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冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
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二十五話

 (ファン)は焦りを隠せないでいた。共産党の指示では自衛隊の治安出動はないと断言されていたし一ヶ月にも及ぶ籠城生活で神経をすり減らしていたからだ。


 一度、日本に認知されてしまえば入口は閉鎖される。そして、袋小路に追い込まれているのだ。迷宮主(ダンジョンマスター)の権限で食糧自体は生み出すことができた。


 土地を改変するためにDPの消費は激しいが畑だけでなく直接、生み出すこともできる。娯楽は少ないが、核シェルターの中で生活するよりも快適であることには違いはなく最悪はオークの肉を喰らえば生き延びることは可能なのだ。


 本土より遠く離れた異国の地でも党の意向に従うのは功績を上げれば都市部の戸籍を手に入れられ、栄達が約束されるからだ。世界の覇者として君臨することは中国の長年の夢であり、日本という覇業を邪魔する敵を打ち破るその手助けができるのであればこの上ない名誉なことなのだ。


 魔物を繁殖させて増やせた数は僅かであるが土地から吸収する魔力でDPも増えている。侵入してくる自衛隊を撃退するために銃を使ってしまったのは痛手であったが、撃退そのものには成功しているのだ。日本文化に触れる機会があったがやはり日本人は畜生にも劣る存在だった。


 幼少の頃は親が中国人というだけで排斥され虐めにもあった。教師に発覚しないように行われる虐めは陰湿極まりなかった。仲間を集めて報復はきちんと行ったがそれでも黄の気は晴れないのだ。


 配下であるオークコマンダーに名をつけることで進化させることを決断する。オークジェネラルとなったその個体は防衛戦力として申し分ない力を有している。下位職に対するバフは数を脅威へと変える。


 オーク自体はそこまで強い魔物ではないが他種族を孕ますこともできゴブリンと並んで繁殖力の強いことで有名なのだ。昨日、突如として迷宮主が侵入したきたときには失っても痛くはないスモールボアで偵察を行った。


 そして案の定やられはしたがスモールボアの討伐に苦戦していたためにオークを投入したがこちらも倒されるとは思っていなかったのだ。協力者はあくまでもサポートをするだけで黄が全てを実行しなくてはならなかった。


 外敵である冒険者を倒すのも自衛隊や警察官を追い出すのもだ。全国にある迷宮を管理しなくてはならない政府にとってランドマークにならない迷宮の脅威度は低く見積もられる。街中にあるといっても迷宮の現れた日以降は日本で氾濫が起こった事実はないし上手く管理されている方だと思う。


 迷宮主の使命は支配領域を拡げ迷宮をランクアップさせることにある。迷宮は一つの国であり王として振る舞うことが許されるのだ。これは世界を制するために必要なことだ。


 そしてそれが日本が相手ならこの上ない。日本の外交政策が中国に付け入る隙を与えているのだ。アジア諸国を金で買収する行為など浅ましくて笑いが込み上げてくる。中国が覇権を得るために邪魔にしかならない。迷宮主として迷宮を離れられないのはネックだったが補給物資は届くので何とかなっているのだ。


 そしてオークガンナーとオークアーチャーを多数配備する。装備品のコストも高いが防衛戦には必要な戦力だからだ。そして毒薬も多く準備しておくこれは少しでも敵の動きを制限できれば良いからだ。再攻撃の猶予はそうないはずだと覚悟して準備を怠らない黄の姿があった。


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「これが頼まれた魔石だ」


 藤堂は興味深そうにこれから始まる事の行く末を見極めようとしていた。樹が迷宮主であるかどうかはこの際は問題ではない。国益に適う能力もしくは知識があるかが問われていた。魔法師を増やすのは戦力増強に必要なことで魔法適性を得た隊員にも聴取を行いメカニズムの解明に努めているが不明な部分は多い。


 藤堂自身もオーラを操作できるようになりつつあるが何故できるのかを理論的には説明することは難しいのだ。そして樹は魔力だけでなくオーラの扱いを教導できるという。明石警視はそこまで迷宮に潜っておらずレベルも低いためにもし警視が魔力を扱うとっかかりを得たのであればオーラのことも嘘でないのだと信用することができるのだ。


 武技をマニュアルで再現する価値は高い。オートで体が引っ張られるように動く武技は使い所を間違えれば窮地に陥ることになってしまうからだ。仲間のフォローが常に万全にできる状態にするのは理想であって予期せぬ攻撃を受けたりする迷宮の中では難しいことであった。


「手本を見せるのでよく見ていて下さい」


 樹は手のひらにのせた魔石から魔力を抜くために魔力操作を行う。魔石によって力加減が変わるがそれは内包する魔力にも抵抗があり、魔力が大きいほどに外部から干渉する魔力に対して強い耐性を持つようになるからだ。


「オークの魔力だとそれほど力を込めなくても抜ける様になります。ただ魔法系統のジョブを持っていた個体の場合は少し抵抗が強くなります」


 黒い魔石は魔力を抜かれて小さな砂粒となった。魔力が強化していた硬度を保てなくなったためだ。


「この砂はただの砂に近いので特別な効果はないです。ただ土魔法とは相性が良いかもしれないと言った程度です」


 Name

 残魔の砂

 Rank

 普通(コモン)

 Explanation

 魔石から魔力を抜いてできた砂。通常の砂よりも土魔法の通りが良い


 鑑定結果にはそう出ていた。土魔法をまだ習得していないために実験はできていないが錬金素材になる可能性(ポテンシャル)は十分に秘めており、この砂で防御陣地を作れば耐久度の増加などが見込まれている。


 土魔法は地面さえあれば他の魔法よりも省エネルギーであると推測されている。ライトノベルなどでは不遇職とされていることも多いが建築業界に革命を起こせると樹は考えている。


「いきなりは難しいですが体内魔力の操作と魔石から魔力を抜く対外魔力の操作に習熟すれば魔法の発動は省魔力かつ迅速に行うことができるようになります」


「それと鑑定ですが鑑定スキル持ちを連れてきてくれないと確定はできませんが戦闘に流用することも可能です」


 鑑定の本質は性質を見抜くことにある。そして魔力やオーラを認識していない覚醒者は脆い。自分では均等に展開しているつもりでもその時の精神状態や疲労度によってムラができる。そのムラは弱点となり低レベルでも高レベルを倒せる隙となるのだ。


「実際に鑑定してみれば銃が迷宮で効かない理由も判明するかもしれません」


 樹はスキルが補って纏武をしているのでないかと推測している。文明の利器によって簡単に攻略されないための制限ではあるが魔法禁止エリアやオーラ禁止エリアのコストはかなり大きく負担になる。低等級迷宮では賄えるものではないと思うのでシステムによる保護がされていると考えるのが妥当である。


 オーラで保護されている防御を破るにはオーラもしくは魔法で攻撃しなくてはならない。銃そのものをオーラで包む必要があるのかそれとも銃弾だけで良いのかは視ないと分からないが、銃弾だけで良いと考えている。判定自体が曖昧なためにこれだから駄目という明確な理由がないのは痛いところだ。


 樹が迷宮を作るなら人型魔物は積極的に召喚していきたいと考えている。動物型と違ってジョブに似た役割を持つのは魔物を組織として扱うためには必要な事だからだ。損耗率は高くともゴブリンがオーガまで存在進化すればかなり使える魔物になる。


 AランクとまではいかないだろうがB+くらいの頑強性があるのだ。それに武器を持たせれば防衛の安定性は高まるのだ。魔剣や魔弓、魔槍といった武器も開発できるかもしれない。


 それはもし格上の敵がでてきたとしてもジャイアントキリングできる可能性があるだけでもだいぶ心持ちは変わってくるのだ。それに人間は思っているよりも脆い。頭部への攻撃が致命傷となることは十分に有り得るし体表も強度がある訳では無いのだ。


 そして、この情報はいずれは価値が無くなるものであり迷宮を政府公認にできるのであれば余りある成果となる。迷宮主として命令すれば迷宮の外に魔物を出さなくすることも可能で条件をつけて攻撃不可にすることも可能だ。迷宮主と魔物には主従契約が織り込まれており拒否することはできないのだ。


「簡単なところは以上です。訓練を続ければスムーズに出来るようになります」


 樹が魔法について手解きしているのは政府が要求を呑んだからだ。一般に解放が遅れることによって世界から取り残されることを懸念していた。実際にアメリカの一般人が自衛隊の精鋭とまではいかないが、迷宮攻略に乗り出しており一定の成果を上げていたのも影響している。同盟国といえど国家間に真の友情は存在しない。


 アメリカが沖縄を返還したのもアジアの安寧を日本に任せることで中国やロシアに対する牽制とし、経済的・軍事的負担を軽減するという事情があったからだ。冷戦を経て世界の軍事事情は悪化している。中国とアメリカは貿易戦争をしているしロシアは領土的野心を見せている。


 欧州各国も経済圏としてのまとまりはあるが軍事力という点では不安が残る。そして中国が世界的な経済競争力を失おうとしていた矢先にパンデミックが起こったのだ。国際機関としての国連は形骸化しており世界保健機関(WHO)も中国政府の意向を汲む人選がなされていた。新たな秩序を構築すべくアメリカは脱退の動きすらみせていたのだ。


 そこにきて迷宮とは各国の首脳陣は頭を悩ませたに違いない。軍事費の膨張は経済的に負担となっているなかで下手に削減することもできない。一つの兵器で戦場を支配することはできなくとも局地戦での敗北が支持基盤を揺るがすなどよくあることだからだ。


 アメリカがテロに屈しないのは犠牲を阻止できないことは遺憾であるがテロが有効だと思われてしまえばそれ以上の犠牲が出るからである。


 各国は迷宮から産出されるアイテムを分析してはいるが科学文明と異なる魔法が使われる品々に苦慮していた。ゴブリンは人と同じとまではいかないがDNAに人に酷似した部分が認められる。猿と人ほどとまではいかないがゴブリンも社会性を持つ。


 そして、未知なる力である魔法を操る個体がいるのだ。通常種よりも高値で取引され臓器などの構造から解明しようとアプローチがされているが殆ど判明していない。


 魔法を使えるようになった隊員を精密検査し得られた情報も興味無いものであったが魔力を発生させる臓器【魔臓】を分析したいから摘出するというわけにもいかない。医療ミスとまではいかないが腫瘍として取り除いて魔法が使えなくなるのは国家的な損失である。魔法を使えるということは何かしらのリソースを割り振っているはずであり自衛隊ではBPであるとされていた。


 目にわかる形で障害が残るのも問題でそれが精鋭であった場合は戦闘能力が落ちることになる。そして部隊の不信は政府への不信へと繋がるのだ。成果を上げ国の防衛にも役立つ戦力が国の管理下から離れるのは悪夢である。民間軍事会社は日本では馴染みはないが海外では戦力を金に変えることはままあることである。


 政情が不安でなおかつ命を賭けるのに満足な対価が払えないとしても戦争の中でしか生きていけない人種もいるのだ。そして、これから力を持った民間の冒険者が様々なビジネスを展開していくのは資本主義の視点からも不思議なことではない。


 特定の病に対する特効薬が開発されても素材がなければ意味がない。そして、覚醒者に対する備えとして身辺警護に冒険者を雇うことも考えられる。そして各国は一度、国家に売却するという形をとっているが不当に搾取されていると冒険者が感じてしまえば迷宮を攻略する戦力を失うことも考えられる。


 より条件の良い国へ迷宮産のアイテムが流れ込めば国家の損失になることも有り得る。金で済むことならまだ良いが迷宮の魔物たちが迷宮外へと出て暴れる大暴走(スタンピード)が起こってしまえば経済的損失だけでなく人的損失も甚大なものになる。


 内閣支持率を気にしてのものだと樹は思う。政権担当能力のない野党は論外にしてもオリンピックや感染症対策で国民の不興を買っているのは確かだ。ガス抜きとして迷宮を解放するのは間違いではないが国民に犠牲を強いる方法でもある。レームダック化しているのにしぶといと思う。この後に及んで気にしているのが今後の政治家生命なのだから笑えない。


 政府は三ヶ月の短期契約を結ぶことにしたらしい。日給が二万なので政府としては端金で知識を得られるならとのことらしいが血税を使っているという意識はないのだろうと諦める。それに自衛隊の最新鋭と行動を共にできるというのは解析を行う上での利点でもある。


 警察は攻略に消極的であり利権を得られないのだから当然でもあるがレベルアップのために義務的に探索しているに過ぎないのだ。それに監視役がつくにしても知り合いの方が精神衛生上、好ましいということだ。


 範囲外からの監視だと思っていても樹は気付いているし機械的に監視される方が厄介なのだ。魔力もオーラもないとすれば気付くためには注意力が必要になる。鑑定で目に入れば監視されていることには気付けるが知らぬうちに情報を抜かれている可能性は否定できないのだ。


 反政府的な行動をしている訳では無いが、迷宮主は人類の敵にもなりかねない存在であることは否定できない。殺さずに効率的にDPとして回収する方法は判明しておらず魔物を使役しているというだけで外聞はかなり悪い。それに力を持った迷宮主が世界征服に乗り出さないとも言えないところが痛い。


 Aランクの迷宮を支配しているのであれば一国は無理でも地方単位であれば支配が可能なのだ。戦車で迷宮を制圧できるのなら良いが制限によって規制されている。


 それに迷宮が与える莫大な利益を甘受しようと有象無象が集まってきているのが現状なのだ。当然、樹もその一員であることは自覚している。樹の目的は金にもあるがどんな状況下でも対応できる力を手に入れることだ。自分や大切な人の命を他者に委ねすぎることを危惧しているとも言える。


 三ヶ月もあればレベル二十になることもできるし外部協力員としての立場が自衛隊の戦力を分析するのに役立つのだ。自衛隊から派遣される鑑定士とともに整合性を確認はされるだろう。ただ樹の鑑定眼は鑑定の上位シリーズであり、魔眼以外にも厄介そうなスキルが沢山あるのだ。防御系スキルとしては上位に入る金剛もそうだがアイテム作成スキルも使い方によっては毒にも薬にもなるだろう。


 署名が入った契約書が届き次第、幕山迷宮へと出発する手筈になっている。護衛につくのは春日分隊である。後方待機として白井分隊もいるが他の迷宮への警戒もしなくてはならないために全ての隊を投入することはできない。通常の部隊で対応できない事態に出動するのが特警隊であり、冒険者の制圧にも要請がくるために忙しいのだ。


 編成も急であり隊長の権限によって一般部隊からも多くの隊員が引き抜かれている。退職者によってただでさえ平均年齢が高かったのにも関わらず追加の隊員が来る時期が決まってしまっているために予備自衛官にも出動要請をしなくてはならないギリギリの所で持ちこたえているが均衡はそう長くは持たないというのが共通認識になりつつあった。


 規律という意味では有望な冒険者を隊員として引き抜くのには問題がある。国民と接する機会のある隊員は基礎訓練を修了していなければならず半年近くも遊ばせておく余裕はないのだ。それならば基礎ができている隊員を迷宮に放り込んだ方が効率が良い。ただ一度でも覚醒してしまうと非覚醒者には戻れない。


 宗教的な理由ができても可笑しくはないし情勢がどう転ぶか不透明な中で決断するのも難しい。かと言って国民に武装する権利を認めていない以上は政府が責任をもって国民を保護しなくてはならないのだ。


 自衛を促すためと負担を減らすために銃刀法も改正されることになっているが板前が包丁を持っていても逮捕されないように冒険者が武器を持っていても正当な所持理由として見逃されているだけなのだ。


 アパート前に用意された車で幕山迷宮にある対策本部へと行くことになった。樹としてはこれで迷宮が認められるのであれば願ったりであった。迷宮の中には森も作成でき、最近は建築材としての木材の需要が高まっているからだ。トレントが新たな需要を生むかもしれないが現状では入手する方法がなかった。


 富士迷宮には存在しているらしいが現在は封鎖されており、自衛官や警察官であっても立ち入ることは難しい。元々、自殺の名所として有名になってしまった樹海だが、人生に絶望して自殺しに訪れた人を止めるためのパトロールも困難になってしまっていた。


 出現する魔物が強いために封鎖という手段を取らざるおえなくなったのだ。迷宮の攻略はその迷宮を支配している迷宮主を刺激することになるために手段を間違えれば大暴走(スタンピード)を誘発する結果となる。


 そして、公営迷宮の九つを除いて日本に現れた迷宮はランク付けがなされ脅威度の高い迷宮については許可制となっているのだ。低ランクの迷宮であれば攻略したいというのが本音だ。警備費用は血税であり、有事の際には責任を取らされるのであれば報奨金をつけてもトータルではプラスになる。


 ただ迷宮が攻略されれば迷宮核が冒険者の手に渡ることになってしまい、また迷宮から得られるはずのアイテムを取得不可になってしまうのだ。


 どのくらいの報酬になるかは冒険者の実力次第であり、良くても日給で一万円を超えれば良い方である。深層へと階を進める毎に報酬は上がるがリクスも跳ね上がる。そして、多くの冒険者は民間医療保険会社が提供している任意保険に無加入であり、現状ではハイリスクローリターンな仕事なのだ。


「樹くん。降りてくれ。対策本部に案内する」


 対策本部は迷宮外に設置され歩哨が銃を構えている。もし大暴走が起きるのであれば真っ先に攻撃の対象になり、天幕ではそれほどの防御力は期待できないだろう。


「春日二尉。現状を報告しろ」


「はい。オークの斥候部隊を撃退後は沈黙を保っております。そして、銃撃に関しては依然、詳細は不明です」


 樹が迷宮に侵入したことで刺激したことは間違いのない事実だろう。そして、刺激すると分かっていても侵入しなくてはならなかったというのが本音だろう。国営迷宮は所在地が公表されており、警備も厳重である。冒険者ライセンスは国際基準に則ったものになっているが自国以外の迷宮に潜りにくい現状は変わっていない。


 縄張り意識というのもあるが国益を損なうものであれば慎重にならざるおえないのだ。他国の冒険者の場合、換金したものを除けば利益は外国に流れることになる。そして、迷宮核が国外に流出することは阻止したい各国の思惑がある。


 絶妙な政情と軍事バランスを好んで崩したいと思う国は少ない。大国であるほどに自分たちが築きあげてきた秩序を壊されることを快く思う者などいるはずがないのだ。


 そのバランスを崩しかねない存在が覚醒者であり樹だ。インターネットを通して多くの情報を仕入れたためか樹の鑑定能力は上がっていた。(ジョブ)システムに少しだけだがアクセス権を得たのだ。


迷宮主(ダンジョンマスター)


 迷宮核(ダンジョンコア)の支配権を獲得し第一職(ファーストジョブ)に設定することで迷宮経営ができる特別職。自身の迷宮において各ステータス補正がかかり全てのステータスに成長補正がつく


兵士(ソルジャー)


 戦闘スキルを二つ以上保持したうえで転職を行う。HP・STR・VITに成長補正がつく。


指揮官(コマンダー)


 指揮および戦闘スキル三つ以上保持したうえで転職を行う。HP・STR・VIT・INTに成長補正がつく


【魔法師】

 魔法適性を一種以上取得したうえで魔力循環・魔力操作を保持し転職を行う。MP・INT・RESに成長補正がつく


 樹が確認したのはこの四種のみである。そして石碑を操作したことによって魔法師の取得条件を知ったのだ。第二職(セカンドジョブ)が解放されておらずセカンドジョブには錬金術師を選択する予定であるために死に職とも言えたが。


 ジョブによって補正がつくのはレベルを上げるうえで重要なことだ。無職でレベル上げをしてしまっては補正分だけ損することになるので十レベルになった時に石碑まで戻って転職するのが正しい育成法になる。


 人により成長限界が異なる可能性は高く、レベルダウンの方法が確立されていないので不確かなことだらけであるが知っているのと知らないのでは大きな差になる。ステータスの値としてたった一ではあるがそれが命運を分けないとは誰にも断言できないのだ。


 樹としては他の職の解放条件を知りたいところである。情報は金になるのだ。教導することになったがスキルの取得条件やジョブの取得条件を知るのが目的のうちの一つだった。


 政府には敵に回さない方が良いと思わせておいた方が良いし、アメリカも冒険者を取り込むためにグリーンカードの発行を優遇するはずだからだ。実際に移住するかは不透明だが手段があるとないとでは雲泥の差がある。そして政府を信用して行動する危険性も認識するべきだと樹は考えていた。

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