医者ではないので分からない。
現状を色で表してみた。
健康な部位は緑、病状が出ている部位は赤。
予想通り、緑は少ない。
ほとんどが赤、特に内臓の辺りは真っ赤。
エクストラキュアをかけた。
魔力が治癒に変換されて全身を満たして行く。
表示から赤が消えて次第に緑に変わって行く。
完治。
治癒の魔法陣が消えた。
「レッドクリア、オールグリーン、発進準備完了」言ってみた。
エクストラキュアの効果覿面。
HPも増えた。
HP、50/50。
病弱からすると望外の喜び。
鑑定の魔法陣も消えた。
ステータスも消えた。
目に悪い。
心にも悪い、恥ずかしい。
そこで願い念じた。
無魔法陣、ついでに無詠唱。
強い強い思いを込めて、願い念じた。
頭の中で心地よい音が鳴った。
「ピコ~ン」
目の前に半透明化したモニター画面が現れた。
ステータスが映し出された。
ユニークスキルに追加されていた。
無魔法陣、無詠唱。