表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
11/276

(生贄)11

 最初の奴が苛立った顔で僕を睨んだ。

「何とか言えや、こらっ」一歩踏み出した。

 怖い、怖い、そして面倒臭い。

風魔法初級を起動した。

貫通力特化の風玉・ウィンドボール四発、待機。

四人の右膝をロックオン、ホーミング。

 面と向かい合う人間でも躊躇いはない。

即座に放った、Go。

たちどころに上がる四人の悲鳴。

右膝が粉砕され、下腿部が千切れ飛んだ。

血を流し、泣き叫んで転がる四人。


 終えてから気付いた。

こういう場合でも治癒魔法は効果があるのだろうか。

鋭利な刃物で切断した部位は、直後であれば治癒で接着できる。

でも今回の様な場合は・・・。

粉々になった膝を再生し、下腿部を接着しなければならない。

治癒魔法の初級・中級・上級にそのような技法は存在していない。

となると超級なんだけど、僕はまだ会得していないので、

技法の有無自体すら知らない。

それ以前に超級は少ない。

レアな存在。

手近にいるとは思えない。


 僕は連中に恨みはない。

罪を憎んで人を憎まず、だよね。

仕留めない。

どうか彼等が長生きします様に。

苦しむ様を横目に、先を急いだ。


 今一番必要なのはリュックサックだ。

亜空間収納は優れた物だが、表立って人目に晒すものではない。

羨望や嫉妬の視線を向けられ、

要らぬ争いを生む火種にしかならない

それを避ける意味でリュックサックで偽装しようと思った。

 おっと、もう一つ。

自分のステータスも偽装しよう。

鑑定魔法超級持ちが相手だと看破されるが、

そんなに多くはないはず。

遭遇するとも思えない。

でも念の為・・・。


「名前、ジュリア。

種別、人族。

年齢、12才。

現状、健康。

性別、雌。

出身地、パラディン王国。

住所、ベランルージュ王国、王都。

職業、なし。

ランク、D。

HP、50/50。

MP、99/99。

スキル、身体強化、生活魔法(火、水、土、風)」


 表通りに道具屋があった。

店先に手頃なバッグが吊下げられていた。

それを見て僕は足を止めた。

店員から声がかけられた。

「いらっしゃい、従者姿のお嬢さん」

 忘れていた。

騎士団所属の従士のローブを身に着けていた。

失敗、失敗。

「これ、お兄さんのお下がりなんだよ」

「そうなんですか」

「そうだよ。

近いうちに皆で旅に出るからリュックサックが欲しいんだ。

見せてもらうよ」

「はい、それならこちらです」


 店の一角にリュックサックが並べられていた。

種類は二種類、布製品、革製品。

雨対策で革製品だろう。

何の革かは知らないが、色はカーキ色。

値札はついていない。

それを店員に見せた。

「これ幾ら」

「1万ベレルです」

 僕は相場も値切り方も知らない素人。

即了承した。

ついでに別の売り場にあったフード付きローブも三着買った。

深緑、若緑、灰緑、目立たぬ三色の革製品を選んだ。

さらには革長靴も三足、茶色に統一した。

リュックサックと合計で3万ベレル。

ローブの内側のポケット経由で、

亜空間収納から大銀貨三枚を取り出して支払った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ