七話
剣を二本残したのには理由がある。金剛さえ使えばSTR値が一時上昇し、二刀流を扱えるからだ。一本でも振り慣れていないが、防御と攻撃に使えるのは便利だと思ったからだ。
ホブゴブリンソードマンとホブゴブリンガードマンの連携は実に嫌らしいものだった。攻撃を加えようとすると必ずホブゴブリンガードマンが前に出てきて後衛の支援攻撃まであるのだ。
親衛隊はあくまでも前座なのだ。回復薬の残りを考えればあまり無茶をすることも出来ないだろう。スタミナが回復するのはどうやら副次的なものらしいが、この回復薬自体が体力の前借りっぽいのだ。
だから連続使用制限もありそうだし、体に良いとは言えないだろう。素材に何を使用しているかも鑑定では現時点では見抜けないというのも不安材料だが、使わなくてはならない以上は覚悟を決めるだけだ。
「金剛」
この金剛スキルもオーラが関係しているのだと思う。目に見える程にオーラが活発化し、基礎能力が上がる。これも何かしらの諸刃の剣となるのだろう。
少なくとも筋肉痛は覚悟しなくてはならないだろう。社会人となってから運動する機会も減って体重も増えた。前職を辞めた時には一時実家に戻ったが金がなくて痩せるというよりはやつれていたのだ。
雇用保険に加入していたために何とか生活できていたが、それでも人間不信になるくらいには他人の視線が気になっていた時期があった。
良い歳をした大人がやることもなく一日中を家で過ごす。就職活動もしていたが、必ずしも自分がやりたい仕事で求人情報がある訳でもなく、経理をしてみたくとも経験の無い者を中途で雇ってくれる企業はほとんどない。
仕事を覚えても会社に居続けて戦力になってくれなければ投資をしても無駄になる。終身雇用制度が崩壊し、キャリアアップのために転職することも普通になってきた。家電会社も何時までも居続けることはできないと思いつつも生活のために辞めることが出来ず時間を浪費していただろう。
迷宮は樹に希望を与えてくれていた。惰性でコンビニで働いていたが、何かしたい自分の為に努力をしていた訳では無いのだ。生活のためにという言葉すらも自身への言い訳だったのだ。何個か資格を取ってみたが、それが即ほかの仕事に結びつく訳でもない。
やはり実務経験がないと意味がないし、仕事を続ける意思があると示すために続けているみたいなものだ。やはり短期で転職することの多い人間によほど人が足りていない状況がない限りは未経験者は歓迎されないものなのだ。
金剛の効果は身体能力強化だけではないらしい。全くの無知から技を習得するのには困難がつきまとうが、金剛は身体強化の極地の一つだ。魔力循環で一時的にしか強化できなかった部位強化も体が慣れ始めたのか魔力を留められる時間が伸びた気がする。
既に金剛を解いたが、少しずつ任意の部位に魔力を留められるようになっている。そして案内人の声がした。
《規定熟練度を超えました。スキル【魔力操作】を獲得しました》
《規定熟練度を超えました。スキル【魔闘術】を獲得しました》
魔力操作は魔力循環の上位スキルであり、魔闘術は魔力を纏って戦う強化術の一つだ。後衛である魔法師の役割は固定砲台となり、仲間と連携しながら高火力魔法を敵に打ち込むことにある。
一発逆転を狙える上に魔法適性の高い者は重宝される。物理職は探せば何処にでもいるだろうが魔法職は生まれ持った才能と努力が必要なのだ。その魔法師は物理職にもやしと呼ばれるくらいには体力がない。
基礎体力がなければ冒険者など出来ないし、魔物に遅れをとるためにこの世に既に存在しないことになるが、物理職に比べて耐久性がないのもまた事実である。
物理攻撃には物理防御するしかないのが一般的である。魔力障壁も魔法攻撃には強い耐性を示すが、物理攻撃を防ぐには両者に実力差がなくてはならず魔法師の視点で物理職に対抗するために編み出された技が魔闘術なのだ。
魔闘術の特性として自身の得意な属性を乗せることが出来るという点にある。火属性なら力を。風属性なら敏捷を。土属性なら防御を。水属性ならスタミナを強化することも出来る。
単純な威力であるのなら攻撃魔法をぶっぱなした方が威力は高いが、体内循環させるだけなら魔力の消費を抑えることができるのは魅力的である。魔力のない魔法師は案山子にしかならない。そんな魔法師でも前衛は護るために行動しなくてはならないし魔物は人種よりも身体能力が高い場合が多い。
初級冒険者が相手にするゴブリンなどは同等もしくは少し低いくらいであるがホブゴブリンでも脅威になるし、オーガなら中級冒険者でも返り討ちに遭うこともある。
後衛の魔法職に自衛手段の有無で前衛の負担は驚く程に変わるのだ。殆どの初級魔法師はないよりかはマシという程度であるが中級・上級になるにつれて魔闘術の技量も上がるために魔法職なのに近接戦闘の方が得意という変わり種すら現れる。
その場合の多くは上級派生職の【魔闘士】の職に就くことで攻撃魔法ほどの長距離攻撃は得意としないが、近接・中距離攻撃の専門家になることは出来るのだ。
魔法の才能はあったが、属性魔法の適性が高くなかった者が就くことが多いために魔法師としては落第者と見られることもあるが、冒険者として成功した者は多い。
魔力もオーラも根源は神が人種に与えた恩恵で無属性に近ければオーラと呼ばれているに過ぎない。BPを十消費した金剛だが、魔闘術の対となる【気闘術】、両者を高水準で使える者が取得できる上位スキルに分類されている。
そのため金剛を使う感覚に慣れれば気闘術も使えるようになり、魔闘術を習得したのはたまたまではない。下級スキルを習得していなかった為に消費BPも多いが消費に見合っただけの威力のある有用なスキルなのだ。
レベルを上げてスキルも鍛えるそれが生存率を高めるのだと樹は知っていた。樹はゲームでもエリクサーなどの回復アイテムはクリアしても使えないタイプだが、最初の街でひたすらレベリングを行う根気強さを持っていた。
ゴブリンを殺すのにも慣れ、ホブゴブリンも殺し尽くした。親衛隊は形勢が不利と悟ると撤退していき雑魚ゴブリン達の波状攻撃へと推移していった。魔闘術の熟練度を上げる余裕が出来るのであれば願ったりであった。
魔闘術でも魔力は消費するが、魔法を放つより効率が良かったのだ。そして、波状攻撃に耐え時計を見た時には既に二時間が経過していた。モンスターハウスも吃驚の数だった。倒した数は覚えていない。
レベルアップと特攻大の恩恵は大きくゴブリンならワンパンで倒せるようになってきた。ゴブリンアサシンにも狙われたが攻撃が来ると分かっていれば対処はしやすいくらいだ。魔法攻撃を避けるのにも慣れてきており、マジシャンよりもアーチャーの方が厄介なくらいだった。
変異ホブゴブリンも戦法を変えたのか出来る限り遠距離攻撃に徹し近付いてくる敵の数も減った突破するのは簡単だったが、ボーナスタイムを終わらせるのはもったいないと思うくらいには樹は余裕が出来ていた。魔力操作を覚えたからなのか魔石からも魔力を抜けることが判明したのだ。
自身の魔力でないために嫌悪感を覚える者もいそうだが、元々、魔力などない世界で生きてきた地球人にとっては少し体調が悪くなるくらいだった。耐性という観点からすれば非常に不味い状態なのだろうが、心霊スポットで感じる不穏な雰囲気ぐらいでしかない。
瘴気を含むらしいのだが、人に有害な魔力のことを便宜上そう呼んでいるだけで発酵と腐敗の関係に似ているなぐらいにしか思わなかった。レベルアップの万能感が蝕んでいると樹は自覚していた。
睡眠時間も少なくなっているしなにより戦闘、否、殺し合いに慣れすぎていた。実際の所は魔物が人類に対して敵対的であり、害獣を駆除するのと変わらないはずだが、本来の樹であれば精神的に参っていても不思議ではないはずなのだ。
前職を辞めて鬱気味になっていた樹は心身共に不調を感じていた。社会復帰したのは金がなければ生活できないからであり、金があったのならやはり働いてはいないだろう。
たまたま武術の心得があって初めての殺し合いで生き残った。生きようとする本能というよりは死ねなかったという感じだ。現実はクソゲーと言われるが夢も希望もなかった。
親族とは疎遠になっていないがこまめに連絡を取り合うわけでもなかった。学生時代の友人とは連絡はとっていないし同僚も仕事上の関係だけだったのだ。冒険者は樹にとって天職なのかもしれない。
社会となんかしらの関わり合いをもっていなければ樹も今以上に壊れていただろうから。ゴブリンを皆殺しにしてなお余裕があったために魔石を抜いていた。魔闘術が効率の良い戦闘方法だとしても消費はしていく。
ゴブリンの比率が増えたのはリソースが足りなくなったからだと樹は思った。便宜上【DP】と呼ぼうか。無から有を生み出す奇跡の力だとしても代償がないとは思えない。瘴気を蓄え経験を積んだゴブリンがホブゴブリンに【存在進化】するのも生物的にはありなのかと叫びたいくらいだ。
生物としての階梯を魔物が登るのに人間はそれがない。魔法やスキルがあると言うかも知れないが魔物だって魔法くらい使ってくるのだ。異世界があるかは知らんが人類は生き残ったものだと感心してしまうくらいだ
《規定経験値を超えました。レベルが十五となりました》
《特殊条件を満たしました。H級迷宮核支配奪取権ならびに一騎討ちの資格を得ました》
《規定数の中鬼族の討伐を確認しました。称号【中鬼族の大敵】を獲得しました。BP五を獲得しました》
「鑑定」
Name
田上樹
Age
二十五
Job
〈 〉
Status
HP D
MP F
STR E
VIT E
INT F
RES E
DEX F
AGI E
LUK H
BP 九
既に帰宅予定時間は過ぎていた。ここで諦めて大人しく帰るようならそもそも下層へと降りてゴブリン達と戦っていなかっただろう。
ステータスの劇的な向上は無かったが、それでも金剛を使えば何とかなると樹は思う。ステータスが低ければ上げるのは簡単だが、レベル十五では初心者を脱したかな?くらいなのが普通だと思う。
それでもステータスの恩恵は大きく、これから始まる死闘の手助けとなってくれるだろう。精鋭ホブゴブリンを殲滅することも考えたが、前に出てこないのであれば仕方ない。
それに休憩時間を多めにとってきたが、体力の限界も近いのだ。集中力が削がれホブゴブリンの攻撃を被弾する数も増えてきた。オーラなしで変異ホブゴブリンと戦うなど考えたくないし、何より賭け金は一つしかない命なのだ。
これがゲームなら試行錯誤で攻略法が見つかるまで挑戦していただろう。難易度が高すぎて死んで覚えると言われるゲームもあるくらいなのだから。
《迷宮主に一騎討ちを申込みますか? Yes or No》
《Yesが選択されました。勝敗条件は迷宮主の迷宮核の放棄もしくは挑戦者 or 迷宮主の死亡となります》
この一騎打ちは厄介そうだ。念の為に回復薬を飲んでおいたが正解だった。挑戦者にとって死か栄光かしかないのだ。
逆に迷宮主には生存できる可能性はあるが、迷宮運営はギャンブルだろう。適正レベルの冒険者が程々に宝を手に入れ魔物の手にかかって死ぬのであれば良いが危険視された時点で採算を無視して高位冒険者が送られてくる可能性があるのだ。
ここがH級迷宮だと仮定しても中級冒険者であれば踏破できる可能性が高くなるのだ。一騎討ちをするのにはリスクがあるが迷宮主は拒否できない。
迷宮の等級が昇格できないのだとすれば最悪である。殺されるために迷宮主になる者はいないだろう。迷宮という資源地を枯渇させない様に管理している可能性は高いがそれは生きているのではなく生かされているだけだ。
Aランク相当の迷宮を攻略するまでは冒険者を続けるという手段もあるが、そこまでの強者になってしまえば失踪すれば大事件となり注目を集めてしまうから悪手である。
そもそも迷宮主は迷宮から出れないという制約がある可能性も高く、その場合には成長率は著しく落ちるだろう。自身の配下を倒しても経験値が得られるとしても配下は防衛戦力なのだ。
レベリングに勤しむあまりに防衛が疎かになり死亡するのは本末転倒どころではない。それに単一種しか配下にできないとしたら最悪である。称号は誰でも条件さえ満たせば取得可能なのだ。
大敵を取得してから攻略が楽になったように冒険者に利するシステムである。この迷宮だけなのかは分からない。ただ幸運にも迷宮を手に入れた時には考えなくてはならないことだった。
そして、樹は変異ホブゴブリンと対峙する。手にした剣は長剣に分類されるだろうが、刃は潰れ鈍器でしかない。対する変異ホブゴブリンの長剣は刃は研がれ切れ味も良さそうだった。
火に対する警戒もしなくてはならず接近戦でも押し切れるとは限らない。鑑定しなくとも見えるオーラは赤く、目の前の変異ホブゴブリンは間違いなく強敵であった。目線が通れば鑑定は出来る。
ただ詳細なステータスが見れるわけではなかったので雰囲気から感じ取るしかない。ホブゴブリンマジシャンよりも濃い魔力を有していることは魔力察知のスキルを通じて痛いほど伝わってくる。
レベル差が縮まったことで瞬殺されることはないだろうが、宝箱から防具が出てこなかったことが悔やまれる。木の盾でもDEFが上がるならその分だけ安全性が上がるからだ。即死することはないと思いたいが、オーラもかなり削れてきている。
レベルアップによる即時回復という都合の良いことはなく、十分な休息をとらなくては回復しないことがこれまでの実験で判明している。もしかしたらオーラを即時回復させる魔法薬があるのかもしれないが残念ながら発見することは叶わなかったのだ。
長剣を構え変異ホブゴブリンへとすり足で距離を詰める。最初の一合が肝心で素のステータスでどこまでやり合えるのかを判断する必要があった。金剛による超短期決戦が通用するかもこの一撃にかかっていた。
そして斬り合いに負けた。力は向こうの方が上だったらしい。変異ホブゴブリンのオーラは赤く染まり金剛に似たステータスアップ系のスキルを発動しているみたいだった。斬り負けて直ぐに離れたがオーラを削られた。
怪我を負わされるほどではなかったが金剛を使ってないのに剣が折れたのは初めてだった。武器の耐久度がそれほど残っていないつもりで使っていたためにそこまでの痛手ではなかったが、それでも床に刺さっている長剣の数を思えば余裕があるとは言えない。
持ち主の命を守ったのだからそれで良しとすべきで短剣で斬り合わなくてはならないことを考えればまだ最悪ではない。手数で勝負する短剣だが、接近するだけでオーラが削られるのであれば奥の手を一つ封じられたのと同じだ。
接近しなくては勝負にならない以上は相手の意表を突くしか方法は残されていない。少し距離をとって水の魔力を練る。
熟練すれば無意識下で行えるはずだが、そこまでの技量は樹にはなかった。魔力を心臓から血流へと流しそこから変化させながら右手へと出す。水魔法に攻撃魔法が少ないのもそうだが、魔法師になったばかりの者にとって前衛に守られるのは必須であり、移動砲台として動きながら魔法を放つというのは思うより難易度は高いのだ。
しかも、鑑定眼を持たない者にとってBPの使い方は分からず、優先的に鍛えているものを自動で取得していくというもので樹も最初は取得方法が分からなかったのだ。それを強く念じるという力技で解決した。
火に対抗するならば水と安易な考えだと思ったが成功したようだ。水の魔力を纏った魔闘術で火のオーラには対抗できた。相変らず力負けするが身体強化に魔闘術を上乗せすれば一方的にやられないと分かっただけでも良かった。
無属性での魔闘術に比べて水属性の魔闘術は維持に神経を使うが、魔力的消費は少し魔力の消費が大きいかな?程度で高パフォーマンスである。武器破壊を狙って攻撃してみるも変異ホブゴブリンに対処されてしまう。
恐らくは剣術のスキル持ちなのだろう。警戒しなくてはならないのは武技だ。素手で戦う格闘術にも武技はあるが【鉄拳】は表面をオーラで包み攻撃力と防御力を一時的に拳のみであるが向上させる効果を持っていた。
素手でゴブリンを倒していた時に習得したがオーラを消費しているらしく敵の骨が砕ける感触もダイレクトに伝わる為に多用はしていない。剣術による武技は斬れ味向上効果のある【スラッシュ】だろうか。
気闘術を取得しても良かったが、オーラの消費が上がるのなら逆効果と思い踏ん切りがつかないでいるのだ。防御をオーラに頼っている以上は金剛以上に消費する可能性は避けなくてはならない。
金剛の性質上、オーラと魔力を消費しているらしく長時間使用も出来ないのだが、一対一の割合で消費しているらしく使い切れば無防備になるが逆転の必殺技としての使い道があるためにこれからも熟練度を上げていくつもりだった。
予定が狂ったとも言えるし順調であるとも言えた。オーラの性質上、HPに関係しているだろうというのは予測していた。オーラの総量が増えたのも全く無関係であるということはないだろう。
ただ、気闘術を修得するのにはまだ早いと考えていたのだ。魔力というものもよく分かっていない。迷宮の中でのみ使える力なのか検証するためには脱出しなくてはならないしオーラも同じだ。
そしてオーラを消耗しているということは直接ダメージを受ける可能性があるということなのだ。魔物と対峙できたのも安全圏にいるんだという思い込みが上手く作用していたのだ。錆びた剣で斬られれば痛いでは済まないし、ゴブリン共は不衛生だ。
感染症予防対策のために隔離されても文句は言えないだろう。未知の病原体ということは抗生剤や抗ウィルス薬がないということだ。死亡率はその病気によって異なるだろうが治療薬がないというだけで死者は桁違いになるものなのだ。
迷宮主として冒険者の命を金に替えることに慣れるかは分からないが、好んで未知の病原菌をばらまこうとは思わない。オーラを失うということは怪我をしやすくなるということであり、極力避けたいことなのだ。
押されながらも攻撃を捌いていく。耐えることは苦手でないし好機が巡ってくるまで根気よく戦うつもりだ。抜群の成績を残すことは出来ないが、コツコツやることは性格的に向いているのだ。
それにこちらのオーラが削られてはいるが、変異ホブゴブリンのオーラも削っている。禍々しい色をしているのでオーラというよりかは瘴気といったほうがあっているだろう。
《規定熟練度を超えました。スキル【瘴気耐性】を獲得しました》
手にしていた魔石は全て使い切った。途中から本能がこれ以上、魔石から魔力を抜くのは危険だと警告していたために中断していたが、目的のスキルは手に入った。オーラが瘴気によって削られるのであれば削られにくくすれば良い。
その考えのみで変異ホブゴブリンと距離を取りながら戦っていたのだから。手に握っていれば時間はかかるが魔力は抜けた。
何個か床に落として変異ホブゴブリンに喰われたが、変異ホブゴブリンも魔石から回復が出来る様だった。回復している隙がなければ樹の拙い魔法操作力では時間稼ぎすらできなかったのだろうから必要経費として割り切った。