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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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六話

 《警告。迷宮主(ダンジョンマスター)との戦闘が開始されると終了するまで部屋は隔離されます》


 脳裏に案内人(ナビゲーター)の声が響くが、ここに迷宮主がいる可能性が高くなっただけで引返す意思はなかった。これは興行であるプロ格闘技ではなく、ただの殺し合いだ。


 そして、世界が変質してしまったのであれば自分だけの領域(テリトリー)を手に入れないと生き残れないかもしれないのだ。金があっても食糧や汚染されていない水がなければ意味がない。


 報われないことも多い一次産業だが、食糧そのものに価値が生まれれば勝者となるのはそれを取り引きするビジネスマンではなく生産する農家だ。


 十一層まで来た感想だが、どれほどの拡張性があるかは不明だが、草原エリア洞窟エリアだけでも支配できればかなりの利便性がある。労働力はゴブリンがいるし侵入者の排除も任せれば良いので警備員も要らなくなる。


 日本の法律がどうなろうとそれは迷宮主を縛れるものではないだろう。確かに迷宮での行為は傷害罪や殺人罪、住居侵入罪だったり窃盗罪だったりするだろうだが、司法はどうやって迷宮主の身柄を拘束して司法で裁くつもりなのだろうかという問題だ。


 超常的なことに対して基本的には無力だと思う。民意を司法に反映させるという建前の元に行われる裁判員裁判も地方裁判所の判決が高等裁判所で覆されることも珍しいことではないのだ。検察官や裁判官は司法試験を突破するだけの能力は確かにあるのだろう。


 だが、忖度して法の下の平等に反する決定で検察官が疑惑のある国会議員を訴追しなかったり、国道を百五十Kmを超えるスピードで運転し被害者を死傷させたものに対して危険運転致死傷罪を適用しなかったりなど国民の見識とかけ離れたことばかりしていれば信用を失うことになる。


 数々の疑惑があり歴代内閣総理大臣の任期を達成した途端に病気を理由に内閣総理大臣を辞任した者までいるのだ。それなのに重責であるはずの国会議員は辞職しないのだ。


 確かに一国会議員と内閣総理大臣ではその責任は異なるだろうが、国民の代表であることには変わらない筈なのだ。それなのに中途半端に逃げて疑惑には秘書がやりましたと言わんばかりの態度である。


 あれだけ関与していれば辞任すると強気に出ていて他の疑惑では自殺者まで出ているのにも関わらずだ。少なくとも無為に命を奪うつもりはないが、樹が迷宮主になったらそんな馬鹿どもには痛い目に遭ってもらう。


 目の前の赤い肌をしたホブゴブリンは鑑定だとホブゴブリン変異種「火」らしい。耐性があるのか火魔法が使えるのかは分からないがホブゴブリン・ゴブリンの軍勢を従えている。このフィールドでは樹が不利だろう。


 相手の土俵で戦って圧倒できるほどの力はまだないからだ。ゴブリンであれば素手で倒すようにしていたが流石にここでは自重する。


 格闘術の熟練度を上げるのは武器を失った時の保険である。ホブゴブリンでも素手で殴り倒せる気もするが、オーラの損耗は抑えたい故の決断であった。ゴブリンソードマンの持っていた長剣は切れ味を失い鉄の鈍器となっている。


 首の骨を折ればゴブリンは即死するし体の制御を失うのはこれまでの戦闘で実感している。人型の魔物は人間と同様に脊椎にダメージを受ければ体が不自由になるし弱点もほぼ変わらない。


 スニーカーでも顎を捉えれば脳を揺らすこともでき後は好きな様に料理ができる。レベルも熟練度も相対的なものであり、ゴブリンを倒したら固定で経験値を得るのでなくレベル差やスキルの有無を換算して決定がされているように思えた。


 レベル五までの上がり方が早かったのはその理論が適用され十レベルになって上がるのが遅くなったのも同様の理由だろう。適正レベルであれば量を倒す必要はなく、格下狩りばかりしていても何れは成長限界がくるのだと思う。


 感じた圧力から変異ホブゴブリン以外は格下だろう。ジョブ持ちのホブゴブリンもいるだろうが全体の数からしてみれば少ない筈だ。作戦としては召喚が行われない限りは数を削るのが優先だ。


 変異ホブゴブリンが迷宮主を兼ねているのなら警戒すべきは圧倒的な物量による消耗戦だ。戦闘状態で流石に魔石を抜く余裕などないだろうし魔石を抜かなければ比較的低コストで再召喚というのも有り得ない話ではない。


 体力がついたとしても人の集中力の限界などたかが知れてるだろう。体力を温存しつつも敵の数を削るのは至難の業であった。


 敵は配下に対して配慮などないのだ。チラホラと飛んでくる矢も魔法攻撃も樹を殺れれば問題ないと言わんばかりでゴブリンを盾にして無傷な樹も非道ではあるが、生死がかかっているのだから多少は目を瞑ってほしい。


 止めを刺したうえで盾にしているので痛みは感じていない筈だ。握力の関係で何時までも持ってられないので地面に捨てながらだが二十分以上、回収が確認されていなかった筈なのに樹が盾にし始めると死体は地面に飲み込まれていった。


 今のところ補充される気配はないが油断を誘っている可能性もある。ゴブリンを一匹、殺すだけで樹は少しずつだが強化され変異ホブゴブリンは不利になっていくはずなのに何のアクションも起こさないのは不思議であった。


 そして、武器持ちのゴブリン・ホブゴブリンが心無しか増えている気がしてならない。棍棒なら大した脅威にはならないが刃物持ちが増えるのは心理的な圧迫感を感じる。長剣で攻撃をしても武器で防御するだけで中々、間合いに入ってこようとはしないのだ。


 消耗戦をしかけてくるのは樹にとっては不利なことばかりではなかった。雑魚ゴブリンを狩ること自体には旨味はないが、数を狩れるのであれば別である。


 小鬼族(ゴブリン)の大敵の上位称号を手に入れられるのであれば狩りの効率は上がるからだ。このままホブゴブリンを倒していても【中鬼族(ホブゴブリン)の敵】を取得する機会(チャンス)はあるだろう。


 特攻効果も憎悪(ヘイト)増も役に立っている。憎悪からか動きは単調となり、即死攻撃を狙ってくるために隙ができやすいのだ。ノーマルゴブリンよりもジョブ持ちゴブリンの方が理性的なのか暴走することは少ないがカモであることには違いはない。


 まだ感知が完全ではないからか足元への土魔法で妨害され認識され辛い風魔法で執拗に狙われている。


 罠らしい罠がなかったために宝箱も開けることが出来て深い外傷も負うことはなかったが、単純な落とし穴でも意識を逸らすことができれば嵌る可能性は十分にあったと思うのにだ。人型であればある程度の手先の器用さはあるだろう。


 個体差が大きいことでもあるが特性上、数が多いはずのゴブリンで一つもないのは不自然だとすら思っていた。魔法を使う知識があって毒を使うこともあるそれなのに罠だけはない。警戒を完全に解く訳にはいかなかったために労力を割いたが完全な徒労であった。


 また魔法が飛んでくる気配があったためにゴブリンの死体を盾にしたときにスキルを獲得した。


 《規定熟練度を超えました。スキル【魔力察知】を獲得しました》


 盾スキルでもなければ犯罪系のスキルでもなかった。行動によって功罪(カルマ)が増減する可能性もある。盗賊(シーフ)になること自体は犯罪ではないが、神の判定によって善悪が分かり大きな街では水晶によって判定されるということが有り得るのだ。


 こんだけゴブリンを殺していれば大量殺人鬼もびっくりのマイナスカルマである可能性もあるが人からしてみれば害獣を殺処分しただけに過ぎないので増減0もしくは被害を減らすことができた為にプラスカルマになることも考えられるので立場によって行動もとらえられかたが異なるということだろう。


 魔力察知は外部の魔力に対して敏感になるスキルらしかった。自身にも効果はあるみたいだが、ある程度は自分の魔力は知覚できるために攻撃魔法を受ける回数みたいのが条件の一つになっているのかもしれない。


 対になるのは【気配察知】だろうが、獣であれば気配を消すのは得意でも魔力は多少漏れ、逆に人型は魔力を消すのは得意でも気配を消すのは苦手としているのだろう。両方に長けた魔物もいるだろうが隠蔽系スキルと察知系スキルの熟練度によって看破されたり隠蔽できたりするのだろう。


 何れは獲得しなくてはならないと思っていたスキルなので有難い。風魔法は速度に特化しており視認できない刃となって敵を襲うことも可能らしい。今はかまいたちによってオーラを削られる程度だがそれは熟練度によって左右される魔法全般に言えることだ。


 同じ魔法でも威力を強くしたり、消費魔力が少なくなるのが熟練度の差となって現れる。魔力の変換率の差が魔法師の実力の差らしい。大量に魔力を込めてもロスが大きくては意味がなく、効率化されていれば最小限の魔力で高威力となる。


 こういった知識は案内人(ナビゲーター)によって得た。初代討伐者となったことで目をつけられたのかステータスカードを得たら全員が得られる知識なのかは不明だが、寝ている際に説明され記憶に留めるのもチュートリアルの一環らしいのだ。


 どこでも良いという訳でなく一定の魔素がある場所でないと干渉できないらしく迷宮はうってつけの場所になるらしい。らしいと言うのは何処までの信憑性があるか謎だからだ。


 受け取り方によって解釈の差はあっても嘘はついていないように思える。人類の味方なのかと言われればそこは否定も肯定もできないが。ジョブ持ちゴブリンと戦ってきた樹だったが苦戦したのはアサシンだった。


 出会うゴブリン達は殲滅してきたのだから後方の注意が浅くなっていた所を狙われた。しかもスキルの恩恵なのか完全ではないがオーラを貫通する攻撃をゴブリンがしてくるのだ。


【防御無視】や【防御貫通】スキルがあるのかもしれないが、その時には既に肉体強度は樹の方が高かったはずなのにだ。毒を受ける訳にもいかないし、奴らはアーチャーばりに矢で攻撃する個体がいるなど他のジョブ持ちよりも殺意が高かった。


 不意打ちさえ凌げれば他のゴブリンと大差はないのだが、意識の隙を突いてくるのが上手いのだ。現に頭上を動き回るゴブリンの存在を感知しているが、距離がある為に排除できていないのだ。


 棍棒や錆びた剣を装備していたゴブリンから追い剥ぎをして投げてはいるが頭上の敵よりも地上の敵を優先的に排除しなければならないために後回しになっている。


 BPを消費して投擲を取得するか迷うところである。刃物というよりは鈍器が多く、止めを刺さなくては後方へと回収され手当を受けているようなのだ。四肢の欠損を修復するだけの能力がないだけまだ何とかなっているが、ジリ貧となるのには変わりはなかった。


 そして、ホブゴブリン督戦隊によってタックルを仕掛けてくるゴブリンなどの対処に手を取られている。督戦隊は後方から容赦なく攻撃している。ゴブリンも死にたくないだろうから歩を緩めることはできず絶えず樹はゴブリンの相手をしなくてはならない。


 《規定経験値を超えました。レベルが十二となりました》


 《規定数の小鬼族(ゴブリン)の討伐を確認しました。称号【小鬼族の天敵】を獲得しました。BP五を獲得しました》


 《規定数の中鬼族(ホブゴブリン)の討伐を確認しました。称号【中鬼族の敵】を獲得しました。BP三を獲得しました》


 悩んでいる内に称号が手に入りBPを十消費して【金剛】を取得した。金剛はステータスアップ系の強化スキルで身体強化の上位スキルだ。スタミナを消費して攻撃力・防御力を上げる効果があり、持続時間はスタミナが切れるまでだ。


 そして、強化率もスタミナ消費も熟練度が上がる度に省エネ化するのだ。変異ホブゴブリンと戦うのに必要だと思い切って取得した。既に体力を奪われ始めているために最大効果ではないだろうが、回復薬を飲んでドーピングすれば良いのだ。


 ATKとSTRの違いはステータスアップ系のスキルや魔法に左右されるかどうかにある。ATKは武器につくことが多く、攻撃力は上がるがステータスアップ系の恩恵を受けられない。逆にステータスを下げるデバフの影響を受けないということでもある。


 定番のステータスアップ系の装備はまだ樹は発見することが出来ていないが一つステータス値が違うことで生死を分けることもあると思うのでBPを大量に消費してでも獲得すべきだと判断したのだ。


 あるかも分からないが相手のスタミナを奪う魔剣があれば相性は良いだろう。金剛は騎士や聖騎士とった上位職が身につけているスキルで消費に見合った恩恵を期待している。


 樹が取得している身体強化はパッシブスキルでSTRとVITに加算がある。体を動かすことによって強化値も上がり恐らくだが遅筋と速筋をつけるトレーニングによっても強化値が変化するタイプである。


 比較対象がいないために何とも言えないが男女での性差もあるタイプのスキルだと思う。だが、これから魔物と対峙していくなかで有用なスキルだということには変わりはない。


 そして身体強化と対になるスキル【魔力強化】を三Pで取得した。最初の消費ポイントは五だった為に少しは魔法の扱いに慣れていたということだろう。


 属性の相関図的に水は火よりも強いだろうという打算もあるし、ウォーターボール以上の魔法を使ってみたいという欲求が何より強いのだ。回復魔法も定番は水と聖属性であるためにとにかく継戦能力を高めることにBPを投資することにしたのだ。


 ジョブスキルは確かに魅力的であった。調合一つとっても道具もなければ素材もない状態でスキルを自習取得できるほど熟練度を高めるのは困難な筈だ。称号を手に入れるにも最低限の戦闘能力が求められ、採算を度外視できる資金力があればまた別だろうが素材の入手を冒険者に依存することは悪手である。


 公定価格が決められるくらいに供給があれば良いが冒険者も素材を安く手放すことはしないだろう。それならば仲間内で消費するだろうし戦闘だけが全てではないためにパーティでは難しくともクランほどの大きさになれば専属の鍛冶師や調合師などを用意したほうが安価に安定供給できるようになるからだ。


 寡占もしくは独占を狙って国が迷宮で入手した物の所有権を国もしくは国家機関にあるとしても反発を招くだけに終わりそうだ。レベル五ぐらいでも体格が良いだけの者なら簡単に畳めそうな力を得ていたのだ。


 それが十・二十とレベルが上がった時には一般人と冒険者の間には隔絶した力の差ができているだろう。抑止力となる警察や自衛隊が常に上回っていれば良いが時に異端児というものは生まれてしまうもので良心だけが砦というのは心許ないものなのだ。


 樹は金剛スキルに慣れるために数秒だけ発動しては敵を薙ぎ払っていた。勢い余ってゴブリンの長剣を折ってしまったのはご愛嬌だ。元々、使い捨てにするために持ち歩いていたし、地面に落ちなければ武器が回収されることもない。


 敵から奪える程に数はあるために短剣を抜くつもりはまだないのだ。魔法使いの数も減っているはずだが、やはり火魔法が数多く飛んでくる。


 迷宮主と思える変異ホブゴブリンは相変わらず督戦隊の後ろに控えているし、面白いのは樹に敵わないと思った雑兵ゴブリン達が督戦隊に攻撃する場面もあったことだろう。


 迷宮内部を管理するために迷宮核が必ずしも必要というわけではないだろうが、支配下にあるはずの配下同士での同士討ちがあるのは督戦隊なんてものを用意するからだろう。


 敵に殺されるならまだしも仲間に殺されて納得できるだろうか。督戦隊が必要ということは迷宮の支配力はそれほどでもないということなのだろうか。忠誠心みたいなパラメータがあって低いと裏切ることもあるのだろうか。


 イメージでしかないが迷宮主の命令に対して配下の魔物は絶対遵守だというイメージがあるために何となく腑に落ちない。迷宮主になっても配下から叛乱されるのであれば迷宮主は中間管理職でしかないのだろうか。


 変異ホブゴブリン親衛隊とも言える精鋭ホブゴブリンに動きはない。盾持ちはホブゴブリンガードマンだろうか。金属製の盾を手にしているが、片手に持っているのは長剣だ。


 守勢に回られれば面倒な敵となるだろう。樹の本音では床に死体があった方が動きにくいがせっかく倒したゴブリン達から魔石を抜けないのは損失だった。大した金額にはならないだろうがそれでも塵も積もれば山となる。


 鞄もそこまで大きい物では無いから結局の所は全てを回収するのは難しくともただ働きをさせられている様で不快なのだ。


 ホブゴブリンから奪った長剣を振り下ろす。盾になるようにゴブリンが割り込んできたが鈍い音と共に吹き飛んだ。確実に骨を折った感触がして最初は不快だったが、それも今では慣れた。


 躊躇う方が危険なのだ。安全マージンを取れていないためにこの戦闘では消費がいつもより早い気がする。それでなくとも既に三十分以上は戦っているはずであり、終わりの見えない戦いは疲労を加速させた。


 捌き切れずに攻撃を受けたがその瞬間だけ金剛を発動したからかオーラが抜かれることは無かった。真新しい武器を手にしたホブゴブリンがこちらに向かって来たことで敵も焦っているのだと知る。


 それは窮地(ピンチ)であり、機会(チャンス)であった。変異ホブゴブリンを殺すには親衛隊が邪魔なのだ。練度が高いからこその親衛隊であり、脅威ではあるが、排除できれば変異ホブゴブリンに手が届く。


 尚且つ斬れ味の良い武器が手に入るかもしれないのだから分水嶺だ。魔力強化によって量・質ともに向上していることは理解できた。属性を変えていない純魔力は無属性というべきか身体強化に使いやすい性質を持っているのだ。相乗効果によって少なくとも二・三匹であれば殺せるというのが樹の感想だ。


 先ずは厄介なホブゴブリンマジシャンから殺ることにする。前衛はホブゴブリンガードマンを先頭にホブゴブリンソードマンが続く、その後ろにはボブゴブリンシーフ、ホブゴブリンアーチャー、ホブゴブリンマジシャンが続いている。


 全員を鑑定する余裕がなかったためにあくまでも仮定であるが間違ってはいないと思う。金剛を発動し、ホブゴブリンマジシャンに向かって全力で長剣を投げた。


 距離があるためにホブゴブリンガードマンは庇うことが出来ないだろうという位置取りをするのには苦労した。後衛を抜かれるのは前衛の恥だ。ホブゴブリンマジシャンはこの迷宮で見かけたゴブリンマジシャンのどの個体も持っていなかった杖を持っていたのだ。


 魔法を補助するための杖であり、棒術に近い扱いをする武術は身につけていないだろう。杖の先端に嵌められている石はルビーだろうか?ゲーム知識になるが火魔法の威力を増幅する装置と考えるのが妥当だった。


 どのくらいの威力があるのかは知らないがホブゴブリンマジシャンの持つ魔力はゴブリンマジシャンのものより多く遠距離攻撃をされる中で前衛と戦いたくなかった為に攻撃した。


 胸から逸れて肩に当たったようだが剣先は肉を貫いているし魔法を発動させることは出来ないために半無力化に成功した。所有権という概念があるのかは不明だが、樹の足元にはまだ長剣が転がっている。


 足元に折れた長剣を放置しても中々、迷宮に取り込まれなかったことで疑問が生じたのだ。武器を奪っても地面に落ちれば迷宮に回収されてしまう。折れた長剣が回収されなかったのは奪った上で武器として使用して敵を殺したからだと思う。


 武器を奪っただけでは所有者として認定されず、装備して使う必要があると考えた訳だ。


 魔物が持っている武器は冒険者から奪ったものなのか迷宮主が与えたものなのかは不明だが、所有権があるものも問答無用で吸収できるとしたらチート所ではない騒ぎになり迷宮に冒険者が訪れることはなくなるだろう。


 吸収されないと分かれば敵から奪った長剣で新たに現れた敵を斬る。一匹でも殺せば確実に自身に所有権が移ると確信してからはそれを繰り返したのだ。長剣なので短剣ほど投げやすいものではないが重さが威力になって当たれば深い手傷を負わすことができるのだ。


 手元に残すように二本だけ残して金剛の効果が残っているうちに樹は敵から奪った武器を投げ尽くしたのであった。

これからは一週間おきの投稿となると思います。よろしければ下記の小説も応援をお願いします。┏○ペコッ

https://ncode.syosetu.com/n3101gl/

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