表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虻蜂虎S'。  作者: 渡良瀬ワタル
102/284

(故郷)44

 ジャンポールは頭を切り替えた。

新都を発つ時に考えていた案を捨てて、

一から再検討する事にした。

「代官が殺された今、エロールイ市を治めているのは誰ですか。

ジュリアですか、それとも他の誰か・・・」

 騎士団長が答えた。

「村娘ジュリアの要請で冒険者ギルドが窓口になり、

各ギルドや富者、顔役に声をかけて、議会を作りました。

その議会の話し合いで街が運営しております」

 新都に送られて来た封書には記されていなかった。

つまりここ数日の事なんだろう。

しかし、議会か・・・。

遠国の噂だが、その国では貴族達が議会を催し、

意見を集約して国政に活かしているという。

それを平民が真似るとは、見過ごしに出来ない事態だ。

「揉めると多数決ですか」

「はい、拒否権も含め、遠国の貴族議会に似ています。

あちらでは国王に拒否権がある様に、

こちらではジュリアに拒否権があります」


 一つの不安が頭を擡げて来た。

ジュリアはただの村娘。

世間知らず。

一時、拉致されて国外に出たが、それは二ヶ月にも満たないはず。

それがどうして議会を知っているのか。

誰かの入れ知恵ではないのか。

ジャンポールはその疑問を口にした。

しかし、視線の先の面々は誰もその疑問に答えられない。

ジャンポールにはもう一つの不安が生じた。

「議会は伯爵軍に敵対すると思いますか」

 騎士団長が従士隊の隊長を促した。

それに応じて従士隊の隊長が答えた。

「議会は、今はジュリアに従っていますが、

伯爵軍が市を奪還したら議会を解散して伯爵家に従う、

議会の冒頭で議長がそう宣言したそうです」

「ジュリアはそれに納得しているのですか」

「ジュリアの献策だそうです」

 献策、それも誰かの入れ知恵か。

「議長は誰ですか」

「冒険者ギルドのマスター、ロバートです。

窓口になった事から、成り行きで議長に就任したみたいです」

 理由が成り行き、それは納得できる。

しかし、それがロバートでは納得できない。

一癖どころか、二癖三癖もある奴だ。

ギルドマスターに加えて、滅びたガンドルフ王国の貴族の末裔。

しかも、事あるごとに姓を名乗っている。

実に不愉快だ。

が、入れ知恵したのがロバートだとすると・・・。

「他の街や村はどうなっていますか」

「そこまでは手が回らないみたいです。

既にこちらが掌握しています」


 ジャンポールは内心では安堵したが、それを隠して尋ねた。

「ジュリアの街での評判は如何ですか」

 騎士団長は今度は領兵隊の隊長を促した。

それに隊長が応じた。

「何と申しましょうか・・・、良し、ですな」

「何が良しですか」

「まあ・・・、あれですな。

ジュリアは、拉致されていた女子供を助けると、

その者達が生まれた村が戻れるように、

冒険者ギルドに依頼したそうです。

費用は全額、ジュリアが負担しました

それを聞いた街の者達は我が事の様に喜んでいるとか、

・・・いないとか」

 聞きたくなかった。

それでも聞かずにはいられない。

「女子供は村に戻れたのですか」

「全員が生まれた村や縁戚のいる村に向かったそうです」

 安心した。

が、それも表にはしない。


「ジュリアに逆らう市民はいないのですか」

 騎士団長に促された訳ではないが、シャルルが答えた。

「代官やその配下を一人で始末したんです。

誰が逆らいますか。

加えて、水堀の一件もあります。

圧倒的な土魔法を見せつけられたんです。

普通、利口な奴は逆らいません、従う振りをします」

「もしかすると、利口でない奴がいたのですか」

 シャルルが当たった、と言いたげな顔をした。

「そうです、いたんです。

初手は街の顔役の一人でした。

代官所に住み込んでいるジュリアの外出時を狙いました。

手の者十数人を従えて、一斉に襲いました。

一斉に襲えば、魔法で対応できない、そう考えたのでしょうね。

それが間違いでした。

一瞬で全員が生き埋めにされたそうです」

「問答無用と言う訳か」

「はい、助けを求める暇を与えなかったそうです」

「それだけではないのでしょう」

「はい、これは噂です。

スラムの顔役です。

子飼いの暗殺者を連れて代官所に深夜、侵入したそうです。

・・・。

それっきりだそうです。

以後、その二人の無事な姿を見た者はいません。

おそらく生き埋めにされたのでしょう」肩を竦めて苦笑い。

「戻って来なかったのか」

「はい、その顔役のファミリーはライバルに乗っ取られました。

乗っ取った奴は今、議会の議員の一人です」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 古代ギリシャの都市国家のような独立勢力になれると面白いですね。次回を楽しみにしております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ