表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
105/284

(紛争)3

 僕はロバートとの打ち合わせを終え、

ビラビットに新たな指示を下し、執務室を後にした。

すると外に出待ちがいた。

冒険者ギルドの職員のタルゼだ。

只今はここに出向中。

僕が自称代官なので、実質的には代官代行なのだが、

他聞を憚り、調整官と呼ばれていた。

議会と僕の間にある差異を調整する・・・、らしい。

僕は尋ねた。

「どうした」

「奥の倉庫に用事があります」


 執務室の奥の部屋だ。 

鍵が掛けられた倉庫部屋だ。

代官所を支配下に置いた当日、僕は鍵を持っていなかったので、

錬金魔法で鍵自体を壊した。

すると中には代官所の生命線が収められていた。

右の棚には領地の過去書類。

左の棚には現金や貴金属類。

領地を恙なく治めるには過去書類。

非常時には現金や貴金属。

 当日、一切合切を収納したが、自称代官になったので、

過去書類は右の棚に戻した。

ただ、左の棚は空いたまま。

現金や貴金属を戻すつもりはない。

戻せば議会が好き勝手する。

或いは紛糾し、会議が踊る場と化してしまう。

だから僕が財布を握り、予算付けする事にした。


 僕はタルゼと入れ替わり、廊下に出た。

代官所の各フロアが活気に満ちていた。

各ギルドから出向して来た者達だ。

彼等彼女等がタルゼの下で市を動かしていた。

前任者が搾取者であったのに比べ、新スタッフは市民への奉仕者、

たぶん。


 代官所の敷地は広い。

無駄に広い。

奥行きがあるとも言う。

 手前に庭園があり、別館が並んでいた。

更に奥に倉庫に厩舎。

そして農地兼任の庭と馬場。


 別館には大勢が住んでいたが、今は半数近くに減っていた。

ここに救出した成人女子二十四名、女児十五名、男児九名、

計四十八名を保護していたのだが、冒険者ギルドの助けを借りて、

それぞれを生まれた村や縁戚のいる村に送り届けた。

今、ここに残っているのは代官所住み込みの奴隷だった者達。

厩務員一家五名、メイド六名、庭師一家四名、計十五名。

これに僕の連れ。

実弟一名、その仲間男児二名、獣人四名、計七名。

奴隷商から奪った借金奴隷十四名、奴隷に落した奴隷商一名、計十五名。

僕を含めると三十八名がここに寝泊りしていた。

 否、正確には三十七名だ。

奴隷商・トランドが通いだ。

市内に家を所有しているので、夕方には帰宅して家族と過ごし、

朝には出勤して来る。


 子供達の騒ぐ声が聞こえて来た。

奥の庭からだ。

そちらに足を向けた。

三十名近い子供達が庭の一角を開墾していた。

大半は近くの教会の孤児院の子供達だ。

それに、うちの子供達が混じっていた。

 ワイワイキャッキャと仲良しこよし。

年齢に差はあるが、それは関係ないらしい。

誰もが笑顔で働いていた。

「ここにキャベツなの」

「ジャガイモだろう」

「タロイモだよ」

「ジロイモ」

 まだ植えないが、子供達は予想するだけで喧々囂々。

楽しいのなら結構。

僕はエリカを探した。

 いたいた。

同年齢と思える女児と親しく会話していた。

弾んでいる様で安心した。

これを切っ掛けに僕への依存度が低下すれば、尚更に結構。


 僕に気付いたエウメルが近付いて来た。

エリカのお婆さんだ。

エウメルもエリカを心配していたらしい。

「これで良かったのよね」

「ええ、そう思います。

普通の子供に戻れたみたい、良かったですね」

 偽らざる本音だ。

ただ、心配もある。

「ところで勉強は捗っていますか」

「シスターが頑張っているんだけど、今一つね」

「エリカがですか」

「エリカもだけど、ナギラもよ。

絵ばかり描いてるから、よく怒られてるわ」


 子供達の歓声が聞こえた。

そちらに視線を転じると、子供達がイナゴの群れの様に、

こちらに飛んで来るではないか。

「ジュリアだ」

「ジュリア」

「ジュリア」

 大人達は僕の魔力を恐れながらも資金力を頼り、擦り寄って来る。

ところが子供達は純粋。

ただ単に遊ぼうと身体をぶつけて来る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ