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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
13/276

(生贄)13

 歩いていると美味しそうな匂いが漂ってきた。

クンクン・・・。

そちらへ足を向けた。

広場に出た。

元は王宮が建てられていた場所だ。

広々していて大掛かりな泥棒市の感がした。

老若男女が行き交い、多彩な屋台に客が群がっていた。


『ドロス広場』

移転した王宮の跡地。

現在は王国最大の青空市場。


 僕は行列の長い『焼き鳥』の屋台に並んだ。

美味しい証だろう、たぶん。

僕はそこに並んだ。

待つこと十数分。

順番になった。

 異世界初めての炭火焼を見た。

鳥の部位とぶつ切りした長ネギを串刺しした物。

たっぷりのタレが炭火に垂れ落ちてジュージュー。

三本を竹の皮で包んでもらった。

お代は600ベレル。

大銅貨一枚と中銅貨一枚を支払った。


 青空市場の真ん中に巨大な噴水があり、

周りに休憩コーナーが設けられていた。

ベンチとテーブルがセットで、飲食できる様にもなっていた。

その一つに腰を下ろした。

テーブルで竹の皮を解いた。

焼き立てを一本、口に運んだ。

・・・熱い、前世と変わらぬ味、美味しい。

 異世界でも同じ人間。

違いは魔力の有無のみ。

味覚・嗅覚は同じだ。

思わず涙した。


 二本目を食べ終えたところで気付いた。

足下を黒い小さな物がチョロチョロしていた。

真っ黒な子猫だ。

警戒しながらも僕を見上げてくる。

鑑定した。


「名前、なし。

種別、猫。

年齢、1才。

現状、健康。

性別、雌。

HP、5/5。

MP、5/5。

スキル、なし」


 普通の猫だった。

微量の魔力はあるが魔卵を生じないタイプなので獣に分類される。

僕ら人間と同タイプだ。

 人間も魔力があるが魔物の様な魔卵は生じない。

ただ人間は魔力を魔法に昇華し、活用している。

その辺りが獣とはちょっと違う。


 僕は傍目を誤魔化すには無理があるが、

ローブの裏のポケット経由で、

亜空間収納から木皿二つを取り出した。

幸い、僕に目をくれる者はいない。

 一つ目の木皿に三本目の焼き鳥をバラシて入れ、足下に置いた。

すると、それに子猫が飛びついた。

よほどお腹が空いていたのだろう。

小さな口で大きな部位を噛みちぎり、一つを頬張った。

 二つ目の木皿に水魔法で魔水を入れ、

一つ目の隣に並べた。

子猫は脇目も振らず咀嚼、咀嚼。

僕は黙ってベンチから腰を上げた。


 本来であれば宿屋を探すべきだろう。

お金には困っていないから宿代無視で泊まれる。

でも、こんな子供が一人で宿泊すると色々な意味で詮索されそう。

それが煩わしい。

仕方がない。

スラムに戻ろう。


 足を引き摺りながらスラムにたどり着いた、

そこで異様な光景を目にした。

入り口のゴミ捨て場に死体が積み上げられていた。

それも四人、何れもスッポンポン。

凄惨なリンチを受けた顔なので誰なのかは分からないが、

揃って右膝から下を欠損しているので、その正体が判明した。

今朝、僕に因縁をつけてきた四人だ。

 風玉・ウィンドボールで右膝を攻撃したが、仕留めてはいない。

では誰が殺した。

誰が身ぐるみ剥がした。

誰がここに運んで捨てた。

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