表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険者からの成り上がり~迷宮経営も楽じゃない~  作者: 浩志
コンビニ店員、冒険者になる
25/33

二十四話

「秘密保持契約と免責の法務大臣と内閣総理大臣の署名がくるまでは黙秘する」


 朝早くに来た明石と(つむぐ)。それに藤堂と父、衛に対して樹はそう断言した。


「この情報は利用価値が高い。そして、目的のために政府に要求がある」


 何かしらの情報を握っていると考えていたメンバーだったが樹から情報提供してくるとは考えていなかった。それは樹の父である衛にも話していないことであり、日本初の迷宮攻略者の言葉であればある程度の信用性がある。


「樹。やはり何かを隠していたのだな。まあそうだとは思っていたが」


「父さんにも話せないことはある。これは迷宮帰還者(ダンジョンサバイバー)になったことも無関係ではないよ」


 政府としては協力は欲しい。そうでなければ衛や藤堂を通じて懐柔しようとは考えなかったはずだ。樹としても迷宮の経営を認めさせたい。自分の迷宮を持ったとしても他の人間に簡単に攻略されては意味がないのだ。恒久的にとは言わないが少なくともある程度は稼いでおきたいというのが樹の偽りのない本音である。


「内容によるともしか言えないな」


「スキルの取得方法と魔法・(オーラ)に関する修行方法。後は迷宮核(ダンジョンコア)についてです」


「少し待て。こちらでも上に掛け合う」


 ----


 (かけい)防衛大臣は周防(すおう)統合幕僚長の電話によって起こされた。休日であったが仕事となり、少し遅めの朝食をとってから会議へと出席する予定だったのだ。


「筧先輩。監視対象、田上樹より情報提供と秘密保持契約の打診がありました。自衛隊としては受けても良い案件だと思います」


「周防。その内容が事実だという証拠は?簡単に信じることなどできないぞ」


 二人は防衛大学校の先輩・後輩の関係である。そして、樹は少なくとも日本初、現状では世界初の迷宮攻略者ではないかともくされている人物である。自衛隊員の中にも称号を得る者はいたがスキル育成では遅れをとっておりその内容には迷宮を攻略する鍵があるのではないかと考えられていた。


「藤堂三佐との組手では本気ではなかったとはいえ素人としては良い動きをしていたとの報告もあります。何かしらの秘密を抱えているのは間違いない事実でしょう」


 有益な情報に金を払うのには問題はない。そのために官房長官費があり支出した金額は公開されるが内容については公開されない。野党から追及の多い費用ではあるが国には公開できないものもありそれが政治に関わるものであればなおさらである。


「情報はどこまで広がっている?閣僚会議が必要になるかもしれないな」


「自衛隊の一部と警察の神奈川迷宮対策課の課長補佐、明石警視です。自衛隊に関しては情報をコントロールすることも可能ですが、警察に関しては難しいでしょう」


「総理に打診はするがあまり期待はするなよ。防衛省で秘匿するという手もあるがそれはあまり好ましいことではないな」


 治安出動命令が下ってから筧は処理が終わるまで寝れなかった。官邸には内閣危機管理室での情報収集が行われ危険と判断されたために迷宮攻略を含めた鎮圧作戦が立案・実行されることになった。藤堂の意見も反映されており、前線の指揮官として戦ってもらわなければならない以上は現場の意見を無視することはできない。


 自衛官として戦闘に反対することはないだろうが士気を甘くみて痛い目に遭った軍の話などそこら中に転がっているのだ。そして笠野内閣総理大臣のことを忌々しく思う。通常であれば内閣総理大臣は首相官邸に住む。だが、前内閣総理大臣と同様に笠野は首相官邸に住むことを拒否していた。人が住まなくとも修繕費やそれを直す人達の人件費がかかる。


 住宅というのは人が住まなくなれば簡単に劣化するし赤坂などの高級住宅街に官舎がある必要はないのだ。あるとしても大臣クラスで有事に対応しなくてはならないもの達だけで十分である。筧は若い頃は自衛官として働いていた。そして、このままでは日本が駄目になると思い議員になった。


 親の地盤があるわけでもなく市議を二期、務めた上で国会議員として当選した苦労人でもある。海外派遣されて現実を直視したというのもあるだろう。情勢が不安定なり邦人を救出しなくてはならない場面でも自衛隊が出動できない。


 親日国のチャーター便に同乗させてもらうなど国家の恥である。集団的自衛権の行使や積極的自衛権の行使について思う所はあるが力不足で現役の隊員に不便を強いているのを恥ずかしと思っているくらいなのだ。


 ----


 笠野は私邸で朝を迎えまた官邸へと移動していた。文部科学省を通じて神奈川西部と静岡東部に休校を命じて朝から対策を練っていた。ただでさえ最近の世論調査で内閣支持率は下落している。オリンピックを開催することは既に決定事項であり、IOCはこれ以上の延期を認めないだろう。


 それに招致するのに莫大な税金が使われており今更、引き返すわけにもいかなかった。それに笠野は所詮は派閥力学とババを引きたくない各派閥の思惑によって内閣総理大臣になったに過ぎないのだ。


 それに感染症対策のレベルを下げようにも医師会は反対の立場を示している。上昇し続ける医療費の圧縮のために診療報酬を下げているのは仕方がないことだ。そして高齢者の負担割合を上げたのも病院に行く高齢者にとっては負担増となるかもしれないが病気や怪我をしない健康な若者にとっては負担でしかなく上げたことによる負担軽減も軽微なものでしかない。


 それでも上げなくてはならないのは不必要な診療を受けている高齢者が多いということだ。生活保護受給者の中には病院で貰った精神向上薬を売り捌くものまでいる。若者による政治不信は深刻なものになっているが生まれた時代が悪かったとしか言えないだろう。そんな中で生まれた迷宮は福音になる十分なポテンシャルを秘めている。


 特に注目されているのは回復薬の存在だ。非覚醒者にあまり効果がないという欠点はあるものの既存薬よりも効果が高い物もあるのでないかと期待されている。再生治療に使われる細胞を培養するのに金と時間がかかるだが最下級回復薬でも切創などを従来よりも早く修復する効果が確認されているのだ。


 それにまだ部外への報告はしていないが解毒薬がコロナウイルスに効果があるのでないかとされている。迷宮に潜っている自衛官がコロナに感染していないのは勿論のこと覚醒者になったことで感染しにくい抗体ができているのではないかとの臨床データもある。


 そして解毒薬を鑑定して者によると毒には細菌やウィルスも含まれるのではないかという報告書が上がってきているのだ。蛇の毒でも出血毒や神経毒・筋肉毒など種類がある。そして、全ての毒に効くわけではないがそれでも毒の致死量によってはどの毒の種類でも解毒の効果が確認されたのである。


 症状が進行すれば効果は薄れるがそれでも解毒薬を作成できる様になればワクチンを開発しなくても済む可能性がある。外国の製薬会社から購入するワクチンは高くまたその国の政府の意向も働くために日本ではワクチンの確保に完全に乗り遅れてしまっているのだ。挽回するためには解毒薬を確保するしかない状況まで追い込まれている。


「総理。筧防衛大臣より内密の話があるそうです」


 関係閣僚を集めた会議の前に話があるなど相当なことだ。それに対象者は自衛隊幹部の息子であり、今朝に情報を得るために招集の承認をしたのは笠野自身であった。迷宮の情報の重さを鑑みて笠野は筧の提案を承認した。


 派閥力学などどうせこの任期が終わったら総裁の座から追放される笠野には関係のないことだった。とにかく笠野には実績が必要だった。


 ----


「失礼ですが鑑定をしても良いですか?」


 樹は殆ど関わりのない明石のステータスを鑑定することによって自身の有用性を証明するつもりだった。鑑定眼の能力は個々の経験と知識によって変動するが対象が鑑定を拒否するスキルでも持っていない限りは可能だった。下位スキルである鑑定はレベル差によって弾かれることもあり、また知れる範囲も狭い。


 それに迷宮産でない限りはインターネットや本で得た知識も更新され鑑定に失敗する確率も下がる。更に魔力や(オーラ)を知覚できるのも大きい。纏部を習得しても視覚情報として得られるのは魔力もしくはオーラのどちらかである。


 魔闘術と気闘術を両方、会得していても瞬時に切り替えるのは意外と難しい。それに樹は修練に一ヶ月ほどあてたが纏体は習得できても纏部に関しては不完全であり、金剛や鉄拳で代用していち早い習得を目指している状態だった。


 能力を疑問視されれば交渉材料として成立しない。それに樹も自衛隊の医官の知識を教授して欲しい立場なのだ。回復魔法も有用だが薬師によって製薬できれば魔法薬の価値は減るが攻略に役立つ。そして、樹は他人のBPを確認できるようになったために間接的に習熟度も鑑定できるようになっているのだ。


 スキルの基準消費BPを割り出すには多くの人の協力と手間が必要だが、それでもこの情報は金になると樹は睨んでいる。努力して自力で習得するかBPを消費するかはその人の考え次第だが、先に習得して習熟するアドバンテージは大きい。それに無限ではないが称号によって得られるBPも馬鹿にはできないのだ。


「鑑定」


 Name

  明石昇

 Job

 〈〉

 Status

 HP H

 MP H

 STR G

 VIT H

 INT F

 RES H

 DEX H

 AGI H

 LUK H

 BP 二


 ほぼレベルを上げていないはずなのにINTがFになっているのは警察官僚だからだろうか。勉強ができるのと魔法の威力に影響を与えるINTが高いのに相関関係はあるのだと思う。これならば魔法を使わせる事はできなくとも魔力循環はできるようになる下地はある。


「目を閉じて熱を感じるのに集中してください」


 両手を繋ぎ樹は明石に魔力を流し始める。本来であれば自分で感知できるようになるまで魔法を使わない方が良いと思う。この方法は眠っている魔力を無理に動かすために教導側の負担が大きい。魔石から魔力を抜くように干渉することになるのだが魔力の量を間違えれば魔法回路を傷付けるリスクがある。


 なので無理やり動かすのではなくあくまでも補助することに神経を向けなくてはならなく難易度が高い。鑑定眼を発動しながら徐々に流す魔力を増やしていく。最初は魔力を熱として感知するために魔力が体内にあるのだと言う自覚を促す。これはぶっつけ本番なために樹は緊張している。


 今回は魔力を感じてもらうために心臓辺りに集中して魔力を引っ張るようにしている。オーラだと臍の下辺りのオーラを強く意識することで操作しやすいと樹は感じていた。他者の魔力に干渉するためにRESが高いと干渉しにくいとも考えている。魔力操作の習熟度が上がっているのか一度に動かせる魔力の量が増えている。


 最大魔力量と最大魔力放出量も並行して上げているために徐々にではあるが魔法使いとしての能力は上がってきている。この三つの最大値を伸ばすことができる幅が魔法使いとしての才能となるのだ。


「熱を感じられるようになったら血流に乗せるイメージで全身へと循環させて下さい。誰か魔石を手配できませんか?」


「樹、時間はかかるが用意させよう」


「紫藤だ。至急、伝える住所に魔石を持ってきてくれ。鑑定用の備蓄を出しても構わない」


 ----


 最初は何の冗談だと思ったが彼が迷宮攻略者であることは疑いようのない事実である。田上一佐も情報交換の場で確定はしていないが確信を持って証言していた。警察と自衛隊はこれまで以上に連携して行動していかなくてはならない。


 一佐は全国にある特警隊に対する装備や食糧、迷宮産アイテムを管理する立場にあり部隊に対する直接の指揮権こそないが重要人物であることには違いはない。そして樹くんは魔法を教授するとまで言ってきた。


 魔法使いは政府に対して登録の義務を負う。そして、報告しなかったことの免責とともに情報を開示する用意があると伝えてきた。これを断ることは難しい。一部の精鋭が使える魔法は迷宮の外でも有効なのだ。そして魔力の回復は迷宮内の方が早いらしいが徐々に認知され始めている。


 最初は迷宮帰還者によるある動画サイトへの投稿がきっかけだった。アメリカ人らしく英語を翻訳し日本語に直す手間はあったがCGでは説明できないことが多かった。そして、深部に潜るようになった自衛官にも魔法使いが現れ、有用性を実証するための実験が行われている。


 土魔法師、最初はスコッパーなどとインターネット上では馬鹿にされていたが塹壕を掘るのは意外と手間である。そして水魔法や火魔法の魔法師が少しずつ現れるようになるとそれに合わせた戦術が検討されるようになっている。


 特に魔法師のジョブを得た隊員達は魔力の伸びが良くなり効率はまだ良いとは言えないが現実世界に干渉できる力、魔法の派手さは人目を引いたのだ。そして、魔力に対となるオーラの存在も研究に値する力である。迷宮でダメージを肩代わりしてくれる力がオーラである。


 迷宮内であれば覚醒者なら可視できる。迷宮外でもできるように研究中であったが武技と呼ばれる技能は迷宮外で再現可能だがオーラはまだできていないのだ。これは冒険者よりも先に警察官や自衛官が手に入れなくてはならない力である。


 犯罪者を制圧するのにあった方が便利であり、日本は犯罪者へと言えど発砲することに対して否定的な意見が根強く残っているからだ。比較はできないがアメリカであれば不審な行動をした犯罪者は撃たれる可能性が高い。


 だが日本では発砲する度に警察は適正だったと発表せざるおえないし暴走車両を追跡する警察官が悪かったかのような印象を与える報道が当たり前のように行われる国なのだ。


 立ち会っている田上一佐も防衛大臣を通じて政府に働きかけるだろうし明石も当然、警察庁長官を通じてその秘密を得たいと考えていた。待たされるのは当然でありその間をどうやってもたせようかと考えていた時に樹くんの提案は乗らざるおえなかったのだ。そう魔法師になれるかはまだ分からないがその手伝いはできると言い出したのだ。


 明確な脱法行為に警察官としては目を瞑るべきではなかったのかもしれない。昨日、小田原冒険者協会に水魔法を取得したと届出があったがそれを信じる者は殆どいないだろう。先ず魔法師として魔法を扱うことができる者も詠唱なしには使えない。


 そして、唱えてしまったら後は解放させるしかなく待機状態にすることはできないらしいのだ。これは警察官や自衛官の一部の者だけに通達される事実であり階級が高くとも迷宮に関わりのない部署では情報へのアクセス権限がないために知りえない情報である。


 神奈川県警に出向している形となっている明石も膨大な資料を探って初めて知った事実であり、恐らくではあるが部下となった紫藤警部は知らないことである。機動隊あがりの対策課職員が多いなかで警部が異動になったのは地域の安全を守ってきた実績と樹くんと親しい間柄だったからだ。


 大人の男同士が手を繋がなくてはならないのは嫌だがそれでも魔法が習得できる可能性があるならと我慢する。魔法師による報告も感覚的な部分が大き過ぎて参考にならないのだ。彼等・彼女等もまだなりたてであり経験が浅いのだから仕方がない。


 それに言語化しにくいこともあれば一流のプレイヤーが一流の指導者でないこともままあることだ。手から流れる何かが魔力なのだろう。感覚を研ぎ澄ますために目を瞑ることも指示されておりこの場には樹くんと二人きりだ。


 最初に聴取したときの勘は間違っていなかったのだ。徐々に量は増し熱量を帯びてきた。自身で動かすことはまだできず樹くんに引っ張られているだけだ。ただ自分の中に魔力があることは自覚できた。


 そして、樹くんのイメージなのだろうが心臓から全身に流れる血のイメージは確かにわかりやすい。普段は意識していないだろうがその手の動画は探せば幾らでも見つかるだろうし漠然としていてもイメージを固めやすいのは事実である。


 そして注意事項としてほぼ魔力のロスはないらしいのだがやり過ぎれば魔力不足による体調不良と樹くんが魔法回路と呼んでいる回路が傷付く可能性があるらしい。


 そして、ある程度は魔法が使える者であればこの指導はできるらしく目に魔力を集めることができれば魔力を視ることもできるらしい。


 手順としてはオーラも同じらしいのだがまだ何かを隠しているのだろう。魔力を引っ張る感覚を得るのには魔石から魔力を抜く訓練が一番だと言われたが、そもそも魔石から魔力が抜けるということすら知られていない。


 何故それを知ったのかは契約が終われば教えてくれるのだろう。それに彼には何か別の目的があるはずだ。リベラル派と言って良いかは分からないが現政権に対する批判的な立場にあるらしい。若い者にとって今の政治は利点がないことを考えれば明らかだがそれが政治思想と言えるかまでは微妙なのだ。


 それに法律を駆使して勤務先であったコンビニのオーナーから和解金を貰ったらしい。まあコンビニは労働基準法違反の温床となっているしこのご時世に辞めたのは迷宮があったからだろうが安定を捨てて冒険者になる思い切りの良さがあるのは確かだ。


 利権と欲に塗れている政治家どもに明石も思うところはあるがそれは職権を逸脱する。とにかく樹くんの協力は必要なのは確かなので意見書を提出することにしようと思った。


 ----


「迷宮は沈黙しております」


「ああ。特定の冒険者の活動を制限できないのは痛いところだな」


 第三特警隊第二分隊長の春日と藤堂は迷宮を監視しながら衛の報告を待っていた。不測の事態があるすればそれは樹が幕山迷宮に侵入したことだろう。白井以外の自衛官も迷宮で探索していたがそれは休みの自衛官が自主的に行ったことだ。熱心な部下が多くて頼もしいと白々しいことを思う藤堂。


「白井分隊は使えない。そして春日分隊を張り付けておくことも難しい。いっそのこと攻略許可がでてしまえば話が早いのだがな」



「隊長それは無理でしょう。先ず戦力が足りるかと言う問題と資源が取れなくなることを政府は許可しないでしょう。死傷しても自己責任の建前ですが現代の姥捨山(うばすてやま)と罵られても仕方がないことだと思いますよ」


 体力に自信があるものでも昨日は多くの者が痛い目をみた。入口にまで辿り着ければ救急車を呼んで貰えるが治療費は高い。回復薬も数が多く確保されていないために緊急時以外には使われないし使われた回復薬は自費で払う必要があるために意識がないと使って貰えないのだ。


 パーティ登録をしていれば払えない場合に承諾したパーティメンバーで分割することも可能だがそのために事前に治療の同意書に署名(サイン)していても高価なものであれば躊躇うはずだ。


 最下級回復薬なら二万ほどで使用できるが失った手足を回復できるものではないしオーラも自傷行為は保護しないのだ。そして身を守るオーラがない状態でダメージを受ければそれは生命の危険となる。レベル一でもゴブリンの攻撃を数回は無効化してくれるが肩代わりしているだけで何も消費していない訳ではない。


 そしてダメージを受ける頃に撤退を決めても遅いのだ。それにスモールラビットやスモールマウスは安全に倒せる代わりに報酬が少なく経験値も少ないことが分かっている。


 他の冒険者を出し抜くためには危険を冒す必要がありその冒険者の末路はたいがいは怪我を負っての撤退である。国営迷宮はその意味では金銭的には儲かったがDP的には損をしている筈だ。高い入場料を払う価値があるかと言えば非覚醒者以外には殆どメリットがないと藤堂は考えていた。


「一般部隊と交代で休憩をとれ。しばらくは動きはないと思うが油断はするなよ。ここの指揮は任せる」


 衛から呼び出しを受けたともなれば現場を離れる価値はある。それに魔石なら幕山迷宮で手に入れているし春日がいれば抵抗くらいはできるだろう。先ず藤堂が始めたのは分隊長を連れての楽しい楽しい遠足(ピクニック)だった。ついて行った隊員たちからしてみれば正体不明の敵がいる迷宮を探索しなくてはならないのは地獄だった。


 それに銃を撃っても倒れない魔物を円匙やサバイバルナイフで倒せと言われても戸惑うばかりだ。それに初めて藤堂が魔物を倒したときには保護膜みたいのが展開されたらしく藤堂の動きについて行かなくてはならない隊員は体力的にも消耗する。


 兎や鼠を狩っていたと思ったら市街地にも現れたゴブリンもでてくる。混成部隊であったために気付かなかったが強さも個体によるところが大きく銃が効かない敵というのは思った以上に厄介だった。


 そして進むにつれて遠距離攻撃もあり中には魔法攻撃もあった。目で追えない速さでなかったことは幸運だったが火薬に引火することを考慮して撤退することになった。そして、実績を考慮され特警隊が創設されると過酷な訓練と魔物と戦い続けてきたのだ。


 自衛隊としては樹からの情報はどうしても手に入れたいものであった。藤堂は警察側から打診された魔石を持って樹の借りているアパートへ車で向かうことにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ