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虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
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(紛争)5

 その日、冒険者パーティ『シュライダー旅団』は街に入るなり、

目立つ行動をした。

議会議員の主立った者達に面会を求めた。

双方共に貴族でもないので、前触れなしで訪れた。

求められた連中は、留守以外の者は即、面会を了承した。

どの様な話し合いが持たれたのか知らないが、面会を終えると、

応対した議員は何れもが笑顔で彼等を送り出した。

 僕としては、盗み聞き出来なかったのが心残りだ。

でも、やりきれないとか、切ないとかの心情ではない。

元々、議員達には期待していない。

味方にした覚えもない。

ただの道具。

僕と市民の間の緩衝材とか考えていない。


 『シュライダー旅団』は一泊しただけで、翌早朝、街を出て行った。

彼等は何をしに街に入ったのだろう。

それが気になる。

でも僕は一人なので、彼等の夜間行動までは把握していない。

借金奴隷にも見張らせていない。

そこまで気にかけるのは、僕の負けだと思った。

相手方が仕掛けて来た心理戦だと、そう解釈する事にした。

 僕は心を切り替えた。

所詮、僕の方の戦力は僕一人。

頼るべきも、寄るべきもない。

一人でこの難局を乗り気ってやる。


 一日置いて、議会の主立った者達が僕への面会を求めた。

断る選択肢はない。

彼等を代官所の執務室に招いた。

当然だが、議長のロバートを含む十名。

ロバートは冒険者ギルドのマスターでもある。

他は、商人ギルドのマスター、ラファーエル。

薬師ギルドのマスター、ホアン。

鍛冶師ギルドのマスター、グスクマン。

駅馬車ギルドのマスター、ミゲール。

傭兵ギルドのマスター、リンゴルメタ。

ワンダー教の教会司祭、アグスティ。

街の顔役の一人、カルメロ。

同じく街の顔役の一人、モーラル。

スラムの顔役、ダリオン。


 男ばかりで鬱陶しい。

気持ちが顔に現れたらしい。

ロバートに指摘された。

「そんな顔をしないでくれんか。

まあ、ワシ達もおっさんばかりで悪いとは思っている」

「二人か三人でも良かったんじゃないのか」

「そうもいかん。

見届け人代わりだと思ってくれ」

「分かった。

適当に腰掛けて」


 代官代理のタルゼの指示で人数分の椅子が持ち込まれた。

もっとも、先にソファーに腰を下ろした者達もいた。

ロバートにアグスティ、ダリオン。

教会司祭にスラムの顔役。

珍しい組み合わせだ。

 この鬱陶しい中、メイド達がお茶を配った。

僕としては彼等をお茶で持て成す気はないのだが、

タルゼの気張りを無下に出来ない。


 ついでなので、僕はタルゼの同席を提案した。

「後で説明するのも面倒臭いからタルゼも同席して」

 誰も異論はない。

ついでのついでに、僕からの提案をした。

「僕が自称代官でタルゼがその代官代理という事になってるけど、

そこも改めよう。

僕は市長。

タルゼは副市長」

 これに異論はなかった。

彼等には、どうでも良かったのだろう。

まずロバートが議会議長として口を開いた。

「議会で提案があった。

市民軍を創設しようというものだ」


 意表を突かれた。

市民軍ねぇ・・・。

僕は素直に疑問を口にした。

「それは誰に対するものなんだ。

もしかして、僕と共に伯爵軍と戦うのかい」

 ロバートが困った様な顔で視線をカルメロに送った。

街の顔役の一人だ。

市の大地主の一人でもある。

そのカルメロが僕に笑顔を向けた。

「伯爵軍とは戦いません。

急遽集めても練度が低いので、伯爵軍には敵いません」

「だとすると、何するの。

もしかして、大人の軍隊ゴッコ」

 カルメロは怒りは見せない。

無表情で言う。

「銃後の守りです。

伯爵軍の攻撃に合わせて蜂起する市民が出ては困るでしょう」


 面白い事を言う。

これまで伯爵に搾取されっ放しだった市民だ。

それが伯爵の為に蜂起するとか・・・、本気で思っているとしたら、大したものだ。

横暴な伯爵の政を許していた連中が僕に逆らう。

牙を抜かれた市民が・・・、有り得ない。

 僕は大人達を見回した。

各ギルドのマスター達は一様に困り顔。

それは司祭も同じ。

対して、街の顔役二人と、スラムの顔役は違う。

腹に一物ある顔。

その三人が同じ方向を向いているのかどうかは判断つきかねた。

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