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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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三十一話

 自衛隊に入隊してから十数年が経った。初めは着いていくことも大変で三曹にならずに任期を終了した時点で退官し転職しようとすら考えていたほどだ。続けられたのは上官に恵まれたというのは大きいだろう。


 藤堂と出会ったのも辞めようか迷っていた頃であり、狙撃の才能を見出してくれたのも藤堂だった。海外派遣が決まった時に藤堂が行くならと志願した。海外は日本と違って治安が悪い。


 殺人などの凶悪事件が起こる率が低い日本と違って派遣先ではゲリラの標的となって命を落とす者も多く、未知なる世界であった。


 日本を標的とするテロは少ないとはいえそれは絶対ではない。政府が決めた派遣先は比較的に危険度が低い地域ではあるが、米軍や他国籍軍はテロの標的となっている。


 日本もアメリカの同盟国なのでテロの標的となっても可笑しくはないが、自衛隊の役割は治安維持というよりかは他国籍軍の後方支援だったり、人道的支援に就くことが多かったのが、攻撃を躊躇う理由になっていたのだと思う。それでも何時、撃たれるか分からない状況下で平常心を保つことは難しい。


 自衛隊が他国でしたことは功も罪も日本がしたこととして外国に認識され、国内では自衛するための戦力と違憲を避けるために玉虫色な判断しかしていないが、外国からは軍隊であると認識されているのだ。治安が悪化し邦人を国外脱出させるために派遣されなかったことを悔しくも思った。


 自衛隊は有事の時のために過酷な訓練をしており、活躍する場が欲しいのではない。苦難の中にいる邦人の希望となりたいだけで英雄願望はない。中にはある隊員もいるかも知れないがそういう隊員ほど現実と理想のギャップに苛まれて退官していく。


 専守防衛のための戦力など言い訳する必要はないのだ。過去の過ちを反省し繰り返さないことは大事だ。だが、当時の情勢が日本を戦争へと駆り立てる状況だったのだ。それに文民統制(シビリアンコントロール)さえ機能していれば、軍部が暴走して、軍事クーデターを起こすことは無いと思う。


 最近の政治に思うことはあるが、それでも自衛官としての責務を果たすために己を律する自制心くらいはある。自衛官も日本国民であるために納税の義務もあれば勤労の義務もあって教育を受けさせる義務がある。参政権も認められた権利であり、立候補するならば退官した上で議員になることも権利なのだ。


 大きな災害がある度に助けられたり、不甲斐なさを感じた若者が自衛隊に入隊してくる。その志を貶める訳では無いがそれだけだと結局は退官することになっているようにも感じる。自衛隊の存在意義はあくまでも国防であるということを自覚して志して欲しいとも思う。


 幕山迷宮を攻略し実績を作ることで無茶な迷宮攻略を官僚に自制させるというのは必要な事だ。退官していった仲間達が幸せを掴むことを願っているが、それでも今いる自衛官たちが安心して任務に励める状況を作るのが官僚の仕事であり、政府の仕事なのだ。


 そして、先鋒となった春日分隊を見捨てることは同じ自衛官としてできないことだ。勇敢に戦って傷付いた者を向かい入れるのが支援隊の役割であり、傷付かないために尽力する必要があった。そして、幸運なのか不幸なのかその機会に恵まれた。


 この狙撃は外すことはできない。隊員たちから望まれているというのもあるが、志願したのは寺尾自身であったからだ。護るためとはいえ殺人の技術を学んでいることには間違いはない。


 それは有事の際の戦力であり、専守防衛のためであっても変わらない。誰かがやらなくてはならないことでありそれが偶々、自分であっただけなのだ。


 反動の強いそして導入されて習熟訓練が完了しているとは言い難い。対人狙撃銃ですら訓練をしにくい状況なのだ。距離が離れるほどに制御が難しくなり不慮の事故が起きやすくなる。


 寺尾自身、藤堂に言われて狙撃銃を迷宮で使用したこともあるが、アサルトライフルで十分なのだ。精度という点では狙撃銃の方が高いが、距離が近ければ当てやすくなるために必ず必要というわけではなかった。


 撃った瞬間に当たるという確信があった。そして、確かに当たった。だが、分厚い脂肪に阻まれて致命傷を与えるまでには至らなかったみたいだ。


命中(ヒット)目標(ターゲット)は依然として健在」


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 銃弾が空気を裂く衝撃を肌に感じて作戦が成功したのかと藤堂は一瞬、思った。


兵士(ソルジャー)は射撃を集中させろ。他の魔物は近付くもの以外は無視しろ」


 重い銃と銃弾を持ってきただけあって分隊支援火器は沈黙するまでその威力を発揮させたが、それでも止めを刺すまでには至らない。


「撃ち方、止め。後退だ」


 攻略はある意味では成功し、失敗した。迷宮核(ダンジョンコア)、及び迷宮主(ダンジョンマスター)の確認はできなかったが、フロアボスらしき個体には手痛い一撃を与えることができた。


 幕山迷宮攻略の失敗は東京駅迷宮が攻略できないことを意味する。それは自衛隊の敗北でもある。第二・第三の一部の部隊しか派遣されていなかったというのは言い訳だ。それに攻略しなければ規制線を解除できないことを意味し、戦力を張り付けなくてはならない。


 特異体を倒せるかは賭けで分の良い賭けとは言い難いが、迷宮が魔物が人類の言い訳を聞いてくれる筈がない。天然迷宮でなく人の手が入った人工迷宮の疑いがあるが、それでも調査が十分ではなく、結論を出すことはできない。


「指揮本部。作戦は失敗。繰り返す作戦は失敗した」


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 ここで大人しくしてくれと言われた樹は攻略仮本部で自衛隊が失敗したことを知った。銃があれば高難易度でも攻略できるという傲りがあったのだろうか。否、自衛隊が失敗したのなら樹が攻略しようとしても同じ結果になった可能性は高い。


 恐らくではあるが特警隊の隊員であれば樹よりも身体能力は高い。瞬間的に出せる身体能力は金剛を持つ樹の方が高いかもしれないが、持続性のある力は自衛官の方が高いだろう。


 流石にあまり迷宮に潜っていない覚醒しただけのような隊員であれば樹の方が高いだろう。自衛隊としてもホブゴブリンを単独で倒せるというのが、最低限の基準であり、樹のように近接格闘を極力は行わないためにハードルは低い。


 特警隊であれば、円匙があれば倒せてしまえそうだが、あくまでの銃術を得るまでは後方支援であり、迷宮外の、任務もあるために全ての隊員が迷宮に潜り続ける筈がないのだ。


 日本全国で同じ傾向が確認されるのかまたは幕山迷宮だけの特性なのかにもよるが、海外と同じように生活が制限され、魔物による被害が日常化することを許す訳にはいかない。あくまでも樹の立場は民間人だ。


 臨時特例として自衛官の立場を与えられる予備自衛官ではなく、契約に基づいて履行するだけの存在でしかないが、迷宮帰還者(ダンジョンサバイバー)という立場は特殊である。優先的に冒険者資格を与えられ、迷宮内の様子を撮影することも合法だ。


 ゴア制限などでDTubeに載せることはできず、報告によって動画を削除することになる可能性は高い。そして、それが契約違反となり違約金を請求される可能性もある。


 だが、自衛官が自衛隊の正当性を主張するために職を賭けて行った告発は当時の日本で話題になった。中国船が日本船に体当たりする映像は衝撃的で自衛隊や国際情勢に興味が無い者も一度は目にしたことがあるのではないだろうか。


 そして、樹は携帯電話を取り出して電話帳から目的の人物へと電話をかけた。


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 議論は白熱しており、一度、頭を冷やすために会議は中座した。その時に樹から電話がかかってきたのだ。


「もしもし。父さん?相談があるんだ」


 話を聞いた衛は樹の話した作戦を実行するか迷った。樹ももしかしたら冒険者資格を剥奪されるかもしれない。そして、息子が不祥事を起こしたら自衛官を辞めなくてはならなくなるだろう。


「少し考えさせてくれ」


 仕事で根回しの大切さを知っている衛は警察庁から神奈川県警に出向している東雲に電話をかけた。自衛隊が単独で直訴するよりも警察庁を巻き込んだ方が良い結果が得られると確信していたからだ。


「東雲さん。申し訳ない。自衛官として見過ごすことはできない。少しでも被害が減らせるように協力をお願いします」


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 筧防衛大臣のもとにも衛からの直訴は届いていた。そして、一定の理があることを筧も認めていた。だが、それだけでは動かないというのが政治だ。


 清濁併せ呑む所か汚水ばかりを呑まさせられているようにも思う。現役の自衛官であったのなら現場がそういうのであればできる限りは叶えてやりたいところだが、国民を代表する議員である以上は制約が付きまとうのだ。


 閣僚の一人として防衛副大臣を務め、防衛大臣になったが、与党の中で派閥を形成している訳では無い。派閥力学で都合の良い議員がおらず、お鉢が回ってきたに過ぎないことは自覚している。


 だが、現場の声を無視することが国民の為になるかと言えばそうはならない。政党として支持率を気にするのは確かに必要なことなのだろう。民主主義において数は力であり、国民の信を得て政治を行っているというのが、建前だ。


 実際は高齢者や金持ちに都合の良い法律を通して自分たちもお零れに預かる。それを否定する力がないことは不徳の致すところだろう。それに現役の自衛官からの相談は後を絶たない。


 違憲・合憲論を説きたいのではない。実際に侵略した時に盾になれるほどの実力が今の自衛隊にあるのかを気にする声は多く。現場の声を政治に反映させることが自分の使命であるとすら思う。


 提案をしてみても一蹴されるだけだろう。命令でにる立場ではあるが、それも議員という立場で防衛大臣だからだ。閣議決定に逆らうことは決定を否定できるだけの国民の声が必要であり、オリンピックに反対の声が大きくなっている今だからこそできる事もあるだろう。


 後悔しないために筧も動き始めた


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 樹は現時点で出現した魔物の情報などを白井と共に分析していた。そして、秘密保持契約を結んでいるために自衛官達のスキルやステータスを鑑定していた。アパートは解約しないがそのまま自衛隊が家賃を負担してくれ契約が終了するまでは各地の駐屯地を転々とする予定であった。


 自衛隊としては戦力の均一化を行いたい。特にスキルの発現条件が解析できるのであれば日本で最も鑑定スキルが高いと思われる樹の協力を得られているうちに情報の蓄積を行おうと考えているのだ。


 日給以外にも成功報酬が設定されており、随時協議することになっているのは情報の出し渋りを防ぐためであり、防衛予算からでなく内閣官房長官機密費から費用が支払われるからである。


 防衛費から出してしまうと予算委員会にて機密が漏れる可能性が高くなり、また樹の身を危険に晒すことになる。会計報告として残したくないこともあり、それが国益に見合うものならば適正な支出ということになる。


 銃殺されたオークの死体を自衛官達が樹の目の前で解体していく。食肉加工業者に依頼することも見当されたが、幾ら隊員と同じ格好をしていても所作で素人とバレるために止めたのだ。そして、ゴブリンやホブゴブリンを解体してきた樹にとって今更の話だった。


 人として大切な何かを失ったのかと自問自答したこともあった。衛や(つむぐ)が勧めても頑なにカウンセリングは断ってきた。鬱状態になっていたのであれば樹もカウンセリングの必要性を認めて受けていただろう。だが、人が亡くなったという悲しさはあっても涙はでなかった。


 これが両親や紬、楓であったのなら涙は出たのだろうかとも考えた。だが、知り合いを亡くし、貞操まで蹂躙された春菜を警察署で見た時も面倒だなと思っても同情以上の感情は起こらなかったのだ。


 既に樹が仇をとっていることも影響しているのかもしれない。また精神耐性によって感情の揺れ幅が狭くなったことは自覚しているが人間としての感情を喪失した訳では無いのだ。過酷な世界に変貌してしまったのだから起こったことは事実として受け入れるしかなかったというのも影響しているのだろうか


 ただ救える命があるのなら見捨てることはできないという本質は変わらないだろう。それでも命を助けられても心までは救えないのは既に体験している。零れそうな命を全て救うなど傲慢にはなれないが、それでも目に入る両手で救える命は救いたいとは思う。


 そのためには政府に頼らない力が必要なのだ。安全な土地・食糧・水の価値はこれからは上がるだろう。迷宮という防衛機構を駆使できるのは迷宮主だけであり、その権利は利権に塗れた大人たちに独占されることだけは防がなくてはならない。


 水魔法が飲料水として適さないが、それでも人は水がなければ死ぬ。無限にとはいかないだろうが、食糧を生みだす手段を確保するためなら妥協する。その結果が、現在であるが、今はまだ社会分業制と貨幣経済が成り立っているが、何時まで維持できるかは分からない。


 明日、突然にできなくなるかもしれないし、十年後もまだ成り立っているかもしれない。杞憂ならそれでも良いと思う。モンスターテイマーだと誤解させておけば風評被害は防げるだろうし、国もわざわざ迷宮主を公開することはないだろう。


 窮地に陥ればそこまで貧するかもしれないが、それまでに地盤を作っておけば良いことだ。マネーゲームで大金を得ようとも権力を握ろうとも人はいつか死ぬ流石にファンタジーな世界になっても不老不死は実現しないだろう。


 信頼を得るためにスキルを駆使し迷宮攻略にも協力している。それが打算的だと言う人もいるかもしれないが、打算的で何が悪いのだ。上司の指示を聞くのも結局の所は会社から給料を得ているが、収入を得るためにしているに過ぎない。


 それに人が笑顔を見せるのも本来であれば威嚇のためだ。本心を隠し相手の懐に入る。ものの大小はあっても自分が生き残るためであり、本当に死ぬとなった時に自分の命よりも他者の命を優先できるものがどれほどいるのだろうか


 自衛官はできれば味方にしておきたい戦力だ。迷宮を経営するようになっても直ぐに迷宮核を奪われては意味がないし、野心というほどのものではないが、本心は隠しておきたい。それに地上に魔物が跋扈し人が住めなくなったときこそ戦力を手元においておきたいと思うだろう。


 そんなことを想定しないとならない世の中に変化してしまったということだ。惰性で続けていたコンビニ店員よりも良いだろう。エッセンシャルワーカーなどと持て囃しても本心ではその職に就く人を蔑んでいる人は多い。


 医療従事者の辞職も現実味を帯びており、コンビニ店員や流通に携わる人達が仕事を辞めて自分たちの生活が成り立つと本気で思っているのだろうか。恐らくはそこまで考えておらず、肩書がなくなって孤独となった苛立ちをぶつけているだけなのだと思う。


 迷宮攻略の経験が乏しすぎるために判断はできないがでてくる魔物自体は平凡だと思う。スモールボアもオークも猪系だと思えば系統としては単一迷宮でも可笑しくはない。


 ただ武器のランクと迷宮の等級は釣り合いが取れていないとも思う。人型迷宮だからなのか宝箱に入れるようにDPによって武器が生成できるのかは分からない。


 だが、少なくとも銃という武器は低等級迷宮には過ぎたものだと思う。オーラによる防御膜があったとしても貫通するだろう。それは魔法にも言えることかもしれないが、マジシャン系統の魔物が放つ魔法は直撃すれば当たり所によっては死ぬかもしれないが発動回数にも制限があり、目視することも可能だ。


 文明のレベルで言えば銃が登場するのは鉄の時代でもある程度の工業レベルに達した時であり、鉄を正確に加工する技術や火薬を作るための科学知識と必要なものは多い。


 技術があっても素材がなくては作成できないだろうし、素材があっても技術がなければ不可能だ。それは魔物に知性がある可能性と地球人が誰にも知られずに迷宮核を支配し迷宮主になっている可能性を示唆しているのだ。


 樹が政府と交渉して迷宮を経営しようとするのは政府公認でないと権力者に邪魔をされるからであり、公認を得ておきたいからだ。法律の制定まではいかなくとも力をつけるまで凌げれば良いのだ。


 迷宮主以外が迷宮の支配権を得ると初期化されるのが設定らしいが、例えば眷属に迷宮を譲るなどは可能な筈だ。迷宮主は眷属に迷宮核の支配権を一部譲渡できるらしくまた迷宮核は無事で迷宮主が死亡するということも決して零ではないのだ。


 システムによる一騎打ちであれば迷宮主が死ねば支配権は奪われるだろう。だが、侵攻していた際に死亡した場合や迷宮主の部屋以外での戦いであれば強制されることはないのだ。


 人を眷属にするということが可能なのかというと恐らくは可能だ。最初に政府が公認迷宮を作るときに試作迷宮となった迷宮があり、各種の実験をしているはずだからだ。任期制なのかは不明だが、権利を移譲できないのであれば複数の公認迷宮を作るということはしてないように思える。


 防衛省の公認迷宮の迷宮主が誰かは公表されていないが一番、厄介な迷宮主になるとしたらここだろう。隊員達は精鋭で迷宮の中で銃も使用できる。そして、銃や弾薬の維持ができなくとも魔物でも喰って生き延びそうなのだ。


 ある程度までは迷宮のみで完結する術を自衛隊は模索するだろう。軍というのは外部に頼らざるおえない部分もあるが、できることは全て軍だけで完結させるものなのだ。それも潤沢な予算があってのことだが、防衛力としての自衛隊は災害地でも民間の施設はなるべく使用しないし、それが戦場での予行練習となっている。


 ご飯も風呂も必要物資も災害現場では被災者が優先される。狭いテントにベットを用意し休憩していても文句を言うなら自分たちで救助や瓦礫の撤去をすれば良いのだ。缶飯には昔は赤飯があったらしいのだが、今は災害地で赤飯など食えるかという国民の有難いお言葉で廃止になっている。


 樹も接客業をしていたのでお客様は貧乏神です。疫病神ですと言えたらと何度、思ったことだろうか。サービス業経験者や本当のお金持ちは店員に優しくできるものなのでなんとなくではあるが、共感する部分があり、自分が客の立場になった時には謙虚になれている気がする。


 自衛官の鑑定士と白井とで情報のすり合わせを行い、やはり幕山迷宮は特異点であると判断する。駅からも近く街中にある小田原城迷宮では特に変化はない。こちらは最初の方から銃を使っていたらしいのだが、その銃も威力はそこまでではないらしい。


 そして、発射の頻度も低く殆どが一発を撃ったら使い捨てにしているのでないかとされているくらいだ。頭や心臓などの重要な臓器に当たれば生命の危険があるという点では同じだか、魔法とそこまで変わらない。


 迷宮の特色として鎧を纏ったゴブリンなどが出てくるが重さで鈍くなっており、自衛官からしてみれば良い的でしかない。ホブゴブリンであれば機動性は上がるがそれでも鎧に銃弾を止めるほどの性能が無いために近接戦闘を行わない限りは被害を受けることはない。


 通称、城系迷宮はどこも似たような感じだ。ミノタウロスやオーク、オーガなどが出る場合は迷宮ヘの入場を禁止しているために民間人が被害に遭うこともない。


 幕山迷宮も当初はオークが出るということで封鎖の対象になりかけたが、迷宮帰還者(ダンジョンサバイバー)のみに解放したのは樹の実力を知りたいという政府の思惑があったからでその迷宮帰還者にも実力に、って侵入できる迷宮を制限している。


 樹の冒険者資格が六等級から始まったのも迷宮帰還者であるということを考慮した結果であり、昇級資格には特定の魔物を倒し討伐部位を持ってくることもしくは実力のある迷宮警察(ダンジョンポリス)の資格所持者に認められることで、樹には藤堂が実力を保証する証明を政府に提出していた。


 特警隊の隊長であれば推薦には申し分ない。日本の中での実力者であり、銃を用いない戦闘ではオリンピック選手も凌ぐ実力を持っているのだ。それに自衛官と言えど人だ。


 命令には従うとは言っても快諾するのと渋々、従うのとでは雲泥の差があるし、臍を曲げられて退官されでもしてみれば国益を失うことになる。日本で冒険者資格を与えないということも不可能ではない。ただ、現実的ではないのだ。


 日本に不満を持って移住される可能性もあるし、アメリカは同盟国、日本の優秀な指揮官を高待遇で迎えるだろう。現にアメリカは永住権の資格要件の緩和を行っており、優秀な冒険者を世界中から集めようとしている。


 コロナ禍によって国の移動は制限されているがアメリカが日本政府に圧力をかければ単独で国を護れないと考えられている日本は要求を呑むしかなくなるだろう。アメリカの戦略的な思惑もあって日本に米軍が駐留しているのだ。思いやり予算も結局の所はアメリカに足下を見られているに過ぎないのだ。



 そして投資を超えて投機になりつつある分野が迷宮や魔物の素材であり、世界は敵のことを良く知るべきなのだ。樹は慣れないことはするべきではないなと思いつつも白井と一緒に報告書を書き終えた。

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