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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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三十二話

(まもる)の手元には白井からあがってきた報告書が握られていた。息子の樹が部隊に帯同し恣意的な意見を含むものであっても迷宮帰還者の言葉は無視されるべきではない。


装備の整った状態でも精神状態が平時のものでもなく、何の覚悟もなく迷宮災害に巻き込まれ命懸けで帰還をしたのは無茶をするなとは思ったが、それでも価値があることだった。


多くの帰還者は命は助かっても迷宮に四肢を心を置いてきてしまった人もいる。深刻なPTSDを患い今も苦しい思いをしている人がいる一方で怪我らしい怪我をしておらず目覚めた時に平常心で振舞った息子を誇らしく思ったのだ。


入院は政府負担で心身の異常がないかの検査が徹底的に行われた。自衛隊病院に優先して転院することも可能だった。政府が情報を知りたがっており、世界初の迷宮攻略が行われた時を同じくして救出された樹と春菜に公安が張り付くのも仕方がないことだ。


監視も行動確認くらいはされていたがそれよりも他国の関係者から身を守るために行われた。生存者は二名、死者は数人だったが、データを確認すれば樹と春菜のどちらかが迷宮を攻略したと考えるのが自然であり、樹は第三者の存在を示唆していたが、警察官の勘を逃れ嘘をつき続けるのは大抵のことではないと思う。


覚醒しレベルが上がったことを隠してはいなかったが、親でなくとも樹のことを不自然だと思った。(つむぐ)が誤魔化してくれなかったら重要参考人として身柄を拘束されることも有り得た。


未知のウイルスを所持している可能性も零ではないし、それを口実に隔離することも可能だったのだ。一佐という階級と犯罪者を多く見てきた紬が犯罪行為は無かったと証言することによって退院することができたのだ。


実は樹の借りているアパートには公安関係者と自衛官がダミーの身分でもって新たな住民として暮らしている。樹は夜勤をしていたために隣人とすらすれ違いの生活をしていると考えており、気にもしてなかったみたいだが、行動観察は確実にされていた。


気付かれても問題ないと思っていただろうし敵対する意思がないのだから護衛としての戦力も最低限のものである。紬が樹を連れ出していたのも警察官という立場から公の機関に対して要請がしやすく、他の帰還者もそうだが、裏取りが終わるまでは解放されることはないのだ。


通院している医師には守秘義務があるが犯罪行為に関しては警察に申告する義務がある。それを悪用とまではいかないが医師達は本当に帰還者たちのことを心配していたし警察が帰還者コミュニティの仲介をしていたのも情報収集をしていたということを排除できるものではないのだ。


昔から定期的に部下を呼んで自宅で食事会をしていたし藤堂以外の佐官クラスと樹は顔見知りだ。尉官クラスでさえ比較的、歳の近い存在として可愛がってもらっていたし、紬も多くの警察官と樹を交流させていた。


数世代も住めば知り合いばかりだし、衛も子供の時には自衛官の叔父に話をよく聞いていた。一般家庭よりも自衛官が多かったというだけで代々、軍人からの自衛官と言う家系ではなかったが、それなりに充実した子供時代を過ごしていた。


目的があって実力を隠すことを止めた樹は厄介な存在だ。政府に全ての情報を提供はしないだろうが、初代の迷宮踏破者だけが知ることのできる情報というのは馬鹿にはできない。情報を疎かにすれば手痛い損害を受けるのが相場で何より政府が知りたがっている情報なのだ。


ただ情報は劣化する。新しい常識が根付くには時間がかかるが、それでも昔の常識が今の常識であり続けることは難しい。


衛が学生の頃は部活動の途中で水分補給をする概念などなかった。顔を洗っている振りをして顧問にバレないように水分補給をしていた時代があった。それに悪さをしたときに顔見知りでなくとも殴ることもあった。


昔は本気で殴って怪我を負わせても不問にされることもあるが今は教師が手を出すなど考えられない。また、家庭で教育すべきことまで教師に任せようとする保護者が増えたようにも思える。


時代の変化と言ってしまえばそれまでだが、昔よりも人の繋がりは弱くなった気がする。迷子になった子を保護しようとしてもそれが男児であれば問題は少ないが女児であれば無視をする成人男性は増えたのではないだろうか。


善意でした行為を曲解されて面倒事に巻き込まれるのであれば関わらないことが最大の自衛となる。だが、助けを求める人を見捨てるという行為には変わりはなく、どうしようもないが人としてはどうなのかと思うこともある。


もし私人としても助けを求める人がいれば全力を尽くすだろう。災害現場では年齢も性別も国籍も関係なく平等に災いが降り注ぐ。助けられない命を後悔するのであっても行動しないで後悔するのではなく行動してから後悔したいと思うのだ。


責任を取りたくない前例主義は特別公務員である自衛官をも蝕んでいる。官舎へと魔物が侵入した際にはその場に居た自衛官が対処した。それは罰則を受けることを承知しての行動だ。


公共機関であったとしても職務以外での銃の携帯は認められていないし、発砲も慎重であるべきだ。だが、事態は何時も待ってくれるとは限らない。官舎と言っても土地が公的な所有物というだけで街中にあることには変わりはない。


そして、近隣住民を受け入れて籠城するのには適さないのも同じだった。部隊を動かす佐官や尉官たちも人間であり、仲間の家族を放っておくことはできなかった。駐屯地司令・基地司令が軍事施設に民間人を入れることのリスクを想定しない訳がなかった。


護衛という名目で民間人が収容されている官舎へは小銃を持った自衛官が派遣されたのは後回しになった。その間に災害派遣待機命令が出て出勤しなくてはならなくなった自衛官は家族を置いて行かざるおえなかったのだ。


そして、非番隊員にも同様の命令が下り家族は送り出したのだ。OB・OGが駆けつけていなければもっと被害が出た可能性は高い。避難しやすいように下層へと集まり必要物資を準備して逃げるのは元自衛官たちの指示だった。


人数確認を行い逃げ遅れがいないように確認もした。横の繋がりが強いとはいえ配偶者の階級によって軋轢もある。その中で最善を尽くしたからこそ被害を最小限に抑えることができたのだ。


それでも批判はあった。法律が自衛隊の行動を制限するのはいつもの事であり、危機管理室で決定がされるまでにも被害は出続ける。政府が決断し、人的被害を抑えるためにある程度の物的被害を許容しようと発砲を許可したのに建物に被害が多く出たと批難された。


物なら時間はかかっても直すことはできる。だが、人命はどうだろうか。ゲームみたいにリセットして終わりとはならないのだ。障害に悩む者もいるかもしれない。だが、それも生きているからこそ悩めるのだ。


報告を受けて粘り強く進言していくしかないと覚悟をする。大暴走(スタンピード)を起こさせる訳にはいかないし、起きてしまえば日本の安全神話は崩れさる。人が住める地域が狭まり土地の価格高騰や食糧問題も起こるだろう。


地対地弾で攻撃しても迷宮や中にいる魔物にダメージを与えることはできなかったからこそ迷宮を封鎖し現状維持しているのだ。全ての迷宮に自衛官や警察官を派遣できないが、それでも低等級であれば冒険者が魔物を狩ることで予防措置はできる。


難易度の高い迷宮には特警隊の隊員が投入されており、動員には費用がかかる。何より隊員を殉職させないのは倫理観だけでなく、実務においても費用が嵩むからというのが現実だ。


言い方は悪いが大怪我をして四肢を失うのと死亡するのであれば一時金の支払いで済むこともある死亡の方が財政には優しい。寡婦年金は配偶者が死亡して支払われるものだが、結婚していなければ死亡一時金で済む。


大怪我をすれば等級にあった障害者年金から見舞金・治療にかかる費用など国費負担となるからだ。冒険者に特例を適応したのも財政のために若者を迷宮に送り込んで財政的に困窮したら意味はないのだ。


責任を取りたくないが故の前例踏襲は醜い。責任を取りたくないのであれば責任のある立場になり、高給取りにならなければ良いのだ。一佐という階級には重い責任がある。命令によって時には部下を仲間を死地に送り込まなくてはならない。


だから後輩にあたる藤堂にも口を酸っぱくして伝えてきた。補給に関しては陸幕には文句は言わせない。何がなんでも物資を用意してみせると。流石に高価な兵器を導入させる権限は持ち合わせていないが、それでも陸自内の物資を分捕るだけのコネと貸しがある。


弾薬を実戦部隊に送るのは当たり前のことであり、訓練に使う分も確かに重要だが、その弾薬がなかったことで隊員たちが死傷するなど許せることではない。


自衛隊内で陸自の発言力が増すことを危惧する意見があるのは承知している。領空侵犯に対応することも領海侵犯に対応することも等しく重要なことなのだ。


空自パイロット達は通常の任務に就いている。飛行型の魔物もいるが自衛隊機を出すほどではない。地対空誘導弾では威力が高過ぎるのと同じで空対空ミサイルも費用対効果で考えれば無駄が多すぎるのだ。


護衛艦や巡視船はもっと厄介だ。空でもそうだが攻撃に対する脆弱性は対策がしにくいのだ。海中からの攻撃には対潜戦闘を行うしかないが、攻撃は当てにくく避け辛い。


迷宮外に水棲型の魔物は確認されていないがいないと考える方が難しい。海中に迷宮が出現しないとも限らないし攻略されない迷宮は大暴走(スタンピード)の危険性を孕むことになる。


三幕で情報共有がされているとはいえ機密を含むものも多く一佐の権限でも閲覧できないものはある。それは防諜に気を使うようになったからでもある。


対スパイに対しては日本は後進国だと言わざるおえない。生活に困窮した自衛官が機密を外国に売る事件も残念ながら起こってしまっている。


人の欲は際限なくまた業が深い。迷宮は危険な場所であると同時に人の欲を刺激するにはうってつけの場所になりつつある。


誰だって他人よりも良い生活がしたいという欲求はあるだろう。それが他者の不幸の上に成り立っているものだったとしても気にしない者もいる。


自衛官のミスは人の命に直結することが多く、また批判の的にされやすい。部品の落下一つでも数々の不幸が重なり起こってしまうこともある。


人がすることなどで百%にすることは難しい。だが、限りなく近付けることは可能であり、その為の努力をしていても事故は起きてしまう。


未然に防ぐ手があるのであれば最善を尽くさない理由はない。地震が多発する地域の日本は耐震技術に優れており、その技術が発展途上国へと指南されることもある。


迷宮や魔物は人類に対する試練なのではないかと思うことがある。地球にとっての一番の害悪は人類だろう。利便性と引替えに環境破壊をし続け、元の生活に戻れなくなった人類は今の生活を捨てることはできないのだ。


冒険者となった樹に日本のために犠牲になってくれとは言えない。力がある者の義務と言う考えがあるのも理解しいる。


だが、あくまでも警察官や自衛官といった者たちが負うべき義務であって民間人である樹には無理を言うことはできないのだ。


本音で言えば冒険者になることすら止めて欲しかった。だが、成人した一人の個人としてみた場合それが例え親だったとしても権利を頭ごなしに否定することはできないのだ。


それに期間限定であるとはいえ譲歩してくれたことに感謝するべきであって批判するというのも違うだろう。


ただ親として安全なところで働いて欲しいという気持ちはあるために複雑なのだ。楓ちゃんの事件をまだ引きずっているのかとも思う。


犯人が捕まりストーカー規制法で接近禁止命令が出ているとはいえ日本は人権侵害だと言って性犯罪者に対してGPSを付けることを義務化していない。


犯人は既に釈放されており、その時期は樹だけでなく、(つむぐ)もピリピリしていた。もし犯罪者が覚醒者となって非覚醒者を襲う事件が起こらないとは限らないのだ。


実際にアメリカでは覚醒者の犯罪者を逮捕するために警察官に被害が出ており、多くの場合は犯人の射殺という形で事件は終息している。


刑務官も形だけの覚醒をするように法務省より依頼があり、自衛隊も協力したが、日本でもまだ覚醒者による凶悪事件が起きていないだけで安全神話は既に崩れ去っているのだ。


子供や女性を守るのは難しくなっていると紬はぼやいてた。覚醒者の全てが善ではないし悪でもない。人の内面に善悪は混じり合い、ただそれが理性によって表面化しにくいと言うだけだ。


警察庁も銃の適正利用に関する規則を変更したいが、人権派によって阻止されているのだ。どうも人権派には警察官や自衛官の人権はどうでも良いらしい。


入国管理局による不正入国者に対する虐待容疑など問題は多い。医療従事者も一年以上に渡るコロナとの戦いで疲弊しており、国民も心にゆとりを持つことができないでいる。


休憩時間が終わって衛は会議へと戻った。



----


「警視庁より入電。都内パチンコ店で客が暴れていると通報。現場に急行せよ」


巡査はまたかと思いつつ、サイレンを鳴らす。ハンマーおじさんや城門突破おじさんなど言い方は悪いがパチンカスにはモラルを求めるだけ無駄なのだろう。


負けた腹いせに便座にトイレットペーパーを詰めて帰る客や壁にウ〇コを擦りつけて帰る客などモラルを求めること自体が間違っているのかもしれない。


パチンコ業界は警察の天下り先の一つでIR法案が可決されてからは規制に次ぐ規制で青色吐息らしい。コロナ禍で槍玉にあげられたのもパチンコ屋であり、その当時も今もコロナクラスターが出たとは聞いていないのにも関わらずだ。


六号機になってからスロットを止めたという人は多く、スロットの規制があればパチンコが規制緩和され設定付になったり遊タイムなどで客足を戻そうと躍起になっているが元が糞であればギャンブル依存症患者くらいしか打とうとはしないだろう。


三店方式自体が既にグレーゾーンなのだ。あくまでもパチンコ店は景品を出しているだけで()()近くに古物商があるだけなのだ。


パチンコ屋と古物商は別の会社が運営することで摘発を逃れている。下っ端には恩恵を与ることはできずに新台や台移動の際には台を検定しなくてはならず手間ばかりかかる。


それに釘を弄ること自体が違法だが、それも公然の秘密として行われている。その対策が設定付台なのだが、完全封入台に取り替えるためにも莫大な費用がかかり、コロナ禍で誰が触ったかも分からない玉を触らなくて済むという利点はあるが資金面で導入は難しくなっている。


パチンコ屋が緊急事態宣言やまん延防止措置などで閉店しなくなったのはそもそも人の流動を止めるために二十時までの開店にしていても空いている店があればそこに人が集まり密になるために意味がないからでもある。


大企業ほど飲食店では固定費が大きいために赤字が大きくなり、個人商店ほど補償金によるコロナバブルが起きやすくなっている。


また、補償金も倒産してしまえば支払われず身内が事業継承しても申請者が亡くなっているので不支給が決定されるなどの問題が多く、複雑な制度から支給決定までに時間がかかる。


業を煮やした店主達が罰金を払ってでも店を開くのには仕方がない事情もあるのだ。それに飲食店は元々、参入の敷居が低い分だけ三年後に残っている店は驚くほど少ないのだ。


サイレンを鳴らしていても交差点では徐行しているし、最近では緊急走行している車両を見ても止まらなくなった非常識な人が増えていると思う。


もし、救急車の到着が遅れたことによって家族が死亡しても納得できるのだろうか。自粛するしないは個人の自由だが、医療が逼迫して搬送先がないなどは現実に起こっており、自分や家族だけは平気だと思っているのだろうか。


パチンコ屋に着いたが今回はブレーキとアクセルを踏み間違えたことによる城門突破おばあさんだったらしい。不要不急の外出を避けてとなっているのは本来は重症化したら救命率の低いお年寄りの為の措置だったはずだ。


ワクチンを打ち始めたことによってマスクをしないで徘徊する高齢者が増え、店でクレームをして騒ぐのも中高年以降の年代が多い。


子供達が一生の思い出が作れずに我慢しているのにいい大人がとは思わなくはないが、コロナ禍が終息するのにはまだ時間がかかるだろう。


高齢者による踏み間違えの事故は急増している様にも思える。ダイレクト入店するのではなく、落ち着いて運転して貰いたいものだが、煽り運転などモラルのない人間が増えているのでそれも難しい。


調書をとって直ぐに帰れるかと思ったが、特危獣が街中に突如として現れたためにそれもできそうにない。


「管内のパトカーは現場に急行せよ」


ペア長である巡査部長も真剣な顔つきで指示を出している。


「ここの処理は終わったから行くぞ。今日は寝れないことも覚悟しておけ」


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「田上一佐。特危獣が都内に出現。第一特警隊に出動要請です」


「近藤二佐はどうしている。治安出動命令は出ていない筈だぞ」


災害派遣ではなく、基本的には治安出動となっている。警察官が規制線を張って交通規制をするにしても武器使用をするのであれば政府としては治安が脅かされていると判断するしかないからだ。


警察官の出動が先に行われるが、予備的な招集である。各都道府県警察に設置された迷宮対策課も出動するがレベルは自衛官よりも低い。


あくまでも警察官の仕事は治安を守ることであって特危獣を駆除することではない。自衛官も同じだが誰かがやらなくてはならないことであり、地上に関しては先ずは警察官が対処にあたることになっている。


皇居周辺はマラソンランナーが多く、老若男女問わずに走っている。誤報の可能性を考えて警察官を派遣したが既にゴブリンは駆けつけた警察官によって射殺されており、一応の安全は確保されているが周辺を捜索する必要があった。


皇居は迷宮化を逃れており、令和天皇は日本の象徴として公務に就いている。上皇となった平成天皇もハゼの研究に精を出しており、今もペースは落としているが表敬訪問などを行っている。


問題はゴブリンがどこからやってきたかということである。オリンピックを控えていることもあって東京の安全・安心を守れと政府は警察庁にも無茶な要求をしていると聞く。


自衛隊が攻略できない迷宮に警察官を送り込もうとしているのを阻止しており、利害関係者である政府要人たちはオリンピック開催をまだ諦めていないらしい。


「内閣危機管理室からの情報はきているのか?第一特警隊を急派して情報収集に努めよ」


報告は聞いてないが、少なくとも現時点で治安待機命令が出ているのだろう。内閣総理大臣や防衛大臣など一部の権限者の出せる命令がなくては自衛隊は出動できない。


待機命令では作戦に関わる情報収集が認められており、警察官も捜索しているだろうが鑑定士を派遣する必要が出てくる。


死骸から情報を得るのは重要であり、警察の鑑定士のレベルは低い。各分隊には最低一名の鑑定士の配備が隊規で定められており、後方支援職として派遣されている。


樹を派遣するかは微妙なところだ。民間協力者として派遣すること自体に問題はないだろう。冒険者法では非常時に政府への協力要請に関する条項もある。


そして、樹には政府に協力する義務が発生している。


「危機管理室でも情報は錯綜している模様。ドローンによる情報収集は継続中とのことです」


「陸幕長にCH-四十七JA(チヌーク)の手配を要請しろ。派遣される隊員のためにありったけの物資を手配するんだ」



「了解」


木更津から持ってくるにしろ時間はかかる。立川にも一機配備ができるように予算申請をしているが高価であり、運用にも金がかかる。


こういう時に決まって事務方が言うのは血税を無駄にはできないだ。人の命を救うために幾ら必死になっても報われないと思う時だ。


だが、現場に向かう隊員には関係のないことだ。彼等・彼女等が全力で活動できるようにするのが衛の仕事だ。


むしろ都心に輸送機を配備しない方が首都防衛時の穴になると思っている。立川に配備できれば良いのだが、装甲車と同時運用するにしても装甲車は地上を走らせて移動すれば良いと考えているらしい。


基本行動単位が分隊規模といえど武器弾薬や追加人員を考えれば積載量や輸送人員は多い方が良いに決まっている。


素早く展開できなくては犠牲になるのは国民なのだ。人員と装備だけ輸送しても後続がなければ安心して戦うことは難しい。


空自に頼むにしても毎回では同じ自衛隊とは言え情けないと思うのだ。戦闘ヘリや戦闘機ではない。人員のための輸送機をケチって上はどうしたいのだと思う時がある。


今回の場合は特に特警隊だけでなく一般隊員も捜索に回す方が効率がよい。迷宮の位置が判明していて調査のための派遣ならまだしも捜索任務の後に攻略しなくてはならない可能性があるのなら万全を期すべきだ。


幕山迷宮以外にも日本で異変は起こっていないかの調査がされているが、それらしき報告があがってきていなかったために油断していた。


軽装甲車も整備のノウハウが必要となるが、整備士に異動の辞令を出す方が航空機の整備士を異動させるよりも手間は少なく都民の安全に寄与することになる。


九十式や十式戦車を移動させるよりは手間も費用もかからずに国民に不安を与えることもない。第一特警隊の首都圏防衛のために必要だと上申を続けているが今の所は成果はなく、実にお役所仕事なのだ。


経費が税金がという割には有事の備えを蔑ろにし過ぎている。飛行隊のある駐屯地に間借りしているとはいえ初動が何よりも重要なのだ。


「待機隊に予備召集を忘れるな」


次から次へと厄介事が舞い込んでくるがそれも仕事だと衛は行動に移した。

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