(紛争)4
子供達と遊び終えたので、僕は一人で散歩に出た。
もっとも、一人のつもりなのだが、その実、そうではない。
ブラビットやタルゼの気配りで、借金奴隷が二名、
付かず離れずの距離を保ち、陰から警護していた。
何とも鬱陶しい。
僕は何時もの様に市の中心部に足を運んだ。
巨大な噴水のある広場だ。
元々はオアシスがあったところで、今も水が脈々と湧き出ている。
僕が引いた水路と合わせると、
有り余る量の水資源に恵まれた街だと言えよう。
広場には屋台村が軒を連ねていた。
食い物屋、古着屋、古道具屋、古本屋、八百屋、魚屋、肉屋等々、
何でもござれだ。
昼間から酔っぱらっている者や、言い合いしている者、
路上で倒れたまま寝ている者も散見された。
ああ、平和だ。
買った珈琲を飲みながら足を速めた。
次は門に足を向けた。
街の出入口は四つ。
東西南北。
前は二つだったのだが、僕が増やした。
ここはその一つ。
何れにも冒険者ギルドから派遣された冒険者たちが詰めていて、
日の出とともに開門し、暮れて暗くなると閉門した。
誰でも出入り出来る訳ではない。
出身地で発行されたカードか、各ギルドのカードかの、
何れかのカードを所持している者のみだ。
それでもどうしてもと言う場合は入場料を払わねばならない。
僕は門衛の詰め所から外壁の階段を上がった。
この階段を利用できるのは詰め所の冒険者か、許可を得た者のみ。
僕の場合は、実質、街の支配者なのでフリーパス。
詰め所の冒険者に見送られながら、外壁に上がり、
その通路を歩いた。
外壁の高さは5メートル。
厚さは2メートル。
外壁上の通路は1メートル。
なかなかの物だ。
我ながら通るたびに感心した。
これで平和なら土建業か、建設業で喰っていける。
外の水堀も大した物。
幅5メートル。
深さも5メートル。
近くの川から水路を引き、水を引き入れたので満杯。
溢れ出すのでないかと心配になるほど。
おまけで魚まで付いてきた。
大きな鯉から小振りな鮒、川海老。
ああ、なんてこった。
スライムまで泳いでいる。
僕は水堀に架けられた橋を見た。
これも土魔法で造った物。
かなりの重量に耐えられる様に仕上げた。
たぶん、ドラゴンには渡れないと思うのだが。
今日はここから下を通過する者達を鑑定した。
眼目は住所と職業。
前までは伯爵家に仕える者。
伯爵家軍の主力が駐屯するアムスバム市から来た者。
そんな彼等彼女等が行く先を注視した。
鑑定を広げて、この街の誰に接触するのかも。
勿論、僕一人なので、何を画策しているのかまでは調べられない。
ところが、前は結構な数が来ていたものが、
筆頭執事がアムスバム市に入るや、パッタリと途絶えた。
筆頭執事が偵察方法を変えたのだろう。
困った僕としては、手の打ちようがない。
それでも習慣として、門を巡りながら鑑定を続けた。
思いもかけぬ者達を見つけた。
冒険者パーティ『シュライダー旅団』。
リーダーの剣士兼探知魔法使い、盾士、槍士、
そして弓士兼風魔法使いの女エルフ。
生憎、テイマー兼治癒魔法使いの女はいない。
テイムしている魔物・ヘルハウンドがいるので、
悪目立ちしたくないのだろう。
僕はパーティの後を付ける事にした。
リーダーの魔波をマップに登録し、ストーカーを発動した。
これで距離を空けて尾行できる。
パーティは堂々と街に入り、冒険者ギルドに足を運んだ。
何をするのか知らないが、僕は用心して外で待つ事にした。
暫くすると、パーティが出て来た。
次に向かったのはスラム。
街自体は小さいが、それでもスラムは存在した。
差別区別の問題ではなく、単純に、
人は人の下に人を置たがるのだ。
そういう習性なのだ。
パーティが接触したのは議会に議席を持つ顔役。
スラムを代表する男だ。
ライバルが一人いたのだが、それが消えた今、
スラムを代表するのは彼一人。
何の話し合いなのか、とても気になる。
が、相手方に弓士兼風魔法使いの女エルフがいた。
慎重を期して盗み聞きは控えた。




